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第38話

作者: 花野めい
由樹の声を聞いた瞬間、三久は頭の芯が痺れるような感覚に陥った。

彼女は反射的に手元の退職合意書を隠そうとした。

しかし由樹はすでに、奈緒の言葉に足を止めていた。

鋭い視線が、三久の席でふんぞり返っている奈緒を射抜いた。

三久が振り返り、由樹の探るような視線が絡んだ。口を開こうとした瞬間――

「社長、早坂さんはもうすぐ退職手続きに入ります。以後は私が引き継ぎますので、会議の準備も私がいたします!」

奈緒は三久に口を挟む隙すら与えずに言い放った。

その言葉に、三久は息を呑んだ。「万事休す」という言葉が脳裏をよぎる――終わった。

「……誰が辞めるだと?」

由樹が危険なほど目を細めた。

「早坂さんです」

奈緒は迷わず言い切った。

「彼女がサインすれば、すぐにでも退社できます」

由樹の視線が、三久がサインしかけていた退職合意書に注がれた。

彼の表情がたちまち曇り、その場の空気が真冬のように凍りついた。

特に紙面に記された自分のサインを目にしたとき、刃のように鋭い視線が三久の顔を射抜いた。

三久は微かに眉を寄せた。サインを途中で見つかったという焦りこそあったが、そこ
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