孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~

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目覚めると、大好きなアクションゲームの世界が広がっていた。 「ドロテア魔法学園~unlimited~」 登場キャラクターの悪女先生クラウディアに転生してしまった私。 数々の男性を誘惑する彼女はシグムント王太子殿下と犬猿の仲。でもお見舞いの日から殿下の様子がおかしい。 超がつくほど堅物で厳しい人が「怪我はないか?」と耳元で囁いてくる。 仲良くなれそう? 新たな力に目覚めたり、モフモフの可愛い生き物がいたり…でも学園には魔の手が忍び寄ってきていた。 可愛い生徒を守るのは先生の役目。 悪は根絶やしにさせていただきます! 溺愛あり、モフモフあり、戦いあり…ゲームの世界で自身の運命と闘う、異世界恋愛ファンタジーです。

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1화

一話 転生先はアクションゲームの世界だった件

 ――ズキン――ズキン――――――頭が割れるように痛い――――――

 ――どうしてこんなに痛いの――

 ――こんなところで寝ている場合ではないのに――

 ――だって今日は――――――

 

 だんだんと意識が暗闇から光のある方へのぼっていく。

 その間も頭痛が止むことはなく、この痛みが夢か現実か分からずに、とにかくこの痛みから解放されたいと願っていると、目の前にパアァァと光が広がってハッと目を見開いた。

 そこには、今までの人生で見たことのない景色が広がっていたのだった。

 「え……何?この部屋……………………」

 

 目が覚めて最初に飛び込んできた景色は、よくあるおとぎ話に出てくるお姫様のような部屋だった。

 さっきまでうなされていたのか、額には汗が滲んでいる。

 「ここは日本、じゃない……?」

 

 ベッドに寝ながら呟いたひと言は、静まり返っている部屋に虚しく響いただけだった。

 私は大学でバレーボール部に所属していて、今日は春季リーグがある大事な日。

 

 そして、そんな日に限って寝坊したものだから、焦りながら走って試合会場へ向かったはず……会場近くの横断歩道を渡れば着くと思ったところでトラックが………………こちらに向かってきたところまでは覚えている。

 その後は?

 まさか私、あのトラックにはねられて……?

 「うそ…………そんなの信じない…………」

 

 背が高い事がコンプレックスで、何か自分に自信をつけたいとバレーボールを始めた。

 そしてそのバレーボールで強豪の大学に入る事が出来、レギュラーにもなれて優勝目指して頑張っていたのに……練習を頑張り過ぎて寝坊してしまうなんて。

 何が現実で何が夢なのか、訳が分からないのでひとまず体を起こしてみる。

 ――――ズキーンッ――――

 起き上がった瞬間に頭が異常なほど痛みだし、ズキズキするので布団の上でうずくまってしまう。

 痛すぎる――――もし死んだとしてもどうして頭が痛むの?死後の世界なら痛みなんてないハズじゃ――――

 

 そこまで考えて、ふと違う考えが私の頭を過ぎっていった。

 ここは死後の世界じゃないかもしれない……布団は妙にリアルだし、周りの景色もリアルな感じがするのよね。頭は痛むけれど、ここがどこなのか整理しないと落ち着かない。

 体は動かしても痛みなどはないようなので、すぐにベッドから下りて動き始めてみた。

 でも微妙に自分の体に違和感を感じるのだ。

 「…………凄い胸が大きいわ…………Fカップ?Gかな?こんなに大きいと凄く動きにくいじゃない……」

 

 明らかにバレーボールをしていた時の体型ではない事はよく分かる。じゃあ私は誰なの?

 そう思ってドレッサーを覗いてみると、そこに映っていたのは全く別人だったのだ。

 ブラウンアッシュの長い髪がウェーブがかっていて、胸は豊かに育ったおかげで着ているネグリジェのような服がぴちぴちしてしまっている。

 でも脚はスラリととても長く、張りのあるヒップを持ったスタイル抜群の美女。

 「これが、私?…………凄い美人。それにナイスバディだわ……この顔、どこかで見た事があるんだけど…………あ!」

 

 思い出して大きな声を上げてしまったので、思わず両手で口をつぐむ。

 危なかった……今誰かが入ってきても対応出来ないわ。

 そうしてもう一度鏡に映った自分を見てみると、この人物が誰なのか、すぐに理解する。

 「この顔はクラウディア先生じゃない……」

 

 クラウディアという女性は<ドロテア魔法学園~unlimited~>というゲームでプレイヤーが選べるキャラクターの一人。

 本名はクラウディア・ロヴェーヌ、公爵家の一人娘で私と同じ21歳だったはず。

 このゲームはファンタジー世界を舞台としたアクションゲーム。

 クラウディアは公爵令嬢でありながら優秀な魔力と風魔法の能力を持っていた。

 そしてドロテア魔法学園の先生でもあり、男をたぶらかす妖艶な悪女という設定のキャラクターだった。

 何よりこのクラウディア先生は、性格がとても高慢なので全体的にファンは少ない(男性ファンがほとんど)

 でも私は自分に正直な彼女が大好きだったんだ。

 他人に気を遣ってばかりの自分とは全く正反対だし、信念を曲げず、時々カッコいいセリフを言うところに憧れもあって、よくクラウディア先生でプレイしていた記憶がある。

 魔法世界を堪能しながらプレイヤーが個人でミッションをクリアしてレベル上げをしていったり、協力プレイで大量の魔物を次々と倒していくのが爽快なゲームとして人気だった。

 最終ステージにはちゃんとラスボスもいて……何回も何回もクリアしたな。物凄い時間数をプレイしたし…………って、もしかして、ここって――――

 「ドロテア魔法学園の世界なの?」

 

 私が声に出してそう呟いた瞬間、ドアがコンコンとノックされる。

 「はい?」

 「お嬢様、失礼いたします」

 

 私の声を聞いて入ってきたのは、同じ年齢くらいの黒い髪を後ろで束ねている女性だった。恐らくクラウディア先生の侍女なのだろう、お嬢様って言っていたし。

 「目が覚めていたのですね!良かったです…………頭は痛くないですか?」

 

 侍女と思われる女性が頭痛について聞いてきたので、思わず食い気味に答えてしまう。

 「すっごく痛くて…………どこかにぶつけたのよね?記憶が曖昧だから教えてくれるとありがたいのだけど」

 

 私がそう言うと、侍女はキョトンとした表情で驚いた顔をした。そういえばクラウディア先生は高慢な性格だったんだわ……こんな風に丁寧に聞くような人じゃないはず。

 でも嫌な態度をワザと取り続けるのも苦手だし、頭が痛い状況で演技するのも辛いので普通に接するしかなかった。

 「あ、頭をぶつけてしまったので記憶が混乱しているのですね!お嬢様は学園の階段から転がり落ちてしまったのです……意識がないまま3日も寝たきりだったので、このセリーヌ、生きた心地がしませんでしたよ!」

 

 そう言って涙を流しながら喜んでくれる目の前の女性の存在に救われる気持ちだった。この人はちゃんとクラウディア先生を大事に思っているのね。

 クラウディア先生は嫌われ役なので周りに敵も多いし、侍女にも嫌われているのではって思ってたからちょっと不安だったのよね。

 セリーヌって言うんだ、仲良くできそう。

 「セリーヌ、ありがとう。心配かけてごめんね」

 

 私がそう言うと、セリーヌは何かの宇宙外生命体を見ているような目で私を見つめてくるので、とりあえずその場は笑って誤魔化す事にしたのだった。

 「あははっまだ調子が戻らないみたいだからベッドで休もう、か――――っ」

 

 まだ言い終わらないうちにまた酷い頭痛が襲ってきて、私の体がグラついてしまったところをセリーヌが支えてくれる。

 「お嬢様!無理はなさらないでくださいっ!」

 「ご、ごめん、セリーヌ…………まだちょっと無理みたい……」

 

 私たちがそんなやり取りをしていると、突然扉がバンッと勢いよく開いた。

 「何事だ?何かあったのか?!」

 

 そう言って部屋に飛び込んできたのは、柔らかい金髪をなびかせた超絶イケメンの見るからに高貴な男性だった。待って、見たことあるわ…………この人はまさか……

 「シグムント殿下…………」

 

 ドロテア魔法学園ゲーム内でプレイヤーが選べるキャラクターの一人、このゲームでは一番人気の王太子殿下であるシグムント・フォン・ドロテア、その人だった。

 

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一話 転生先はアクションゲームの世界だった件
 ――ズキン――ズキン――――――頭が割れるように痛い――――――  ――どうしてこんなに痛いの―― ――こんなところで寝ている場合ではないのに―― ――だって今日は――――――   だんだんと意識が暗闇から光のある方へのぼっていく。 その間も頭痛が止むことはなく、この痛みが夢か現実か分からずに、とにかくこの痛みから解放されたいと願っていると、目の前にパアァァと光が広がってハッと目を見開いた。   そこには、今までの人生で見たことのない景色が広がっていたのだった。  「え……何?この部屋……………………」   目が覚めて最初に飛び込んできた景色は、よくあるおとぎ話に出てくるお姫様のような部屋だった。    さっきまでうなされていたのか、額には汗が滲んでいる。  「ここは日本、じゃない……?」   ベッドに寝ながら呟いたひと言は、静まり返っている部屋に虚しく響いただけだった。    私は大学でバレーボール部に所属していて、今日は春季リーグがある大事な日。   そして、そんな日に限って寝坊したものだから、焦りながら走って試合会場へ向かったはず……会場近くの横断歩道を渡れば着くと思ったところでトラックが………………こちらに向かってきたところまでは覚えている。    その後は?    まさか私、あのトラックにはねられて……?  「うそ…………そんなの信じない…………」   背が高い事がコンプレックスで、何か自分に自信をつけたいとバレーボールを始めた。   そしてそのバレーボールで強豪の大学に入る事が出来、レギュラーにもなれて優勝目指して頑張っていたのに……練習を頑張り過ぎて寝坊してしまうなんて。 何が現実で何が夢なのか、訳が分からないのでひとまず体を起こしてみる。    ――――ズキーンッ――――      起き上がった瞬間に頭が異常なほど痛みだし、ズキズキするので布団の上でうずくまってしまう。    痛すぎる――――もし死んだとしてもどうして頭が痛むの?死後の世界なら痛みなんてないハズじゃ――――   そこまで考えて、ふと違う考えが私の頭を過ぎっていった。    ここは死後の世界じゃないかもしれない……布団は妙にリアルだし、周りの景色もリアルな感じがするのよね。頭は痛むけれど、ここがどこ
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二話 シグムント王太子殿下とは犬猿の仲?
 目の前にシグムントがいる。 あのゲームでは一番人気で能力もずば抜けて高いチートキャラクター。  全ての魔法が得意なのに加えて、光の魔法が使えるただ一人の人物。   でも私がクラウディア先生なのだとしたら、2人は幼馴染でありながら犬猿の仲だったはずよ。どうしてシグムント殿下がクラウディア先生の邸に?  彼は極度の堅物で、クラウディア先生のようなふしだら(に見える)女性は嫌悪の対象なので、二人は顔を合わせれば嫌味の押収だった。   今一番会いたくなかったな……中身はクラウディア先生じゃないのに、いつも嫌味を言ってくるシグムント殿下にどうやって立ち向かえばいいの?!  クラウディア先生なら負けじと言い返す事が出来るのだろうけど……私がそんな事を悶々と考えているとセリーヌが彼に挨拶をし始める。  「王太子殿下、大きな声を出してしまい申し訳ございません!お嬢様が頭痛で倒れられたので――」  「頭痛?ああ、あそこから落ちたのだから頭を強打しているのは知っている。私は学園の理事長だからな、今日は職員の見舞いに来ただけだ。しかし君は仮にも風魔法の教師なのだから、目覚めたらすぐに癒しの魔法を使えばいいのではないか?」 そう言えばそうだ。クラウディア先生が得意な魔法は風魔法で、癒しの魔法もあるはず。 でも中身が私なのでそもそも使い方が分からない。  転生したばかりで混乱している状態で癒しの魔法を使ってもボロが出そうだし、今は止めた方が良さそう。どうにかして切り抜けないと……。  「王太子殿下、ご心配には及びません。後ほど癒しの魔法を使いますので私は大丈夫です。お引き取りくださっても構いませんから……っ」  殿下にそう言って一人で立ってみたものの、やっぱり無理かも……立った瞬間に頭がグラっとして目が回り、目の前が暗くなっていく――――  「お嬢様!」  「ロヴェーヌ先生!」  2人の声が遠くに聞こえる…………体が地面に倒れ込もうとしたところで誰かが私を受け止めてくれて、事なきを得たようだった。  「…………っ……いたたっ」  思わず声が漏れてしまったけど、倒れた衝撃で頭がガンガンするだけで、体に痛みはなかった。  私を支えている力強い腕、これはセリーヌのものではない。  …………だとすると、殿下?ハッとして
last update최신 업데이트 : 2025-05-21
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三話 夢の中と現実世界
 セリーヌに言われて眠ったはずなのに、なぜか私はクラウディア先生の後ろにいて、彼女は学園での服を着て学園内を歩いている。  何度もプレイしたゲームなので、ここがドロテア魔法学園の校舎内である事はすぐに分かった。  どこに向かっているのだろう…………廊下を歩いていると生徒たちが声をかけてきて、クラウディア先生も楽しそうに言葉を返していた。  「先生、次の授業は何を教えてくれるの?」  「クラウディア先生、この魔法のコツを教えて」   その様子を後ろから見守るような形になっていた。幽体離脱というより、夢で彼女の記憶を見ているって事かな?  もちろん生徒たちには私の姿は見えていないようだ。   生徒達との会話が終わり、広い校舎内を一人歩いていくクラウディア先生の後をついていくと、エントランスホールに下りる大きな階段にさしかかった。 クラウディア先生は普通に下りようとしていたのだけど、突然時が止まったかのように彼女が動かなくなる。   どういう事?これは魔法なの?  今の私は幽体みたいな状態だからなのか、私自身は自由に動く事が出来ているわ。 クラウディア先生の前に行って先生を起こそうとしてみたものの、透けてしまって触る事も出来なかった。 そりゃそうよね……記憶を見ているのかもしれないし、もしこれが過去の出来事なら私がどうこう出来るわけがない。  じゃあ、この後ってどうなるんだろう。 確か私が目覚めた時にセリーヌや殿下が階段から落ちてって言ってたような……するとクラウディア先生の後ろからノイズのような性別が分からない声が聞こえてきたのだった。  「さようなら、クラウディア先生」  その声とともに時間が動き出し、誰かに背中を押されたクラウディア先生は階段を一直線に滑り落ちていったのだった――――  『クラウディア先生!』  もちろん私の声など届くわけはないんだけど、先生の元に駆けつける前に突き落とした犯人の方を振り返ると、影のようになっていてよく見えない。  誰なの?誰が先生を――――――絶対に見つけてみせる――――!  そう決意したところでゆっくりと目が覚めて、今いる世界に意識が戻っていく。  「…………夢……」  目覚めると酷い汗をかいていて、ネグリジェのようなドレスも汗で湿っていた。
last update최신 업데이트 : 2025-05-21
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四話 ドキドキの職場復帰初日
  「う――ん、素晴らしい」 この世界で目覚めてから10日ほど経って、その間健康的な食事と運動(主にジョギングと筋トレ)をしながら魔法を試したり、使いこなせるようにしたりと色々頑張った結果、美しい筋肉の筋が見えるようになってきて、自分の腕を見ながら感動していた。 やっぱり食事と運動って大事よね。 転生前の世界で運動部だった私は、その辺の知識を生かして筋肉が全然ついていないクラウディア先生の肉体改造に踏み切ったのだった。  クラウディア先生の体はとても女性的で魅力的だけれど、私には少し動きにくい。 胸も大きいので布を巻いてあまり揺れないように固定してみた。 この状態で運動してみたところ、とっても動きやすい! 学校の先生って肉体労働も多いだろうから、この状態で出勤しよう、そうしよう。このスタイルなら変に周りを誘惑する事もない……と思うし、あの堅物の王太子殿下も話しやすくなるんじゃないかな、なんて。 これから色々とお世話になりそうだから、悪印象は避けたいものね。 クラウディア先生は公爵家の令嬢でもあるから女性的なのは素敵な事なのだろうけど、その魅惑のボディで男性を誘惑していくキャラクターなものだから、殿下にはふしだら認定されている。 先生自体は全く男性と遊んでいた記憶もないし、勝手に言い寄られていただけなのに傍から見たら誘惑しているように見えるのね。 彼女自身も高慢な性格を演じていた事も相まって、男性がクラウディア先生につかまっているような構図が出来上がってしまっていた。  婚約者がいないのは好都合だけれど、皆に嫌われるのは避けたい。 何より何も悪くないクラウディア先生がなぜ孤独にならなければならないのか、釈然としないもの。 自分の中では極力周りを誘惑しないように服装に万全を期して出勤の準備を済ませ、馬車に乗り込んで魔法学園に向かったのだった。 魔法学園に出勤する時のクラウディア先生の服装は、丈の長いローブを腰の位置に太めのベルトで締め、ドレス状にして着こなしていた。 セリーヌに「いつものように胸元を開けますか?」と聞かれ、胸に布を巻いているし肌を見せるのは落ち着かないから、襟はハイカット。首元にはレースのクラヴァットをあしらうカッコいい装いにしてもらったのだった。 「お嬢様、今日の装いは一段と素敵です~~!」 セリーヌが服装を
last update최신 업데이트 : 2025-05-22
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五話 養護教諭とラクーとの出会い
 理事長室を後にして廊下を歩きながらさっきの王太子殿下からの話を思い出し、考えを巡らせていた。 記憶を改ざん?  そんな事を出来るのは特殊な魔法を使える人だけのはず……この学園にそんな人物っていたかな。 生徒はまだそういう魔法は使えないし、もしいるとしたら職員の誰かって事になる。  それとも外部から来た人間に狙われている?   色々考え事をしながら歩いていると、目の前に突然現れた誰かとぶつかった衝撃で、書類が散らばってしまうのだった。  「ご、ごめんなさい!考え事をしていたものだから……」  私が書類を拾いながら謝ると、ぶつかってしまった相手は女性で、散らかった書類たちを一緒に拾ってくれていた。 優しい人だなと顔を上げると、ルビーピンクのウェーブがかった髪をゆるく結い上げた、美しい大人の女性がニッコリと笑ってこちらを見ていた。 すっごく素敵――――大人の余裕すら感じる。肌も綺麗だし、唇もプルンとしていて魅惑的。   こんな女性、ゲームの中にいたかな……  「焦らなくて大丈夫ですわ、クラウディア先生」 「あの、あなたは…………」 「まぁ!私を忘れてしまったのです?養護教諭のカリプソですわ、やっぱり頭を強打したという話は本当でしたのね……」  カリプソ?う――ん、ゲームに出てきたかな…………何回考えても思い出せない。きっと頭を打ったから記憶が混乱しているのね。  こんな美人、一度見たら忘れるはずないもの。  「ごめんなさい、ちょっとまだ混乱してるみたい」  カリプソ先生は全ての書類を一緒に拾ってくれて、最後の一枚を私に渡してくれると、誰もが魅了されてしまいそうな笑顔で私を気遣ってくれた。  「まだ復帰されたばかりですし、無理しないでくださいね。もし具合が悪くなったら保健室に来ていただければベッドもありますし」  「カリプソ先生……ありがとうございます!」  なんて素敵な先生なの――――今日はそれだけでとってもいい一日になりそうな気がした。ひとまずその場はカリプソ先生に別れを告げ、颯爽と自分のクラスへと向かったのだった。  ――――放課後――――  「初日からなかなかハードだったわね…………」  魔法学園は13歳から入学で1~4年生まであり、1学年に4クラス編成で火、水、風、土のクラスに分
last update최신 업데이트 : 2025-05-23
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六話 すっかり変わってしまった幼馴染 ~シグムントSide~
 ドロテア王国の第一王子として生まれた私は、ドロテア魔法学園を主席で卒業後、父上の跡を継いで学園の理事長に就任した。 父上も年齢を重ね、理事長職と国王としての職務を兼務する事が大変になってきた事もあり、私の社会経験の一環として早期に就任せよという話だった。 我が弟のダンティエスも同じような理由で卒業後に校長に就いたのだが、父上の思惑としては我々兄弟を競わせる意味もあったらしい。 今のところ私が王太子ではあるが、父上はダンティエスの能力が私より上回れば彼に王位を渡す事も考えていると仰っていた。  そこには無能な者に王位を渡す気はないという、国を想う国王としての断固とした考えがあると私は思っている。 だからこそ、この理事長という職をしっかりと全うしたいと常々考えていた。  我が学園に職員として入ってきた公爵令嬢のクラウディア・ロヴェーヌ嬢は、学園の風紀を乱す存在として見過ごす事の出来ない人物だった。 彼女とは幼馴染で昔は仲よくしていた事もあったが……一時期から疎遠になり、どんどん見た目が派手になっていった。  胸元を大きく開け、歩くだけで男を誘っていると言わんばかりの服装だ。   それとともに様々な良くない噂が私の耳をかすめていく。 男遊びが激しく、貴族令息を誘惑して回っているというものだ。見た目が見た目だけに誰もがその噂を信じていく。  私は昔の印象もあるので信じがたい気持ちだったが、学園の教職員として就任した彼女と話して愕然とした。  昔の面影は全くなく、ねっとりとした話し方で誘うような言い方をしてくるので思わず拒否反応が出てしまったのだ。 それでも信じがたかったが、私の目の前で男性職員に密着している姿を見た時は、もう昔の彼女はいないのだなと悟った。  いずれにしても学園の風紀を乱す者は許し難い事なので、彼女に会う度に何度も注意をしたが全く聞き入れる気はなく、私を堅物で融通が利かない人間だと言い放つ。 口を開けば甘ったるい話し方でそれについても注意をしたが「理事長が意識しすぎなんですよ。生徒にも特に何も言われた事はありません」と言い始める始末――――生徒が先生に意見出来ないでいるかもしれないのに、あまりに能天気過ぎる。  これ以上注意しても無駄だと放置してしまえば楽だっただろうが、理事長という立場上そうもいかないので
last update최신 업데이트 : 2025-05-24
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七話 独占欲? ~シグムントSide~
なんだったんだ……昨日のロヴェーヌ先生は。全くの別人のようではないか。 私は理事長室の椅子に座り、机に肘をつきながら昨日の出来事について頭を巡らせていた。自分が見てきたものがまるで現実のものとは思えず、これからどうやって彼女と接していけばいいのか頭を悩ませる。 本当にロヴェーヌ先生なのか?頭を打って別人に生まれ変わったとか? そのくらいの変化があったのは間違いない…… あのようなロヴェーヌ先生ならば学園でもっと人気が出そうだな。 今までも教職員や生徒たちからもとても人気のある先生だったが、私にとっては風紀を乱し私自身の気持ちも乱されるので、彼女の存在が悩みの種だった。 ロヴェーヌ先生が人気者に……その姿を想像してみると、何故だかそれはとても都合が悪い気がしてくる。 風紀を乱すわけではないのに都合が悪いとはなんなんだ? いまいち自分の考えがよく分からずにモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、彼女が学園に職場復帰する日がやってきた。 理事長室には朝から弟のダンティエスとミシェル副校長が集まっている。 「ようやくクラウディア先生が復帰するね。楽しみだ」 「まったく、校長は何を企んでいるのです」 「心外だな~~何も企んでいないよ。クラウディア先生がいないと刺激がなくてつまらないじゃないか。彼女はスパイスみたいな人だから」 ダンティエスがまた軽口をきいて、ミシェル副校長に窘められていた。スパイス、か……確かにそんな存在だった事は否めない。 私には好ましくないスパイスだったが。 そんな会話をしているのもバカバカしくなり、書類に目を通しながら彼女が来るのを皆で待つ事にした。 するとすぐに扉がノックされ「失礼いたします」という声と共にロヴェーヌ先生が入ってきたのだった。 礼儀正しく入ってきた彼女は、いつものような胸元ががら空きの服装ではなく、ハイカットの襟元にレースのクラヴァットを首元につけて、とても上品な服装でやってきた。 あまりのイメージの変わりように驚くとともに、その美しさに息をのむ。 ここにいるのは誰だ?まるで女神が降臨したかのような―――― 「長らく休みをいただいておりましたが、今日から復帰いたします。ご迷惑をおかけいたしました」 そう言ってロヴェーヌ先生は丁寧に頭を下げてくる。 彼女らし
last update최신 업데이트 : 2025-05-25
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八話 二番手 ~ダンティエスSide~/ 運命の相手 ~国王Side~
 ドロテア王国の第二王子として生まれ落ちた俺は、勉強も二番、王位継承権も二番、剣技や魔法も二番、持って生まれた魔法も兄上は光だったのに対して俺は闇…………全てにおいて兄上に劣る半端者だった。   しかし人間関係においては兄上より上手いようで、特に女性とはすぐに仲良くなれるし、顔立ちも良かったからか遊び相手には困らない生活を送っていた。 誰かと一緒にいると兄上には出来ない事をしているという優越感に浸れる事もあり、絶えず誰かと(主に女性と)一緒にいる事が多く、学園随一の遊び人と呼ばれるようになる。   そんな俺にも難攻不落の女性がいた。   クラウディア・ロヴェーヌ嬢だ。彼女は幼い頃から王宮に来ていた事もあり、兄上と仲が良よかった。 私もこっそり陰から見ていたけれど、兄上に対抗心を持っている俺にとって兄上と仲が良い彼女に近づくのは容易ではなかった。 ずっと陰から見ているだけの存在だったが、いつからか2人の仲が悪くなり、クラウディア先生は見た目もどんどん遊び人のようになっていく。  まるで俺のように……しかし俺と同じ遊び人といった感じなのに、なかなかに身持ちが固い。 兄上が離れたので彼女に声をかけられるようになり、さっそく周りの女性のように口説き落とそうとした。  「クラウディア先生、今夜お食事でもどうですか?」 「夜はお父様と食事の約束がありますの」 「お父上との食事なら明日でも大丈夫では?」 「私にとってはこの世の誰よりも大切な人なの。あなたを優先させる理由はなくてよ、ふふっ」   こうして適当な理由を付けて、俺がどんなに誘っても笑顔でスルリとすり抜けていく。いかにも悪い女と言った感じなのに。   魔力も高く優秀だから全然近寄る事も出来ない。 こんな女性は初めてだった――――たいていは俺が声をかければ目が喜び頬が赤くなり、向こうから近寄ってくるのが定石だ。 クラウディア先生は声をかけたら一度は必ずスルーしてきて、何度目かでようやく立ち止まってくれる。 女性にここまであからさまに冷たい態度をされた事のない俺としては、傷つくというより興味深々だ。  彼女が俺を無視できなくなった時にどんな表情をするのか見てみたい。   そんな好奇心が膨れ上がり、いつからかクラウディア先生から目が離せなくなっていった。 よ
last update최신 업데이트 : 2025-05-26
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九話 憩いの時間と用務員カール
 「はい、じゃあ今日はここまで!」   ドロテア魔法学園に復帰してから5日が経ち、少しここでの生活に違和感もなくなり、授業をする事にも随分慣れてきた。 転生する前は学生だったし、誰かに教える立場でもなかったので授業をするという事に物凄く不安があったのだけど、いざ教卓の前に立ってみるとクラウディア先生の記憶も残っているからか、思いの外すんなりと先生をする事が出来たのだった。   最初は先生と呼ばれる事にも違和感しかなかったのにね。   風の教室で授業をしていて気付いたのは、クラウディア先生は割と生徒に好かれていたのだという事。 皆が「クラウディア先生!」と寄ってきてくれて本当に嬉しいし、心から可愛いという気持ちが湧いてくる。   やっぱりクラウディアはカッコいいのよ!  私は一番好きなキャラクターだったので、彼女が慕われていた事実が嬉しくて仕方ない。 それに――――復帰してから理事長に嫌味を言われる事もなく、とても快適に過ごせている。 ゲームでは事あるごとに嫌味の押収だった2人なのに、こんなに穏やかに会話出来るようになるなんて思ってもいなかった。  昨日は教室のゴミ箱を魔法を使わずに持って歩いていると、突然やってきて一緒に持ってくれたのだ。  「君は風魔法を使えるのだから、魔法で重さを軽くしたらいいのに」 「いえ、それだと生徒に示しがつかないと思うんです。なんだかズルをしている気がして……魔法っていざという時に使うものだと思うので」 「ま、真面目だな……」  理事長にそう言われたけれど、そんな私に付き合って一緒に大きなゴミ箱を持ってくれる理事長の方がよほど真面目だし優しいと思う。   「真面目、ですか?このくらい普通だと思いますよ。でも理事長が手伝ってくれて助かりました、ありがとうございます!」  前なら絶対に手伝ってはくれなかっただろうと思うから、今一緒に歩いている事が嬉しくて何だかお礼を言いたくなってしまったのだった。 笑ってお礼を言ってみると、照れながら「礼には及ばない、ク、クラウディア先生が大変そうだったからな」とぶっきらぼうに言葉を返してくれる。   理事長ってツンデレ?それに今クラウディア先生って言ってくれた?!   前はロヴェーヌ先生だったのに……何だか距離が縮まっている気がして
last update최신 업데이트 : 2025-05-27
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十話 3人で庭園の手入れ
   「校長!仲良くだなんてクラウディア先生に失礼ですからっ」 「ふ――ん…………」  カールは私の為に言ってくれているんだろうけど、すっごく動揺しているみたいで校長が意味深な笑みを浮かべている。 すぐに男女の仲にしたがる人っているのよね……特に校長は女性関係が派手な印象があるから気をつけなくちゃ。  「植物たちへの水やりを私がさせてもらっていたんです。あ、そうだ!校長もやります?我が学園の庭園は素晴らしいんですよ。一緒にどうですか?」  私はあえて彼を誘ってみた。 いつも身ぎれいにしている校長が、こういった汚れ仕事をするイメージがわかないので、きっと嫌がって戻っていくだろうと思ったのだ。 でも私の推察はすぐに一蹴されてしまう。  「いいね、私も交ぜてほしいって思っていたんだ。クラウディア先生から誘ってくれるなんて嬉しいな~」 「あ、じゃあ校長はこちらのホースで……」  校長が嬉しそうに私に近づいて来そうだったのをカールがその辺にあるホースを校長に渡して、違う方向へ促してくれた。 助かった――ダンティエス校長はいつも笑顔で物腰が柔らかいしニコニコしている事が多いんだけど、何か思惑がありそうな笑顔でなかなか校長との仲を深める事が出来ずにいた。 上司と仲が悪いとやりにくいし仲良くしておくに越したことはないとは思うけど……どうしてこんな作ったような笑顔を見せるのだろう。  理事長と兄弟だけあってとても美しい顔の造りだし、ダンティエス校長はとにかく女性から人気がある。 ここまでモテたら、普通の男性は喜ぶものではないのかな。   ゲーム中のクラウディア先生はあまり校長と交流しているところは出てこなかった。 それなのにこちらの世界では特に校長との交流が多くて、向こうから声をかけてくる事が本当に多いのだ。   廊下を歩いていても突然現れて声をかけられるし、資料室に資料を取りに行った時も気配もなく手伝いに入ってきたり……ダンティエス校長は闇魔法の持ち主だから、それっぽい魔法で自分の気配を消したり人の気配を察知したり出来るのかな。   お顔も美しいしキラキラ効果が物凄いので、どう対応していいのか分からない。 クラウディア先生なら上手く出来るんだろうなぁ。   私が水やりをしながらそんな事を悶々と考えていると、後ろ
last update최신 업데이트 : 2025-05-28
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