小春は部屋の中を行ったり来たりしながら、ぶつぶつとしゃべり続けている。あれこれと言い並べるその様子は、まるで自分自身を納得させようとしているようにも見えた。けれど萌花には分かっていた。小春は本気で悠真のことを想っている。その息子さんのこともまるで自分の子どものように大切にしている。この三年間、あの子にいちばん時間を使ってきたのは、もしかすると小春だったかもしれない。週末になるたびに特別支援学校の療育へ付き添っている。あの子の服も、おもちゃも、ほとんど小春が買ってあげたものだ。小春は口は悪いが、誰よりも優しい。萌花は口を開いた。「小春。前に一緒にカラリスへ行くって言ってたのは、心配してくれてるからでしょう。でもそれだけじゃなくて、悠真さんとの将来が見えなかったからでもあるんだと思う。でも今、悠真さんは結婚しようと言っているんでしょう。だったらちゃんと考えてみたほうがいい。本当にもう彼とは終わりでいいのか、それともまだ一緒にいたいのか。どちらを選んでも、私は小春の味方だから」小春は笑った。「いいの。男なんて、結局みんな似たようなものよ。萌花の結婚を二回も見てきたんだよ? あれで懲りないほうがおかしいでしょ。男に振り回されるなんてつまらない。私は仕事に生きる」萌花はそれ以上何も言わなかった。彼女も心のどこかでは小春の考えに近い。恋はあれば人生に彩りを添えるもので、なくても生きていける。しかし仕事は自分を裏切らない。午後、萌花は会社へ向かった。今、萌花はパーセクテックの株を十五パーセント保有している。時雄が自分の持ち株の半分を彼女に譲った。ほとんど押しつけるような形だった。それが時雄の出した離婚の条件で、受け取らないなら離婚には応じない。そう言われてしまえば、彼女に拒む余地はなかった。萌花は口元をわずかに上げた。元夫としては時雄はなかなか立派だ。午後、株式の名義変更を確認するための臨時株主総会が開かれた。もっとも、萌花が想像していたような反発はまったく起きなかった。パーセクテックの株主は、そのほとんどが技術部のエンジニアたちで、自分たちのチーフが会社でいちばん多くの株を持つことになったと知ると、彼らは喜んで机を叩いた。彼らにとって大事なのは、持ち株比率がなぜ変わったのかではな
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