裏切りの代償〜風に消えた愛と、流れる雲〜
誰よりも私・九条莉乃(くじょう りの)を愛してくれているはずの夫、九条柊吾(くじょう しゅうご)。妊娠を告げれば、きっと涙を流して喜んでくれる――そう信じて疑わなかった。
なのに彼は、どこか申し訳なさそうな顔でこう言った。
「ごめん、莉乃。俺、まだ父親になる覚悟ができてないんだ。子供はもう少し先延ばしにしないか?」
身を切られるような思いだったけれど、私は彼の言葉を信じて、お腹の小さな命を諦めた。
それから3年後。
私は偶然、柊吾が見知らぬ女と手を繋ぎ、幼稚園の門から出てきた小さな女の子を迎えに行く姿を目撃してしまう。
彼は満面の笑みでその子を抱き上げると、甘い声で囁いた。
「結(ゆい)、今日は三歳の誕生日だね。パパから、グループの唯一の後継者の座をプレゼントしようか」
仲睦まじく歩き去る「家族三人」の後ろ姿を見つめながら、私は全身の血が凍りつくのを感じた。
――父親になる覚悟がなかったわけじゃない。
彼はただ、私との子供が欲しくなかっただけなのだ。