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第62話

Penulis: marimo
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-18 20:06:56

外科医に戻り、少し落ち着いてきた楓に、母の桜が「後藤教授にお礼がしたい」と言い出し、同じ弁護士であり面識もある慎一も呼び、お互いの親子4人で食事をしようということになった。

楓も慎一とはしばらく会えておらず、近況も話したかったし、後藤教授にもお礼を言いたかったので快諾した。

日時や場所の確認など、母の助手が全て整えてくれて、あっという間にその当日がやってきた。

予約したレストランは、桜の顧問先がよく利用するという、格式あるホテル内のダイニングだった。重厚な木の扉を抜けると、程よく落とされた照明とピアノの生演奏が迎えてくれる。落ち着いた空間だが、どこか華やぎもあり、今日の“食事会”が特別なものであることを静かに示していた。

 店に入ってすぐ、楓は小さく息を呑んだ。母から「外科医に戻ったお祝い」として贈られたばかりのルビーのネックレスが、シャンデリアの光を受けてわずかに揺れた。

 ――こんな高価なもの、もらっていいのかな。

 胸の内にあふれる温かさは、嬉しさとも、くすぐったいような照れともつかないものだった。

「楓、姿勢。ほら、胸を張りなさい」

 桜が横目でささやく。

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  • 静かな幸せは、裏切りの匂いがしたー医師・渡辺楓が選んだ、愛という名の代償ー   第162話  亮のその後

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    真琴は、強い女だと思われている。  それは自分でも、否定できない評価だった。 広告代理店で働いていた頃から、彼女は「できる人間」として扱われてきた。  企画をまとめ、クライアントの無茶を現実的なラインに引き戻し、最後は必ず形にする。  仕事も恋愛も、感情に溺れない。割り切れる。  周囲はそう思っているし、真琴自身も、そう振る舞ってきた。 だから、楓が冬真と共に病院経営を始めると聞いたときも、迷いはなかった。  広告代理店を辞め、診療報酬請求事務の資格を取り、医療事務として転職する。  無謀だと言われることは覚悟していた。  けれど、真琴にとってそれは「挑戦」ではなく、「合理的な選択」だった。 医療の現場は、広告とはまるで違う世界だ。  だが、数字を読み、流れを整理し、仕組みを回すことは、これまでの仕事と変わらない。  楓の病院は順調に回り、真琴自身の評価も高かった。 ――やっぱり、私は大丈夫。 そう思える理由は、いくらでもあった。 だが、夜になると違う。 一日の業務を終え、シャワーを浴び、照明を落とした部屋でベッドに横になると、昼間の確信は、静かに形を失っていく。  天井を見つめながら、真琴はふと、楓の部屋で飲んだワインの味を思い出していた。 少し渋くて、後味が長く残る赤ワイン。  「大人になったね」と笑い合いながらグラスを重ねた夜。  あのとき、楓の横顔は、以前よりずっと穏やかだった。 幸せそうだった。 その事実が、胸の奥に、説明のつかない感情を残した。「私は、大丈夫」 独り言のように呟く。  この言葉を口にする癖が、いつからついたのかは分からない。  不安なとき。  誰かと比べてしまったとき。  何かを選ばなかった自分を、正当化したいとき。 仕事は順調だ。  周囲から見れば、今もバリバリのキャリアウーマンに見えるだろう。  服装も、話し方も、立ち居振る舞いも、隙がない。 恋愛だけが、ぽっかりと空白だった。 紹介された相手は何人もいる。  悪くない人もいた。  けれど、関係が深まりそうになると、どこかで距離を取ってしまう。 面倒だから。  忙しいから。  今は仕事が楽しいから。 そう理由を並べてきた。  けれど、本当は違う。  誰かと深く関わることに、慎重になっているだけだ。 親

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