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35話 残された遺志と、深き傷跡

last update Veröffentlichungsdatum: 15.08.2026 01:00:39

16歳の春。王立中央学園への入学をわずか数日後に控えたその日は、希望に満ちあふれた門出となるはずだった。

​しかし、公爵邸に届けられた一通の緊急報せが、二人の世界を容赦なく暗転させた。

​――聖教会の最高権限者、オーガスト枢機卿、殉職。

​その報せはあまりにも突然で、あまりにも残酷だった。各地で悪魔の影を追い続けていた彼は、激戦の末に命を落としたという。彼だけでなく、国内の名だたる高位聖職者たちが相次いで命を落とし、事実上、聖教会の指導者層は全滅したという恐ろしい噂が瞬く間に国中を駆け巡っていた。

​通夜が執り行われる大聖堂は、重苦しい沈黙と悲痛な気配に包まれていた。

黒い喪服に身を包んだルシエラとマルタは、足元をふらつかせながら棺の傍らへと歩み寄った。

​「……オーガスト様……」

​棺の中に横たわるオーガストの姿を目にした瞬間、ルシエラは息を呑み、胸がちぎれるような強い衝撃に襲われた。

​そこにいたのは、かつて優しく微笑み、神聖な光をまとっていた気品ある青年の姿ではなかった。

片目は固く閉じられ、その綺麗な顔には痛々しい無数の切り傷が刻まれている。服の上からでもわかるほど、その身体
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