Lahat ng Kabanata ng 禁愛願望~イケメンエリート医師の義兄に拒まれています~: Kabanata 11 - Kabanata 20

90 Kabanata

【6】②

 思いがけない言葉に、胸が小さく跳ねた。 ――ふたりがいい?  しかも土曜って……授業がない日を指定してくるなんて、まるで私と会うために時間を作ろうとしているみたいだ。 「え、あ……」  口ごもった私を、亮介は真剣な眼差しで見つめている。 お弁当のときみたいに「冗談だよ」と笑う気配はない。 「ち、違ったらごめん。ふたりで行くって……そういう意味?」  今まで亮介を異性として意識したことがなかったから、慎重に尋ねた。    彼はためらわず、こくんとうなずく。 「……やっぱり、そうなんだ」  おどろきが大きすぎて、うまく言葉が出ない。 まだ兄以外の男性を好きになる自分を想像できないし、亮介とふたりきりで出かける姿も想像できない。 「ごめん、正直なところ、亮介のことを男の人として見たことがなくて」  申し訳なさと戸惑いを抱えながら伝えると、彼は淡々とうなずいた。 「知ってるよ。瑞希は兄貴しか見てなかったもんな。でも、諦めるって決めたんだろ?」 「……うん」 まだ完全には吹っ切れていないけれど、兄のことは少しずつ忘れたい。 「それなら、俺とのことも考えてみてほしい。今すぐどうこうじゃなくていい。兄貴のことを忘れるきっかけにしてくれれば、それでいいから」「……亮介とのこと」  その優しさが、かえって胸にしみる。 「瑞希さえよければ、俺を利用していい。利用してくれて、その分笑顔が増えるなら大歓迎」  真っすぐな言葉に、息が詰まりそうになる。 「……本当に?」  つい確認してしまうほどだった。    亮介はふっと口元を緩め、「まさか気づいてなかったの?」と笑う。 「ぜ、全然……!」  私が慌てて首を振ると、彼は「マジか」と肩をすくめた。 「まぁいいや。兄貴一筋だった瑞希には、わかるわけないか」 「ごめん……」 「謝るなよ。そういうまっすぐなところを好きになったんだから」  その一言に、頬が一気に熱くなる。  ――サラッと「好き」なんて、亮介らしくない。 「じゃないと、瑞希には伝わらないから」  彼はカラッとした笑顔を見せ、続けて「翠にも言われたよ。『瑞希は鈍感だから』って」と笑う。「え、翠も知ってたの?」 「もちろん。今日だって気を利かせてふたりにしてくれたんだ」  知らなかったのは、どうやら私だけらしい
last updateHuling Na-update : 2025-08-05
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【7】①

翌日の夕食にて――「ごちそうさまでした」 私は早々に食事を済ませると、両手を合わせた。「瑞希、食欲ないの?」 ダイニングテーブルの向こう側にいる母が、私の顔と皿とを見比べながら訊ねる。 メインは母の得意料理のひとつであり、私の好物でもあるスパニッシュオムレツだった。   八分の一ピースにカットされたそれをふた切れ取り分けてもらったけれど、一切れ食べるのがやっと。 付け合わせのサラダやスープも、頑張ったものの中途半端に残してしまう形になった。「えっと…うん。ごめんね、お母さん」 母の料理はいつもおいしいし、非番とはいえ忙しい合間に作ってくれているのを知っているため、可能な限り残したくなかったのだけど……。「それはいいんだけど、昨日もあんまり食べなかったみたいじゃない。具合悪い?」 私が神妙な顔で謝ると、母はしっかりと直線的に描いた眉を下げて、心配そうな顔をする。 作り置きがほぼ減っていないことに気付かれてしまったようだ。「あー……ううん。そういうんじゃないんだけど……」  身体の調子は悪くない。というか、むしろ良好だ。歯切れ悪く答える。 ただ、昨日から―― 亮介に「好きだ」と告白され、一緒に出かける約束をしてからというもの、どうにも気持ちがそわそわして落ち着かない。 今日は水曜日。三日後の土曜には亮介とふたりきりでデートだ。 そのときのことをあれこれと想像するだけで、緊張でドキドキが止まらなくなって、胸がいっぱいになってしまう。 ゆえに、食欲もあまり湧かなくなってしまった。 こんなことは初めてだ。身体がどうなっているのか、自分でも心配になる。  今日のお昼なんて、講義を入れていない日だったのをいいことに自宅で過ごしたけれど、手のひらサイズのヨーグルトをひとつ食べきるのが精いっぱい。 三十分以上もかかっ
last updateHuling Na-update : 2025-08-08
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【7】②

「ええ? ち、違うってばっ!」 言い当てられてしまった恥ずかしさと、まだ恋には至っていないという反発的な思いとでつい声を荒らげるけれど、母はなぜか満足そうににこにこしている。「隠さなくていいのよ、むしろ安心したわ。まぁ、学生は学業が本分だけど、遊ぶ時間も大事でしょう。瑞希は真面目でそういう話を全然聞かなかったから、気になってたところだったわ。で、相手は誰なの? 同じ大学の人?」「別に彼氏とかじゃないよ。ただ一緒に出かけるだけ」 母のなかではもうすでに私が誰かとお付き合いをしてる認識になっていそうだ。  改めて訂正してみたけれど、わかっているのかいないのか、母は上機嫌にうなずきながら「あら」と声のトーンを上げる。「――いいじゃない。いつ?」「……今週の土曜日」「もうすぐね。学生のうちにしか作れない思い出もあるから、楽しんでいらっしゃい」 誰にも黙っているつもりだったのに、名探偵の追及に白状せざるを得なくなった。 母の言う通り、異性について家族に話すことはないから、妙に照れくさい。  というか、これまでは好きな人が家族のなかにいたから言えなかった、というほうが正しいのだけど、母に自らこういう話題を振れなかったのは、別の理由もあって――「……もっと怒られるかと思ってた」「どうして?」 ひとりごとみたいに言うと、母は意外そうに首を傾げる。「私だって、自分の置かれてる立場はわかってるつもりだよ。実の子じゃないのに高校まで私立の一貫校に行かせてもらって、さらには大学まで通わせてもらって……その上、養育の期間を延長させてもらってるのに、って」 本来、里子の養育期間は高校卒業までと決まっているけれど、進学やその他の理由があって独り立ちにもう少し時間がかかるとみなされる場合は延長できることになっている。 私は医療系の大学で多忙となりそうだったので、里親からのサポートが必要であると延長の許可が下りた。
last updateHuling Na-update : 2025-08-08
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【7】③

 朝比奈誠一(あさひな せいいち)。誕生日で六十歳を迎える自慢の父だ。 病院での父は厳格で気難しいそうだけれど、自宅では優しくて穏やかだ。 普段の父ならば「よかったね」と笑ってくれそうだと思いつつ、母が言うならそれが正しいのだろう。 父も、私を実の娘と思ってくれているからこそ、寂しさを感じてくれているのだ。  それにしても……この私がデートか。 デート。自分にはまだまだ無縁だと思っていた響き。  亮介とは気が合うし共通の話題がたくさんあるから、話せなくなってしまうことはないと思うけど、意識するあまり、いつもと同じとはいかないかもしれない。  不意に兄の顔が頭をよぎった。 初めてのデートの相手は兄がいいと思っていたから、そうはならなかった現実に胸がちくんと痛む。 と同時に、「兄とデートしてみたかったな」という、もう叶うはずのない願いが心を抉ってくる。  私はそれを振り切るようにぶんぶんと首を横に振った。  ……兄のことは忘れるって決めたんだから、考えるのはやめよう。そんな思いを抱えながら亮介とデートするのは、彼に失礼だ。  まだ癒える気配のない傷が疼くのを感じながら、私はそれでも前を向こうと努めるのだった。  ◆◇◆   翌朝。スマホのアラームで目を覚ます。 停止ボタンをタップしてから待ち受け画面に戻ると、メッセージアプリの通知が目に入った。 メッセージが一通届いていたので開封する。『土曜日は、駅の改札に十二時でいい?』 差出人は亮介だった。どきんと心臓が高鳴る。「……『OKだよ』っと……」 寝起きの掠れ声でつぶやきながら、入力し、送信する。昨夜遅くに送られてきていたらしい。
last updateHuling Na-update : 2025-08-09
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【7】④

 兄と食事のタイミングが合うのは久しぶりだ。 というか、はっきり拒絶されたあのとき以来かもしれない。だからどうしても気まずさを感じてしまう けれど、兄のほうはそんなできごとなどなかったみたいな反応なのが悔しい。 「はい、どうぞ召し上がれ」「わ、おいしそう」 ほどなくして、母が私の分を運んできてくれる。 私の手元に置かれたお皿には、半分サイズのフレンチトーストにアメリカンチェリーが添えられていた。バターの香りがふわりと漂う。「いただきます」 手を合わせてナイフとフォークを手に取り、少しずつ食べ薦める。 うん、やっぱりおいしい。幼いころから愛着のある優しい味は、胃の中へ思いのほか抵抗なく収まっていく。 私はその傍ら、兄の様子を盗み見た。  兄と向かい合わせで朝食なんて、これまでの私だったら好機とばかりにあれこれ話しかけたのだろうな。  今だって、内容はなんだっていいから話したいと強く思うけれど、先日のやりとりを思い出すと躊躇してしまう。 好かれなくても、せめてこれ以上嫌われたくない。「それで足りるのか?」 食事に集中しているふりで、無言の時間をやりすごそうとしていると、意外にも兄のほうからそう問いかけてきた。「うん。ちょうどいい」「ずいぶん小食だな」 すでに空になった自身の皿と、私のそれとを見比べながら兄がつぶやく。 母は私の事情を知っているため敢えて少量を盛りつけてくれたようだけど、兄がそれを知るはずもない。  食べることが好きなタイプの私にしては珍しいと感じたのだろう。だから突っ込まずにはいられなかったのかもしれない。「いいのよ、漣。一過性のものだから」 するとその場でやりとりを聞いていた母が口を挟んだ。「一過性?」
last updateHuling Na-update : 2025-08-10
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【7】⑤

 兄はそれを聞いてどう思うのだろうと気を揉んだけれど、彼は涼しい顔をしてうなずいていた。  まるで、自分にはまったく関係のないことであると示すみたいに。 「初めてのデートってそういうものよね。漣、わかってると思うけどお父さんには内緒よ」 「はいはい、わかってる――俺はもう出るから」  母が自身の唇の前で人差し指を立てて笑うと、兄は何度か適当にうなずきながら席を立った。  そして、となりの椅子に置いていたバッグを手に取り、サッサと玄関へと向かってしまった。 「行ってらっしゃい」 「お兄ちゃん、気を付けて」  母と私とがその場から声をかけるけれど、兄は「うん」と返事をしただけで、さきほどの話題に言及してくることはなく、家を出た。 「……お、お母さんっ、なんでお兄ちゃんに言ったりするの?」  玄関の扉が閉まった音が聞こえるや否や、再び母を咎める。 「ごめんごめん、いやだった? でも心配しなくて大丈夫よ。漣は口がカタいから、お父さんに話したりしないでしょ」  ……そういうことじゃないんだけど。  心のなかで、音にはできない思いをつぶやきつつ、やはりまったく悪びれない様子の母は、後片付けのためにキッチンへ戻ってしまった。  残された私は少しずつフレンチトーストを口に運びながら、今しがたのできごとを反芻した。  ――お兄ちゃん、私が男の人とデートするって知って、どう思ったかな。  あれだけ熱烈に好きだって訴えてたくせに、もう心変わりしたんだって呆れてる?  それか、ホッとしてる? 私の興味がほかの男性に移ったほうが、兄にとっては好都合だろうから。  いずれにしても、あまり関心がなさそうに見えたのは悲しかったな。そもそも、兄にとってはさほど気にならないことなのかも。  ……当たり前か。お兄ちゃんにとって私はただの妹なんだもん。  わかってるけど、現実として突きつけられるのはやっぱりつらいな……。  いや
last updateHuling Na-update : 2025-08-11
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【7】⑥

 私がちょうど夕食を食べ始めようかというころ、母から、大事には至らなかった旨の電話が来た。 伯母は独り身で近くに頼れる親戚もいない。そのため母もあちらでの諸々の対応に追われていて、なかなか連絡を入れるタイミングがなかったらしい。「俺も退勤後に電話で話して、安心したところだったよ。……伯母さん、そそっかしいところがあるから」 兄が困った風に眉を下げる。 彼の言う通り伯母は少し気早なところがあるものの、にこにことした笑顔が印象的で、家族とともに里子の私が訪ねてもいつも歓待してくれる素敵な女性だ。 私も授業終わりに手伝えることがあればと申し出てみた。けれど、母は気を使ってくれたのか「留守番をよろしくね」と言うだけだった。 明日は土曜日。そう、亮介とのデート当日が迫っているからだろう。「お父さんとも合流して、今夜は遅いから向こうに泊まるって、明日のお昼ごろ帰ってくるみたい」「そっか」 母からのもうひとつの伝達事項を告げると、兄は小さくうなずいた。 今夜、この家には私と兄のふたりきり。 ようやく気まずさが少しずつ抜けてきたというのに――普段、両親がそろって丸々一夜空けることは稀なので、言いながら妙に緊張してきてしまう。「あっ、夕飯は食べた? まだならなにか作るよ」「いや、外で済ませたからいい。シャワー浴びてくる」 変に意識しないように明るく声をかけてみたけれど、兄も少なからず私とふたりという状況を警戒しているのかもしれない。 やや食い気味に答えると、入浴の準備をするためかすぐに二階の自分の部屋へと向かった。「…………」 再びひとりになったリビングが、やけに寂しく感じる。 兄が帰宅する前と、なにひとつ変わらない風景なのに、違って見えるのは言外にまた兄から距離を置かれ
last updateHuling Na-update : 2025-08-12
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【7】⑦

 彼女からのアドバイスは三点。  一点目は、洋服を新調すること。  私は普段、黒やグレーなどの地味めな色味の服を選ぶことが多いけど、翠と訪れたお店で「もっと華やかなものがいい!」と熱弁され、ブルーのワンピースを推された。  Aラインの、大人っぽさとかわいらしさが同居するデザインが素敵で、思い切って購入することに。  今、そのワンピースは扉に吊るしたハンガーフックにかけられている。 自分には華やかすぎるのではと一度は躊躇したけれど、こうして眺めているとやっぱりかわいい。 これを明日着ていくのだと思うと、気持ちが引き締まる。  二点目は、メイクやネイルを整えること。 大学へ行くときのメイクは必要最低限で、ファンデーションにアイブロウ、リップ程度のもの。 翠に「男はデートに対する気合いを服やメイクで測ってるんだからね!」と熱弁されたので、慣れないフルメイクで臨むことに。  動画投稿サイトには、簡単にこなれた風に見せられるテクニックを披露している配信者がたくさんいて、勉強になる。 実は今日、帰宅してからずっとメイクの研究をしていたのは。誰にも内緒だ。 デスクのほうに視線を向けると、先ほど自身で並べたメイク道具が目に入る。明日、ちゃんと研究の成果を出せますように。  ネイルに関しても、普段は爪を保護するためにネイルオイルを塗るくらいで済ませてしまっているけれど、さっきお風呂上がりに、翠おすすめの偏光パールのネイルポリッシュを塗ったところだ。 色味は上品なベージュ。私のように不器用な場合、マットよりも偏光パールの質感のものを選べば、アラが目立ちにくいらしい。  当日に塗ったほうがよりきれいさを保てるかと思いつつ、失敗してやり直しとなる未来も思い浮かんでしまったので、前日のうちに済ませておくことにした。 そして最後、三点目。頭のなかを空っぽにして楽しむこと。 翠としては、これがいち
last updateHuling Na-update : 2025-08-12
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【7】⑧

「あ、うんっ、大丈夫」「入るよ?」「うん」 思わずその場に立ち上がって返事をすると、兄は念入りに確認してからそっと扉を開けた。 きょうだいといえど異性だから、プライベートな領域に足を踏み入れるときは、最大限に気を使ってくれているらしい。兄はいつもそうだ。 扉の向こう側に見えた兄は、シャワーのあとなので、ボタンダウンのパジャマを着ている。 色はネイビーで、袖や襟の縁が白く、細く縁どられている大人っぽいデザインだ。  美形でスタイルのいい兄は、こんな格好でも絵になる。 そういえば、生活リズムの関係で、兄の寛いだ格好を見るのは久しぶりかもしれない。肩の力が抜けた雰囲気も素敵だ。「ごめん、少し話したいことがあって。父さんのお祝いなんだけど」「あっ、そうだね。秋にはもう還暦だもんね。……座って」  見惚れてぼーっとしてしまった。私は小さく首を横に振ってから、自分のとなりに兄を促した。 あいにくこの部屋で座れる場所といえば、デスクのチェアか、ベッドしかない。  兄はこちらに座ろうと一歩踏み出したけれど、部屋の隅のデスクに目を留めてそちらへ方向転換した。そこからチェアを引き寄せると、私の正面においてそこに腰を下ろす。  見えない境界線を引かれた気持ちになるのは、これで何回目だろう。 何度経験しても勝手に傷ついてしまうのをやめたいのに、できないのがもどかしい。「家族で食事するところまでは決めたよな。で、俺と瑞希でなにか形に残るものをプレゼントしたいなって思ってる」「いいね」 さっそく本題を切り出す兄に、私は自分の感情をごまかすみたいに笑顔を作った。「お金は大丈夫だよ。あまり高価なものでなければ」 長期休みに入るたびに、その期間だけ限定的にアルバイトをしている。キャンペーンスタッ
last updateHuling Na-update : 2025-08-13
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【7】⑨

 だから父の節目の誕生日には、できる限りのことをしてお祝いをして、少しでも恩返ししたいのだ。  兄は私の言葉を聞くと、うれしそうに瞳を細めた。「それ当日、本人に直接言ってあげて。なによりもよろこぶから」「うん」 だといいな。そう思ってうなずく。  ……あ、今、自然に話せてる。  気まずさもあって、ここ数日はぎこちない空気が流れてしまいがちだった。 けれど、こういう、きょうだいとしての会話や時間をまた少しずつ重ねていければ、そのうち恋心も薄れていくのかな……。 安堵したような、でも寂しいような複雑な気持ちでいたとき。「……お兄ちゃん?」 兄が、膝に置いている私の指先をじっと見つめていた。「爪、珍しいな」 普段、ネイルを塗らない私だからすぐに気付いたのだろう。意外そうに兄がつぶやく。「……あ、えっと、たまにはね」 兄は私が明日、ほかの男の子と出かけることを知っているはず。 だとしても、そのための準備であることを伝える気持ちにはなれなかった。  ごまかすように笑うと、今度は兄の視線が、扉の前にかけられた青いワンピースに向けられているのに気づく。「…………」 兄のまなざしが再びこちらへ向けられた。 その目が、さきほどと同じく「珍しいな」と語っている。「……友達に勧められて。私、あんまり色味の強い服って持ってないから。派手かな?」「いや、そんなことない」 やはり服に着られている感じになってしまうだろうか。そんな不安を抱きながら訊ねると、兄はすぐさま否定をした。
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