哲也が入院した時、彼はただ明里に会いたい一心で病院へと向かった。陽菜に頼まれた袋の中身が何の薬かも知らず、ただ「口実」となる薬袋を携えて、病院に着くと、陽菜の友人が事務的にその薬袋を渡してきた。会いたくてたまらなかった明里の態度は、けれど氷のように冷たく、その眼差しは一刺しごとに心を抉り取っていくようだった。明里の心が自分ではない他の男に向いている――そう思うだけで、彼の心は嫉妬に狂い、彼女を責め立てずにはいられなかった。明里が放った「愛がなくても、抱けるの?」という痛烈な一言。それを聞いた彼は、ますます確信を深めてしまった。やはり、彼女の心の中には別の誰かがいるのだと。己の脆さを悟られまいと、彼はさらに鋭い言葉の刃を彼女に向けた。夜市に行ったあの夜。彼は人混みに紛れ、密かに彼女の指に己の指を絡ませた。他の通行人にぶつからぬよう、さりげなく彼女を抱き寄せ、その体温を確かめた。あの時、彼が一口しか食べなかったのは、数日前から胃を痛めており、医者に止められていたからだ。そんな些細な事情さえ、彼は彼女に打ち明けることができなかった。慎吾が事件に巻き込まれた時も、明里が自分を頼ってくれないことが、彼には堪らなく腹立たしかった。そして、あの田中誠を巡る一件。あえてあいつを放置したのは、大輔の反応を見るための賭けだった。もし彼が誠を庇うなら、大輔にとって、明里はその程度の存在に過ぎないのだ、と。だが、大輔は冷徹に誠を切り捨てた。それを見た瞬間、彼は大輔への殺意に近い嫉妬に焼かれた。大輔もまた、自分と同じように明里を「狙って」いるのだと確信したからだ。あの時、明里が自ら会社を訪ねてくれたことがあった。報告を受けた彼は、内心では歓喜に震えていたが、自分から迎えに行く勇気などなかった。代わりに勳を階下へ向かわせ、余裕を装った。だが、現れた明里が口にしたのは「離婚協議書」の話だった。潤は逃げるように「出張だ」と嘘をついた。戻ったら書類を見せると約束させられ、彼はその苦しさを冷徹な仮面の下に隠すしかなかった。「次の相手はもう決まっているのか」という卑屈な問いを投げかけて。そんな彼に、彼女は静かに告げた。もしやり直せるなら、彼となんて知り合わなければよかった、と。出張中、明里から電話があった。胸が高鳴り、期待に震えながら出たそ
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