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第4話

Author: ガラスの観覧車
「智世さん、インテリアの確認に来ました!」

美月は部屋に入るなり、ごく自然に靖の腕へ自分の腕を絡めた。けれど、傍らに置かれた書類に気づくと、一瞬だけ動きを止める。

「智世さん……靖と離婚するんですか?」

私は答えず、美月が手にしている鍵を見た。

そこには、私が靖に贈ったお守りがついていた。

「どうして、うちの鍵を持ってるんですか?」

美月の顔がさっと青くなり、次の瞬間には、目に涙が浮かぶ。

「智世さん、まだ靖が私の工事現場を見に来て、家に帰らなかったことを怒ってるんですか……

ごめんなさい。私のせいで靖と喧嘩しないでください……」

「美月のせいじゃないから、謝る必要なんてない」

靖は眉間を揉みながら、美月をそっと自分の後ろへかばった。

「智世、もう子供じゃないんだから、いい加減にしろよ。

美月はこの家のインテリアを担当するんだぞ。現地を確認してプランを作るために、鍵を持ってたほうが便利だろ?

美月の工事現場を見に行ったのだって、仕事のうちだ」

私は目の前の靖を見つめた。彼があまりにも真剣な口調で言うから、一瞬、また自分のほうが間違っているような気にさせられそうになる。

靖はいつもそうだった。私を傷つけたことさえ、まるで自分が正しいことをしているように語るのだ。

靖は私の反応など気にも留めず、美月を連れて部屋の中を見て回り始めた。

「靖、東向きのこの部屋、ウォークインクローゼットにしたらどう?一番日当たりがいいし!

こっちのゲストルームは書斎にぴったりじゃない?そうしたら一緒に図面も描けると思うんだけど」

東向きの部屋は、私が子ども部屋にするつもりで空けていた。

ゲストルームは、私の両親が盛沢市へ遊びに来たときのために、靖が用意してくれた部屋。

それなのに今、靖は美月を優しい目で見つめ、笑って頷いている。

「美月の好きなようにしよう」

家の工事はもう中止したとはいえ、それでも、私の傷口を踏みつけるように美月の好き勝手を許す靖を、黙って見ていることはできなかった。

「靖、これが二人の言う設計プランなの?

いつもこんなふうに依頼を受けてるなら、そのうち事務所が潰れるんじゃない?」

図面にメモを取っていた美月の手が止まった。再び口を開いたときには、もう泣きそうな声になっている。

「智世さん……私はただ、自分の意見を言っただけですから、気に入らないなら、採用しなくても大丈夫ですよ……」

私が何か言うより先に、靖が唇を引き結び、冷たい声を放った。

「美月はプロのデザイナーだから、意見にはちゃんと根拠があるんだよ。

それに智世はまだ妊娠してないんだから、子ども部屋をウォークインクローゼットにして何が悪い?

お義父さんたちだって、年に何度も盛沢市へ来るわけじゃないんだから、ゲストルームを書斎にするのも合理的だ。

智世、採用したくないならそれでいいだろ?なのに、いちいち美月に突っかかって何になるんだ?」

靖はひどく険しい顔でペンを取り、その場で図面を書き直し始めた。

一画一画、わざと力を込めるように、ペン先が紙を擦る耳障りな音が響く。

しばらくして、図面は美月の意見どおりにすべて書き換えられた。

靖は不機嫌そうにペンを置き、その図面を私に投げつける。

「このプランで進めるし、明日から工事を入れるから。

智世、まだ文句があるなら、君が出ていけ」

やがて、重い音を立てて玄関のドアが閉まった。私はようやく肩の力を抜き、ふっと笑う。

スーツケースを引っ張り出し、淡々と服を詰めていった。

離婚協議書、私の部分は記入済みの離婚届、病院の診断結果、そして昨日受けた手術の記録……それら全てをリビングのテーブルの上に並べた。

すべてを終えると飛行機のチケットを予約し、最後に一度だけ、何もないがらんとした家を見渡す。

私はスーツケースを引き、振り返らずに家を出た。

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