木曜日。早速使ってみると、面白いほど順調にマッチングが出来た。話がサクサク進んで、早速一人目と会う約束をして。今日、初めて会ってみることに。マッチングアプリの出会いの速度は早くて、まだ少しだけ慣れない。この速度が、ユーザーにとっては魅力的なんだろう。そう思うと同時に、出会いを目的とした人とこれから会うという事実に。まだ少しだけ、ぎこちなさが残ると同時に。新しい人に会い始めるという、その新鮮さに。胸の奥が、不安と緊張と期待で少し高鳴っているのを感じた。仕事終わりの、落ち着いたカフェラウンジ。窓際の席。相手は、業界が近い人だった。広告主側。三十代前半。話し方が穏やかで、距離感が上手い。「音楽系案件、僕も前にやってました」「あ、分かります。アーティスト側との調整、大変ですよね」会話は普通に楽しかった。仕事の話。音楽。ライブ。最近のアプリ。話題は自然に続く。居心地も悪くない。ちゃんとしている。大人だ。私の飲み物が減ると、「何か頼みます?」と自然に聞いてくれる。帰りも、「駅まで送ります」と言う。嫌じゃない。むしろ、ちゃんと良い人だった。本当に。駅前。改札の近くで、その人が少し笑った。「今日、楽しかったです」まっすぐ目を見る。「もしよかったら、今度は普通にご飯行きません?」自然だった。下心を押しつける感じはない。でも、好意はちゃんとある。「連絡先交換しません?」私の指が、少し止まった。久しぶりだった。こういう空気。仕事相手ではなく、女性として見られる感じ。悪くない。怖くもない。ただ、胸の奥は思ったより静かだった。「あ、はい」チャットアプリは交換した。笑って別れる。感じよく。ちゃんと。大人として。でも、電車に乗って、窓に映る自分を見ながら少し考えた。悪くなかった。むしろ、かなり良かった。良い人。ちゃんとしていた。会話も合う。優しい。安心感もある。でも。——次、すごく会いたいかと言われると。少し違う。スマホが震えた。さっきの人からだった。『今日はありがとうございました。またご飯行けたら嬉しいです』画面を見る。嫌じゃない。でも、すぐ返したい感じでもない。少し考えてから、『こちらこそありがとうございました!』だけ返す。その短さに、
Last Updated : 2026-07-05 Read more