婚約者の誓いを奪われ、私は新しい愛へ
結婚式の三日前、私は初めて知った。
神崎耀哉(かんざき かがや)は、式場を南の祖母の家から藤堂花梨(とうどう かりん)の憧れのスペインの古城へと変えていた。
問いただそうとした時、耀哉が友人に愚痴る声を耳にした。
「花梨が選んでくれて助かったよ。そうじゃなきゃ一生笑われるところだった」
すると友人がたしなめた。
「でも、篠原夕花(しのはら ゆうか)の祖母の家でするって約束しただろ?婚約を破棄すると言い出したらどうするんだよ?」
耀哉は鼻で笑った。
「篠原家は破産寸前だ。俺と結婚するしか道はない。彼女は賭ける余裕なんかないさ。もう業者に電話させてる。きっと今ごろ必死に改札してるだろ」
悔しさと怒りで胸がいっぱいになり、私は唇を噛みしめながら背を向けた。
三日後、古城での結婚式は予定通り行われた。
けれど私は現れず、祖母の古い家で別の男と指輪を交換した。
耀哉はいまだに理解していない。
私が彼に嫁ごうとしたのは、その「道」のためじゃなかった、十年続いた恋のためだったことを。
だが夢から覚めた今、私はもう別の道を選ぶ。