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第330話

Author: 清水雪代
しばらくして、不意にドアをノックする音が響いた。

智美は息を殺し、返事をしなかった。

通報してからまだ間もない。警察がこんなに早く到着するはずがなかった。

そっとドアまで忍び寄り、覗き穴から外を窺うと、泥酔した男が立っているのが見えた。

やはり、先ほど宿にチェックインした際、目をつけられていたらしい。

智美はバッグから催涙スプレーを取り出し、ドアを背にして身構えた。

ノックは執拗に続く。扉が叩かれるたび、智美の心臓がびくりと跳ねた。

十分ほど経った頃、ノックは乱暴にドアを叩く音に変わった。

智美は唇をきつく噛む。心臓が激しく鼓動を打ち、今にも胸から飛び出してしまいそうだった。

ドアが蹴破られるのではないかと身構えた瞬間、不意に叩く音が止み、外で何やら騒がしい声が聞こえてきた。

覗き穴から確認すると、制服を着た警官が二人、やって来たところだった。

酔っ払いは急に酔いが覚めたかのようにしどろもどろになり、警官に「部屋を間違えた」と説明している。

警官は二、三言注意しただけで、あっさりと男を行かせた。

智美はそこでようやくドアを開け、事情を説明した。

しかし、二人
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