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【第15話】昼寝・後編(スキア・談)

last update Last Updated: 2026-01-21 14:47:48

 お姫様抱っこにも、背後からの添い寝にもルスは動じなかった。まるで小さな子供が父親に構ってもらった時程度の反応だ。仮にも『夫婦』という枠にある僕達でコレはマズイと思う。ただでさえ僕らは見た目の年齢に相当の開きがあるのに(中身を語り始めたらもっと酷い事になるので、その辺は割愛しておく)、このままの空気感ではただの親子だ。

 過去歴代の憑依者達とは『夫婦』という関係を築いた相手は一人もいなかった。形だけの『弟子と師匠』や『参謀と上司』、近くてもせいぜい『義姉と義弟』くらいなものだったし、契約の印となる魔法陣を他人には見えない位置に刻んでやるみたいな気遣いが必要な者達でもなかった。だから過度な触れ合いも必要なかったから、『設定どおりの関係っぽく見せなければ』という配慮も不要だったのだ。

 だが今回は違う。

 印を刻んだ箇所が箇所なだけに、僕らが『夫婦』であるという『設定』は非常に重要なのだ。

 とびきりの善人を探して厳選して約六年ぶりに得たこの肉体を維持するためには、僕らの契約印がルスの体に馴染むまでの間、毎日魔力を彼女の体に流して馴染ませ続けなければならない。完全に契約が済んでしまえばこ
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    「外にある掲示板を見て来たんだが、ここの大家と話は出来るかな?」 丁度昼時で食事をしに来ている客でごった返している店内を、真っ黒なマントで身を包んでいる男が堂々と横切っていく。身長と声からするとまだ少年の様だ。いかにもなとんがり帽子を頭に深くかぶり、手には外にある掲示板に貼ってあったであろう“空き部屋情報”の書かれた紙を持っている。そのまま持ち歩くには大きなサイズのものだからか、ぐるっと筒状にしているが、よくまぁあれを剥がして持って行こうって気になったものだ。「オーナー!賃貸の件での要件があるって方が来てますけど、奥の席にご案内しておいてもいいですか?」 ホール担当の女性が厨房に戻っていたマリアンヌに声を掛ける。彼がした『OK』の合図を見て、「こちらの方でお待ちいただけますか?」と店員が声を掛け、全身真っ黒な少年風の男が僕達の座っている席の方へ案内されて来た。「何か飲み物でもお持ちしましょうか?有料ですけど」 「じゃあ、オレンジ……いや、ホットコーヒーをブラックで!」 「ホットコーヒーですね。今は丁度忙しい時間なのでオーナーとお話するには結構待って頂く事になると思うんですけど、お時間は問題ないですか?」 「あぁ、問題ない」 不遜な態度でそう言うと、少年と思われる男は案内された席に座ろうとした。が、ちらっとこちらの席に視線をやったかと思うと、とんがり帽子とマントの隙間から少しだけ見えている顔を真っ赤に染めて、急にルスの方へぬっと腕を伸ばし、彼女の手を勝手に握った。「君!——ボクの、嫁にならないか?」 「はぁぁぁぁぁ⁉︎」 少年の声とほぼ同時に叫んだのは、夫(仮)である僕ではなくて、厨房からリアンのための料理を運んで来たマリアンヌの方だった。その隙に僕は少年の手を叩き落としてルスの隣に席を移し、彼女の肩を抱いて自分の方へ、これ見よがしに抱き寄せておく。愛情の伴っていない仮初の夫婦であろうが、夫婦は夫婦だ。憑依先でもあるルスを盗られまいと少年の顔をキッと睨む。「ちょ!そっちもそっちで何やってんのよ!」 怒った猫みたいに毛を逆立ててマリアンヌが怒っている。高身長のせいか、『山猫亭』という店名と同じヤマネコが怒っているみたいにも見えた。「あ、リアンちゃんのご飯持って来まちたよぉ」 急に声を甲高くしてそう言うと、マリアンヌは持っていた大皿

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