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第5話:冒険者ギルド

Author: 大正
last update publish date: 2026-04-17 07:00:11

 町の中に入り、様子を見る。よく踏み固められた地面に、石造りの建物。およそ地震対策などが考えられていない、単純な造り。日本なら確実に揺れでつぶれているであろうその建物は、明らかに地震なんてものとは無縁であろうことが感じられる。

 異世界の空気を胸いっぱいに吸い込む。酸味がかった、誰かの体臭にも似たその香りは、実際に誰かの、いうわけではなく、この世界の人々の衛生概念がそのぐらいであるか、こちらの世界の人々の体臭がひときわ濃いのか。とにかく酸っぱい匂いが少しだけ漂っていた。この匂いにも慣れていかなきゃいけないんだよな。

「では、まずは冒険者登録しましょう。市民証も兼ねた身分証みたいなものですから、持ってない人は田舎者か犯罪者ぐらいのものになります」

「異世界から来たのが犯罪じゃないなら取れるはずだな。何か取る際に制限とかそういうものはあったりするのかい? 」

「基本的にはないですが、向こうで何かしら犯行を行った後にこちらに来ている場合、引っ掛かる可能性はありますが……ないですよね? 」

「ないねえ。気づかないうちにやってる犯罪がなければ、だけど」

「じゃあ大丈夫だと思いますよ。意識的に行わない限りは犯罪者チェックは機能しないはずですから」

 なら心配ないな。そのまま街中を歩いていくと、だんだん人通りが増えてきて繁華街の様相を呈してきた。見たことのある野菜の屋台や、見たことのない食べ物らしきものまで並んでいる。あれは生で食べるんだろうか。それとも煮るんだろうか。

「こっちの空気にはいずれ慣れますから、とりあえず今日は冒険者登録と宿を決めてしまいましょう。その後でいろいろこっちの世界の相場観や何やらを説明することになると思います。メモとかいりますか? あると便利ですよ」

「そうだねえ。紙が高級品でなければいいんだけど」

「そこそこ高級品ではありますけど、買えないほどの値段ではないですから大丈夫ですよ。一応通常使いできる程度には量産されている価格ではあります」

 ふむ、やはり紙はまだちょっとお高い文明度らしい。そういえば最近は紙もお高くなってきているし、もしかしたら現実世界の文明度は少し後退しているのかもしれないな。

 しばらく歩いて商店街を抜けた後、町の中心に来た。広場には鐘がある。おそらくは時間が来たら鳴り、皆に時刻を告げる役目があるのだろう。そう思っていると、ちょうど鐘が鳴る。

「お昼の鐘が鳴りましたね。どうしますか、先にお昼食べちゃいますか? それとも、登録が終わってから落ち着いて食べますか? 」

 うーん、お昼か……先に食べてしまうよりは、後の予定が詰まらないように先に冒険者登録を済ませたいところだな。

「お昼はゆっくり食べたいし、先に登録を済ませてしまおう。南東側だから……あの建物か」

 大きな剣と盾のマークの看板を掲げた、見るからに武力的なその建物には、武骨な武人のような人から踊り子のような格好をした人まで様々な人々が出入りしている。踊り子のような服装だが、実際には彼女も冒険者なのだろうな。

 見た目と実力は比例しないだろうし、その格好で無事でいることそのものが実力の証なのかもしれない。しっかり見定めていこう。

 建物の中に入ると、事務所のようなカウンターが表になっており、裏では一つに繋がっているのであろう、動線を塞がない構造の場所、そしてウケツケと書かれたカウンターが一つだけ点在している。そこにいけばいいのかな。

 ……と考えていると、イアンちゃんが先にウケツケに進み、俺がついていく形になった。

「冒険者登録をお願いします。こちらの方です」

「はい。新規登録ですね。まずこちらの記入は……出来ますか? 」

 文字が書けるかどうかも大事らしい。識字率は100パーセントではないようだ。記入欄を読めて、カタカナが書ければいいそうなので、ペンを借りて書き込んでいく。

 生まれて初めての羽ペンの書き心地に戸惑いつつ、必要最低限の記入を済ませて書類を返す。

「えーと、カタナシ様」

「タカナシです」

「失礼しました。タカナシ様。受付を完了しました。こちらの水晶に手をかざしてください」

 ずっしりとした重さのある水晶が目の前に置かれている。

「一応ですが、犯罪者登録がされているかどうかの確認になります。滅多にはありませんが、念のための慣例になってますので手をかざしてください」

 早速手をかざす。すると、なにも反応せずに水晶はその輝きを保ったままきれいに俺の手のひらを鏡のように映し出していた。 

「はい、問題ありませんね。では、タカナシ様、冒険者登録の最終確認は終わりましたので、こちらで登録は完了となります。最後に、血を一滴いただいていいですか。冒険者証と体をリンクさせます」

 言うが早いか、指先にちくっと針を指すと、そのまま血をカードのようなものに滴し、カードが光り始めた。

 しばらくしてカードが光り終わると、そこには写真付きの一枚の身分証明書が出来上がった。これが冒険者登録か。なんか雰囲気出てきたな。一気に異世界感がググッときたぞ。

「無くされた場合は再登録に銀貨2枚と、冒険者番号の下一桁が増えることになりますのでご注意ください。下一桁が5になると強制抹消になって、これまでの実績もなかったことになります。悪用されないように注意してください。それでは手続きを終わります」

 指先がまだしびれる以外は問題なく終わった冒険者登録。これで一仕事終わりか。さて、細かいことをイアンちゃんに聞きながら、まずは昼食を食べに出掛けるとしよう。

「お勧めのお店はあるかな? 」

「あります。ミニボアの串焼きが美味しい屋台と、座ってゆっくり食べれるけどちょっと騒がしい食堂がありますけどどっちがいいですか? 」

 選べるのか。串焼き屋台で食べながら移動もいいが、今はこの世界について色々情報が欲しい。ここは食堂一択だな。

「食堂にしよう。ゆっくり意見を聞きたいからね」

「私もそっちがお勧めです。タカナシさんにはこれからについて話す内容がいっぱいありますからね。ゆっくり食べながらその辺をご案内しなければいけません」

 イアンちゃんについていき、銀の卵亭という食堂についた。どうやら宿屋もかねてるようで、ここで宿泊することもできるらしい。食事が美味しかったらとりあえず今夜の寝床もここにするか。

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