Mag-log in「いえ……。心配しなくていいとだけ」
「犯人について、調べているかどうかすらも教えられていないというわけか」 目線を伏せて肯定すると、どういう意味か御堂が唇の端を動かす。なんとなく嘲りの表情に見えた。 襲撃された件で、和彦に一番情報をもたらしてくれたのは、千尋だ。全体の状況が見えない和彦に、総和会内部の者による犯行の可能性を示唆したのだ。そのとき千尋の口から名が出たのは、今目の前にいる御堂だった。 もちろん、御堂の犯行だと決めつけていたのではなく、御堂を利用したがっている勢力があると言っていたのだ。その勢力の筆頭が、御堂とは浅からぬ縁のある組織、清道会だ。「そのうち……というか、さすがに誰かが君に教えるかもしれないが、君を襲った主犯格として、清道会の名が挙がっている。綾瀬さんがいる組だ」 和彦が驚かなかったことに、御堂は納得したように頷き、艶やかな笑みを見せた。「そうか。もう知っているようだね」「すみません…&hell「いえ……。心配しなくていいとだけ」「犯人について、調べているかどうかすらも教えられていないというわけか」 目線を伏せて肯定すると、どういう意味か御堂が唇の端を動かす。なんとなく嘲りの表情に見えた。 襲撃された件で、和彦に一番情報をもたらしてくれたのは、千尋だ。全体の状況が見えない和彦に、総和会内部の者による犯行の可能性を示唆したのだ。そのとき千尋の口から名が出たのは、今目の前にいる御堂だった。 もちろん、御堂の犯行だと決めつけていたのではなく、御堂を利用したがっている勢力があると言っていたのだ。その勢力の筆頭が、御堂とは浅からぬ縁のある組織、清道会だ。「そのうち……というか、さすがに誰かが君に教えるかもしれないが、君を襲った主犯格として、清道会の名が挙がっている。綾瀬さんがいる組だ」 和彦が驚かなかったことに、御堂は納得したように頷き、艶やかな笑みを見せた。「そうか。もう知っているようだね」「すみません……」「どうして君が謝る。総和会にいれば、誰もが薄々考えることだ。わたしが復帰して、血気に逸った誰かが独断で暴走した結果だとしても、責めを負うのは組そのものだ。実際、早いうちから長嶺会長は、檄文を出した。自分の〈オンナ〉であり、長嶺組長からの大事な預かりものでもある君が命の危険に晒されて、憤激していることを。そこに、まるで、特定の組織を想起させるような文章もつけてね」 えっ、と声を洩らした和彦は、そのまま絶句する。和彦が知る守光と、あまりに様子が違うと感じたからだ。守光はむしろ、和彦が襲撃されたということを最大限に利用した。総和会という組織深くに、和彦を取り込んだのだ。 ある可能性がちらりと頭を掠めた瞬間、総毛立つような感覚に襲われる。ブルリと身震いした和彦を、御堂は冷静な――冷徹ともいえる目で見つめていた。「君はやっぱり頭がいい。ある可能性に、気づいたんだね」 和彦は頷かなかった。認めてしまえば、守光とこれまでのように向き合えないと思ったからだ。聡い守光は、和彦の些細な機微すら見抜いてしまい、総和会という組織の奥にさらに取
前回、御堂と会ったのは、思いがけない形でだった。この御堂が、男に――清道会の組長補佐である綾瀬という偉丈夫に組み敷かれ、乱れている姿を、和彦はしっかりと見てしまったのだ。〈会った〉という表現は相応しくないのだろうが、御堂も見られることを承知していたという話なので、奇妙ではあるが、互いの存在を認識していたことになる。 つい最近の出来事なのだが、今日までにいろいろとありすぎて、時間の感覚が狂ってしまう。「何から話そうか。君とは、あれを話したい、これを話したいと、いろいろ考えていたんだが、いざこうして向き合うと、わたしたちの間にあるのは野暮な事柄ばかりだと、しみじみ思ってしまう」「本当に、砕けた話題をと思っても、悩んでしまいますね」 ここで二人は笑みを交し合う。御堂と親しくなったと言うつもりはないが、少なくとも初めて会ってお茶を飲んだときよりは、互いの距離が近くなったようだ。 和彦の緊張がいくらか解れたと感じたのか、タイミングを見計らっていたように御堂が切り出す。「――君はとうとう、総和会の人間になったんだね」 和彦は曖昧な表情となっていた。「そう、みたいです……」「あの長嶺会長に見込まれてしまうと、否とは言えないだろう。いかに息子といえど、賢吾も口出しはできなかっただろうし、なかなかつらい選択だったんじゃないか?」 御堂は、何を、どこまで知っているのだろうかと、正直戸惑う。すべてを打ち明けてしまえば楽なのだろうが、それは果たして正しい行為なのだろうかとも思ってしまうのだ。御堂と守光、そして南郷との間に因縁があることは、大まかではあるが把握している。そんな両者の間に、自分が争いの火種を起こしてしまうことを、和彦は何より恐れていた。 御堂の色素の薄い瞳が、じっとこちらを見つめてくる。射竦められそうな迫力に和彦が息を呑んでいると、御堂がふっと眼差しを和らげた。「……君は、頭がいい。いや、よすぎるぐらいか。だから、あれこれと考えて、自分が身動きが取れなくなる。関わる男が多い分、さまざまな事情を斟酌してしまうんだろう。そして、自分が何もかも呑み込んでしまえば、男たちに余計な気
和彦の前では丁寧なビジネスマンのような物腰を崩さない藤倉が、一瞬、ゾクリとするほど鋭い眼差しを、エレベーターのほうに――エレベーターから降りてきた人物に向けた。何事かと、反射的に視線を向けた和彦は、小さく声を洩らす。 圧倒されるような整然さを保った、ダークグレーのスーツを身につけた一団には見覚えがあった。そして、男たちの中心には、灰色の髪をした長身の男がいる。 御堂だとわかり、和彦は半ば無意識に一歩を踏み出していたが、次の一歩を阻むように、護衛の男たちが壁のように前に立ちはだかる。「――佐伯先生、こちらに」 藤倉に肩を抱かれ、さりげなく立ち位置を変えられた。御堂たち第一遊撃隊への警戒心を隠そうともしない露骨すぎる行動に、和彦は戸惑う。慌てて振り返り、御堂の姿を目で追いかける。 御堂は、和彦の存在に気づいているはずだが、こちらを一顧だにせず、冷然とした横顔を向けて通り過ぎた。せめて挨拶ぐらいはと思っていただけに、御堂の態度に軽くショックを受ける。 ただ、御堂が総和会内で複雑な立場にあることや、和彦への襲撃に関してのよからぬ憶測があることを含め、二人が接触しないほうがいいと判断しても、仕方がないのかもしれない。御堂は特に、隊を率いている身だ。和彦とは違い、さまざまなことへ気を配らなければならないだろう。 それでも、視線すら合わせてもらえないのは少し寂しいなと、和彦はため息をついてから、藤倉と別れてエレベーターに乗り込む。 地下に降りて車が回ってくるのを待っていると、エレベーターが到着した音がした。さきほどと同じく、護衛の男が露骨に身構えたのを感じ、まさかと思って振り返る。一瞬、御堂かと思ったのだが、そうではなかった。しかし、御堂に近い存在ではあった。「二神、さん……?」 和彦がおずおずと呼びかけると、護衛の存在など目に入っていないかのように、二神がまっすぐこちらを見つめてくる。圧倒されそうな眼力の強さだが、口元に淡い笑みが浮かんだのを見て、和彦も微笑み返すことができる。「どうかされましたか?」「隊長から伝言をことづかってまいりました」 そういえばまだ、御堂にこちらの携帯電話の番号を
和彦の予想を上回って、事態は急速に動き始めた。 総和会出資によるクリニック経営の話を承諾した三日後には、午前中のうちに総和会本部へと連れて行かれ、藤倉の立ち会いのもと、膨大な数の書類にサインをさせられたのだ。 長嶺組出資のクリニックを任されることになったときも、同じように書類にサインはしたが、ここまで多くはなかった。 当然の義務とばかりに藤倉は、書類の一枚一枚について説明をしてくれたが、公的なものはほとんどなく、大半が、総和会内で回され、保管される書類だった。 自分を総和会に縛り付けておくための契約書だと、万年筆を握る手を機械的に動かしながら、自虐的に和彦は考える。自分が決断した結果だということは痛いほどわかっているのだ。例え、そうするしかなかったとはいえ。 強い力に身を委ねた先にあるものについて想像力を働かせてみるが、まるで靄がかかったように、何も思い浮かばない。安寧があるとは思えなかった。正体のはっきりしない何かが真っ黒な口を開けて待っているような、漠然とした不安だけは、ひしひしと感じる。当然、重圧も。「――佐伯先生に、総和会の加入書を書いていただいたときのことが、昨日のように思い出されますよ」 和彦が記入し終えた書類を確認しながら、藤倉が感慨深げに言う。和彦は微苦笑を浮かべていた。そのときのことは、和彦自身、今も鮮明に覚えている。「あのときは、藤倉さんにはご迷惑をおかけしました」「いえいえ、ご迷惑だなんて。我々も少々強引に物事を進めすぎたと、反省したんですよ。なんといっても、佐伯先生はまだ、まったく堅気の方でしたから」 悪気はないのだろうが、今は違うと言外に言われたようなもので、和彦は複雑な表情となる。しかし藤倉はそんな変化に気づいた様子もなく、さらに言葉を続ける。「その佐伯先生が、今では総和会会長の信頼を得て、出資を受けて事業を始めるまでになられたんですから、すごいことです。しかも、短期間のうちに」 藤倉も当然、和彦と守光がどんな関係にあるのか知っているだろう。そのうえで、嫌悪や侮蔑といった感情を微塵も表に出すことなく、当初の頃のように接してくるのだから、感心するしかなかった。総和会の人間の誰もが、和彦の前で
力をなくした片足を持ち上げられ、再び内奥の入り口に道具の先端が押し当てられる。この瞬間、ゾクゾクするような強烈な疼きが背筋を駆け抜け、和彦は自分の反応に戸惑った。「あっ、いや――……」 反射的に制止しようとして、守光と目が合った。淫らな行為の最中とは思えないほど冴えた眼差しに和彦は射抜かれ、発しかけた言葉は口中で消える。代わりに口を突いて出たのは、甘い呻き声だった。** 和彦は布団の上で仰向けとなったまま、茫然自失としていた。さんざん道具で嬲られ、啜り泣きを洩らしても許してもらえず、ひたすら快感を与えられ続けたのだ。限界まで体力も気力も削り取られ、まさに精根尽き果てた状態だった。 動けない和彦の体の後始末をしたのは、吾川だった。体の汚れを拭い、新しい浴衣を着せたあと、ひどい有様の布団を入れ替えて、道具すらも布に包んでどこかに持って行ってしまった。和彦は、羞恥する感覚さえ麻痺しており、ぼんやりと吾川の行動を目で追っていた。 恭しく頭を下げて吾川が部屋を出ると、ほぼ入れ違いで守光が部屋に戻ってくる。どうやら湯を浴びてきたらしく、白髪が濡れていた。 和彦が緩慢に体を起こそうとすると、側にやってきた守光が手を貸してくれる。「……すみません」 言葉を発して初めて、自分の声が掠れていることに気づいた。「あんたがあんまりいい声で鳴くから、無茶をしてしまった。すまなかった」 布団の傍らに座った守光の言葉に、和彦は返事のしようがなかった。ここで、部屋の主である守光を畳の上に座らせ、自分が布団の上にいるのも失礼だと気づき、慌てて布団から下りようとする。守光は笑って首を横に振る。「かまわんよ。今夜はここで寝るといい」「いえ、そんな――」「あんたに、その権利は十分ある。なんといっても、わしの大事で可愛いオンナだ」 和彦はピクリと肩を震わせ、うかがうように守光を見る。口元に薄い笑みを湛えた守光は片手を伸ばし、乱れたままの和彦の髪を撫でてきた。それだけで、疼きにも似た感覚が背筋を駆け抜ける。体は離しはしたものの、精神的にまだ守光と
繋がりを解くと、和彦は内奥から残滓を溢れさせながら、言われるままうつ伏せとなり、腰を突き出した姿勢を取る。苦痛に近い羞恥があったが、守光の言葉通り、和彦の体はやはり反応していた。欲望は萎えることなく熱く震えている。 守光が文箱から何かを取り出す音がして、ビクリと腰を震わせる。「怖がらなくていい。あんたに痛みを与えることは、絶対にしない。これまでしてきたおもちゃ遊びと同じだ。ただ少しばかり――」 守光の欲望に擦り上げられ、精を注ぎ込まれたばかりの内奥は、ひどく脆くなっている。ひんやりとして硬く滑らかな感触が押し当てられると、嬉々として淫らな肉の洞に呑み込んでいた。「くっ……、んっ、んっ、ううっ……」 太い部分を受け入れて、苦しさに喘ぐ。守光が新しく作らせたという道具は、歪な形をしているようだった。全体に太くなっただけではなく、括れの部分がより強調され、さらにはごつごつとした小さな瘤のようなものがいくつもあるのだ。 それでなくても敏感になっている襞と粘膜が、緩やかに道具が出し入れされるたびに瘤の部分で強く擦り上げられ、和彦は腰を揺らして反応する。「ひあっ、あっ、待って、くだ、さ――、うあっ、あっ……、んんっ」 一度道具が引き抜かれ、内奥から守光の精と潤滑剤がドロリと溢れ出してくる。そこに新たに潤滑剤を塗り込まれ、道具を挿入された。いままで、誰も訪れたことがないほど奥深くに。和彦は布団を強く握り締め、甲高い声を上げる。それは、女のような嬌声だった。 頭の中が真っ白に染まり、目を開けていながら、何も見えていない状態となる。体中の力が抜けていると知ったのは、それから数瞬後だった。道具を咥え込んだまま、絶頂に達したのだ。「――やはり、あんたなら気に入ってくれると思ったよ。このおもちゃを」 そう言って守光の手が開いた両足の間に差し込まれ、組み紐を解く。軽くてのひらで擦り上げられただけで、和彦の欲望は破裂し、精を噴き上げた。「いつだったか、わしの友人という男とここのエレベーターですれ違っただろう。あの男は、わしの難しい注文にも、文句を言いながらも応え
さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自
「――冗談じゃない」 答えたのは鷹津だ。それはこっちの台詞だと、心の中で呟いてから和彦は、端的に説明する。「この男は、刑事だ。しかも君らの天敵ともいえる、暴力団担当係」 さすがの中嶋も驚いたらしく、目を見開いて、和彦と鷹津を交互に見る。もっとも、切れ者ヤクザらしく、即座に澄ました顔で鷹津に一礼した。「先生は、変わったお知り合いがいますね」「……つきまとわれているんだ。長嶺組長も把握している。なんなら、総和会にも報告していいが」 中嶋はちらりと笑みを浮かべ、今度は和彦に一礼すると、ウェートレ
「俺を潰したいからなんて理由で、こいつに近づくなよ。大事な大事な、俺たちのオンナだ。お前みたいな下衆が近づいていいような、安い人間じゃない」「蛇みたいな男が、薄ら寒くなるようなことを言うな。……お前は、弱みを晒すような男じゃねーだろ。それとも、弱みを隠し切れないほど、そいつに骨抜きにされたか? 俺を失望させるようなことを言うなよ、クズどもの親玉ともあろう男が」「しばらく辛酸を舐めたようだが、相変わらず口汚いな、鷹津。そんなんじゃ、誰にも好かれんだろ。それこそ、女だろうが、男だろうが――」 急に賢吾の腕が肩に回され、抱き寄せら
そう言いながら鷹津が指を動かし、内奥を掻き回してきたかと思うと、襞と粘膜の感触を楽しむようにじっくりと撫で上げてくる。意識しないまま和彦の息遣いは妖しさを帯び、誘われたように鷹津が顔を寄せ、傲慢に命じてくる。「舌を出せ。吸ってやる」 この状態にあっても、鷹津の命令に従うのが嫌だった。和彦は唇を引き結んで顔を背けたが、鷹津は何も言わず内奥から指を抜き、体を起こした。ベルトの金属音とファスナーを下ろす音が聞こえて和彦は身を強張らせる。その間に両足を抱え上げられ、わずかに綻んだ内奥の入り口に〈何か〉が押し当てられた。「まあ、いい。長嶺のオンナを抱いたという







