手荷物以外の荷造りを全て済ませて、此岸町にある平坂さんの神社宛に郵送をつつがなく終えると、私はほっと一つ溜め息を零しました。出発まで残り二十四時間を切り、時計の針や心臓の鼓動音が、心做しか大きく聞こえるような気がします。「…………」 部屋の真ん中で横になり、何か忘れ物はないか、何か忘れていることはないか、考えを巡らせます。物資は過不足なく用意できたし、八雲ちゃんから内外に蠢く思惑や脅威についても教えてもらった。【敷島】との遭遇戦にも、ある程度は対応出来る筈です。 調査に赴く際の心構えについては、今日に至るまでの間、宗一さんや清さん、それから教官の清治さんから口酸っぱく言われてきましたし、調査のやり方も教育課程で清治さんの受けた調査任務に帯同し、相応に場数をこなしてきましたので、全く分からない訳ではありません。 他に何か、忘れていることと言えば──「……あっ。あっ!?」 そこで一つ、肝心なことを忘れていることを思い出し、私はガバッと床から身を起こしました。ミコトです。あの子に、調査任務のため暫く御陵本家を留守にすることを伝え忘れています。 ──彼女の機嫌を損ねるな。 ミコトを怒らせることだけは、絶対にあってはなりません。私は慌てて、ミコトに会いに行くことにしました。 道中、一族の巫女たちが当番制で管理している神社に立ち寄り、そこに保管してあった"口噛み酒"と呼ばれる特別な酒の入った小さな瓶を手土産に、ミコトの待つ神域へと向かいました。 石で出来た階段を二、三段飛ばして駆け足で登る度、その両脇に建てられた無数の灯篭にボウッと青い炎が次々に灯ってゆきます。何とも幻想的な光景ですが、それはミコトが、私の急な来訪を認知した合図でした。 果たして、ミコトは神域の中央──彼女を祀る社の前で、私を待っていました。その顔に笑みはなく、何時になく真剣な面持ちでした。「──ごめん、ミコト……! どうしても、言っておかなければいけないことがあって……はぁ……はぁ……!」 息を切らしながらも、来訪の目的を告げる私を見て、ミコトは傀儡人形のような不気味な動きで、無表情のまま小首を傾げました。「取り敢えず、これ……手ぶらじゃ……悪いと、思って……」 そう言って"口噛み酒"の詰まった小瓶を渡すと、ミコトは瓶の蓋を指先
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-01-17 อ่านเพิ่มเติม