元夫の初恋の人が帰国した日、私は彼の兄嫁になった
綾辻月子(あやつじ つきこ)が流産した時、入江静真(いりえ しずま)は初恋の人の帰国を祝っていた。
三年もの間、尽くして寄り添った月子を、彼はただの家政婦か料理人くらいにしか思っていなかったのだ。
月子はすっかり心が冷え切り、離婚を決意した。
友人たちは皆、月子が静真にベッタリで、絶対に別れられないと知っていた。
「賭けてもいいぜ。一日で月子は大人しく戻ってくるさ」
「一日? 長すぎだろ。半日もあれば十分だ」と静真は言った。
月子は離婚した瞬間、もう後戻りはしないと決め、新しい生活に奔走し、かつて諦めた仕事に打ち込み、新しい人との出会いにも積極的になった。
日が経つにつれ、静真は家の中で月子の姿を見かけなくなった。
急に焦り始めた静真は、ある業界のサミットで、ついに人々に囲まれた月子を見つけた。
彼は我を忘れて駆け寄り、「月子、まだ懲りてないのか?!」
鷹司隼人(たかつかさ はやと)は突然月子の前に立ちはだかり、片手で彼を突き飛ばし、冷たく鋭いオーラを放った。「お前の兄嫁に手を出すな」
静真は月子を愛したことは一度もなかった。しかし、彼女を愛するようになった時には、彼女の傍には、もう彼の居場所はなかった。