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第455話

Author: 桜夏
「飲みなよ。僕はまともな人間だから、そんな下劣な真似はしないさ」

女はそれを聞くと、喉を潤すように二口ほど軽く飲み、あとは静かに座っていた。

「さっきは君が対応に困ってるのが見えたからね。打ち合わせもしてないのに、案外息が合ってたじゃないか」

翼は手すりにもたれかかり、彼女を見ながら言った。

「ありがとう」

女は口を開いた。

声が少し低かったが、翼は特に異常には気づかず、微笑んで言った。

「大したことじゃないさ。君の助けになれたなら嬉しいよ」

会話はそこで途切れたかに見えた。だが、相手はあの藤堂翼だ。話題に困ることなどあり得ない。

彼は言った。「君が最初に踊っていたダンス、見てたんだ。三つ目のエイトカウントで、あと半回転多く回ったら、もっと素敵になるかもね」

翼は華やかな言葉で飾り立てて褒めたり、おだてたりはしなかった。むしろ「問題点」を指摘することで、ただ純粋にダンスについて語り合っているかのように見せかけたのだ。

恋愛経験のない相手とある相手とでは、口説き方がまったく違う。むやみに褒めたり、目的意識を露骨に出しすぎたりすれば、相手を怖がらせて逃げられてしまう。
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