やり直し人生、今さら後悔されても遅い
旦那の隼人と一緒に、年末に実家へ帰る途中だった。
……そのはずが、事故に巻き込まれて、気がついたら――恋人になる前の時間に戻っていた。
前の人生では、七年間、彼と結婚していた。お互いに礼儀正しく、表面上は平穏な夫婦。でも、彼は最後まで一度も子どもを望んでくれなかった。
あとになって、私はやっと気づいた全部わかったのは、死んだあとだった。彼の心の中にはずっと「思い人」の影が残ってたんだ。
だから私は決めた。今回は、彼を解放してあげようって。
黙って連絡先を消して、距離を置いて、それぞれ違う道を選んだ。
――そして、七年後。
彼は株の世界でトップに登りつめ、思い人の水瀬水無瀬さんと一緒に、同窓会で堂々と婚約を発表した。
私が一人でいるのを見ると、彼は皮肉を込めた笑みでこう言った。
「詩羽、俺のこと、二度の人生どっちでも一番愛してたって自覚してるけど……だからって、いつまでも俺のこと待ってなくていいんじゃない?」
私は何も言わずに、そっと息子の手を取った。
その瞬間、隼人の顔から血の気が引いた。目を真っ赤にして、私を睨みつけながら叫んだ。
「……お前、『一生一緒にいたい』って言ったよな?『俺のためだけに子どもを産む』って……言ったじゃないか!」