愛の失明~薄情への復讐~
五年前、夫の一時の身勝手な行動で、私は息子と視力の両方を失いかけた。
五年後、思いがけない出来事がきっかけで、失明していた目が奇跡的に回復した。
嬉しい知らせを夫と息子に伝えようと、弾むような胸を躍らせて家に駆け込んだのに、目に飛び込んできたのは、夫が息子のピアノの先生を抱き寄せる姿だった。
夫はピアノの先生の頬を撫でながら言った。
「やはり君がいい。もうあの目の不自由な者への気遣いという偽りを生きるのは、うんざりだ。この五年間は、俺にとって牢獄のようなものだ」
息子もピアノの先生の胸に飛び込み、こう言った。
「白野先生がママだったらよかったのにな。そうしたら、目の不自由なママのことで笑われることもなかったのに」
玄関に立った私は、頭のてっぺんから足の先まで、一瞬で凍りつくような冷たさに襲われた。
スマホを取り出し、仲睦まじい「親子三人」の姿を、こっそりと写真に収めた。そして、一つの番号に電話をかけた。
「先生、以前おっしゃっていたフランスへの研修の件、引き受けさせていただきます」