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愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!
愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!
作者: Kaya

性格の悪い妻に憑依したので、迷わず離婚します

作者: Kaya
last update 最終更新日: 2025-06-09 19:26:11

 「氷の王」と呼ばれたローランド六世は、幼い頃から愛のない夫婦の元で育ち、常に愛を求めていた。

 だが妻にと政略結婚を持ち掛けられたのは、性格の悪い大帝国の皇女、アデリナだった。

 ローランドは迷ったが、自国の民を思って彼女との婚姻を決める。

 始めはローランドも何とか妻を愛そうと努力した。

 だが性格の悪い妻だけはどうしても愛せなかった。

 その事で苦しみ、やがて心を閉ざした。

 数年後。

 二人の間に義務として子供が産まれるが、ローランドは国を守るために隣国の戦場へと旅立ってしまう。

 そこでローランドは瀕死の重傷を負うが、ヒロインで白衣の天使=リジーに命を救われる。

 リジーと触れ合い、心を通わしたローランドは、ついに本当の愛を知るのだ。

 ローランドとリジーの愛は、吹き消せない炎のように燃え上がった。

 「許せない……!!

 私以外の女を愛するなんて許さないわ…!!

 すぐに別れなければ、その女の大切な関係者を、一人ずつ処刑するわよ!!!」

 

 それを知ったアデリナは、自分の所有物を奪われたと怒り狂い、二人を引き離そうと過剰なまでの妨害や嫌がらせを繰り返した。

 だがローランドとリジーの絆は深くなるばかりで、ブチ切れたアデリナはついに母国の兵を引き連れて、夫の治める国に反旗を翻した。

 アデリナの母国マレハユガ大帝国と、クブルク国の全面戦争が始まったのだ。

 嫉妬に狂った母親のために、息子のヴァレンティンは王である父と戦争をする事になる。

 最終的にアデリナは破婚されて身を滅ぼし、最愛の息子ヴァレンティンは、最後までリジーとの愛を貫いた自分の父親、ローランドによって殺害された…

 ……って悲劇すぎん?

 ……タイトルが確か。

 【愛を貫いた白衣の天使と氷の王】っていう不倫恋愛ロマンス小説だったよね?

 何で小説投稿サイトの素人作品に出てきた、性格の悪い妻アデリナに私が憑依してるの?

 しかもまだ未完成作品だったじゃない!!!

 今の段階だと確か、二人が政略結婚して一年後くらいだよね。

 だけどそれなら、既にローランドはアデリナに対して不信感しかないはず……!

 しかも私の最推しのアデリナの息子、ヴァレンティンに至ってはまだ妊娠すらしてないじゃない!

 会いたかったな、ヴァレンティン!

 でもそっか。何か分からないけど、憑依してしまったものは仕方がない。

 それより、この最悪なバッドエンドを一体どうするべき?

 考えて。

 物語やゲームの悪役に憑依してしまった主人公達なら、こんな時どうする?

 やっぱり、バッドエンド回避を目指すのが鉄則だよね!

 それなら私も夫との仲を友達程度に回復しておいて、ヒロインが現れたら快く譲ればいいんじゃない?

 いや、その前に遊んで暮らせるお金を稼いでおいたり、隣国の王子に溺愛されたりすれば?

 って……え?

 ちょっと待って待って待って。

 夫のローランド王は既に、アデリナに対して冷え切ってるんだよね?

 そんな人に好かれようと、媚び売りながら生きるなんて無理じゃない?

 こっちもそれなりの年齢だし、プライドが許さないというか。

 それにヒロインが現れるまでにって。

 ……ヒロインが現れて、夫が横から奪われていくのを見守れって?そんなドロ沼、現実だけで十分なんですけど!

 それにこんな異世界でお金を稼ぐなんて、そう簡単じゃないと思う!

 隣国の王子が人妻を溺愛?

 本物の小説の住人じゃあるまいし、そんな都合のいい展開あるわけない!

 つまり自力で救われる以外に、私が助かる道はないって事だよね!

  

 うん………バッドエンド回避のために即離婚しよう!

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  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   剣術師範ラシャド登場!アデリナとの関係とは?

     思わぬ人物に愛されていたもんだ。 隣国の王子は無理でも、もうこの際ライリーと駆け落ちすれば良くない? ……とは言えライリーってこのくらいだとまだ14歳とかその辺りだっけ? まだ中学生かあ。 だとしたら犯罪になるな。 それにアデリナも近いうちに離婚予定ではあるものの、まだ一応人妻だ。 本気で残念だ。  「アデリナ様。ご無沙汰しております。」 さっきまで子供達に剣を教えていた、ちょっと厳つい村人のような格好の男が近寄ってきた。 髪は白くて短く、顔は角ばって薄ら顎髭を生やしている男性。 まず丁寧に頭を下げる。 見た目に分かるほど屈強な肉体。 汗まみれの額を首にかけていた布でガシガシと拭いていた。 「どうも……?」(ステータスオープン…) [ラシャド▷剣術師範 Lv55 ライリー達に剣を教えている 現在の親密度36] 遠目に見て何となく分かっていたけど、やっぱりライリー達の先生みたい。 ……ていうかレベルと親密度の数字が微妙で良く分からないんですけど。 振り返り、懸命に稽古に励む少年達を眺める。 「アデリナ様のお陰で皆元気になりました。 貴方はあの子達の命の恩人だ。」 「そんな……私は何も。」 実際にライリー達を救ったのは本物のアデリナだ。 でも誰の目にもアデリナはやはりアデリナにしか見えないのだろう。 複雑だが微笑む事にする。 「いつもありがとう、ラシャド。」 「いえ。 あの。もし宜しければアデリナ様もあの子達と一緒に夕食を食べませんか?」 ラシャドの正体は未だよく分からないが、性悪だと言われているアデリナを警戒する様子は全くない。 よほど信頼しているんだろう。 「いいわ。食べましょう。」

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     そうだ………!! 思い出した! 確かあの戦争の最中、アデリナ達が秘密の精鋭部隊を投入し、ローランドの軍を追い詰めるというエピソードがあった! それがクブルク内部にいたもんだから、ローランドはかなり苦戦したのよね。  じゃあ、あれって……元はアデリナが奴隷少年達を買って育てていた部隊だったの!? しかも最初はローランドのために作った部隊だったのね? アデリナ、やっぱりアンタ凄くローランドを愛してたのね! 何で秘密にしとくのよ! あ!不器用だからか! ……て、事は……このまま小説通りにストーリーが進むとこの子達は全滅するわけ……で。 隣に佇んでいたライリーが腰を低くし、私の右手をそっと握った。 そのまま手の甲に触れるようなキスをする。 まるでファンタジー世界の騎士の誓いの様な仕草。 純朴な瞳がなぜか熱を帯びている。  「アデリナ様。僕達はアデリナ様の命令ならばローランド王を助けます。 ですが…もしアデリナ様がお望みなら、いつでもそのローランド王を殺せます。」 うん、うん、ううんーーー!!? 物騒!何言ってるんだねライリー君!!! フラグ立てたら駄目ーーー!!!  とにかく私がこのライリーを買った訳ではないが、これは相当アデリナに忠誠を誓っているみたい。 「あ、ありがとう……?」 「いえ……アデリナ様にキスできて僕は本当に幸せです。」 嬉しそうに微笑んでライリーは名残惜しそうに私の手を離した。 顔が真っ赤である。 えっと……これはどういう事かな。 とりあえず現在のライリーのステータスを確認する事に。

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      「アデリナ様…………!」  着いた先で私を出迎えてくれたのは、超絶なる美少年だった。 わあ、眩しいイケメン。 弾ける若さ………!モチモチの肌! 鮮やかな黄色い髪。驚くほど小顔。 ぱっちり開いた両目。薄いブラウンの色した瞳。 ファンタジーの世界で騎士が着てそうな白いシャツに、モスグレーのパンツスタイル。 汗さえ眩しいってどういうこと? ただし、まだ背が高いとは言えない。   何で?誰?何? どう迎えてあげれば正解なの?  瞳を輝かせ、犬のように走ってくる姿が目に入る。 「会いたかったです…………!」 ゴフッという鈍い音がして、私の顎のあたりに彼の頭が当たった。 そのままバランスを崩し、私は腰から地面に倒れ込んでしまった。 ……………だから、誰? それは私の第二の推しだった。  その名はライリー。 後に幼いヴァレンティンに剣を教え、あの戦争で最前線で指揮を取った男。 ヴァレンティンの師範であり右腕の将軍。 ヴァレンティンを庇うために自分が囮になり、結果死んでしまう悲しい宿命の! そのライリーだ!生ライリーだ! きゃー可愛い!アイドルみたい! 会えた!第二の推しに会えてしまった! 神様ありがとう…………!!! しかしそのライリーに押し倒されて。これは一体どういう状況なの? ◇ 「……はっ!」「やあ!」 数十名の気迫ある掛け声が響き渡る。

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      看病したのは妻(仮)だから仕方ないとして、あれからとにかくローランドを避けまくっているのに何故か向こうから凄く絡んでくる。 それに全く離婚してくれる気配もない。  あー!いやだー!この前なんてついに夕食時に捕まって強制的にご飯一緒に食べたし。 何であんな無愛想な男の顔見ながら、ご飯食べなきゃいけないわけ? この世界ならではの罰ゲームなの? 「アデリナ様。馬車の用意が整いました。」 「……馬車?」 午後のティータイムを楽しみにしている私の元に、ホイットニーがやって来た。 彼女は普段とは少し雰囲気が違う、質素な格好をしている。町娘風という感じの? えっと。なんだっけ……馬車? 何か出かける所あったかな? 「あそこに出かけるのは久しぶりですね。 お召し物を変えますか? 準備ができたら行きましょう。」  「あそこってどこ?ホイットニー…!」 「もう、うふふ、アデリナ様ったら。 お忘れですか?あの少年ですよ、あ、の。」 相変わらずアデリナ様は忘れたフリがお上手なんですから〜とホイットニーにお上品に笑われてしまったけど。  ……分かんないなー!どの少年かな!? 身支度を済ませた私と一緒に、ホイットニーもなぜか地味な感じの馬車に乗り込む。 これはよく、アデリナがお忍びの時に使う馬車らしい。 いつもは付き添う護衛の兵もいない。 「アデリナ…って……一体何したの? 少年って何?」 「うふふ、着いたらすぐ思い出しますよ。」 私と向き合う形で台座に座っているホイットニーが、上品に笑う。 「教えてよー、記憶全くないんだから。  本当に私はアデリナじゃないんだって。」 

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ローランドの変化

      それからも妻はどんどん変化した。 放棄していた、王妃の仕事を率先してやるようになったのだ。 来賓客の対応、その指示。 誠意を持って相手をもてなす事は王家の信用にも繋がる。 上質な茶葉や珍しい陶器で作られた茶器。 上品な食事や、美味なデザート。 それらを選ぶにはセンスが試される。  相手が好きそうな音楽家を迎えて、目の前で演奏させたり、高価で唯一無二の贈り物を贈ったり。 割り当てられた予算を上手に使い、どのようなコンセプトで相手を歓迎するか。 それによって国内貴族との縦の繋がりを。 諸外国との関係を円滑にするのだ。 アデリナは思いの外センスがあった。 それに自分の住む王妃宮の手入れも始めた。 貴族の侍女達にそれぞれ的確な指示を与え、自分に悪意を持つ侍女にはそれなりに正当な制裁を加えた。 今まで見窄らしく思えていた王妃宮が見違えるほどに美しく、生まれ変わっていく。 また荒れていた庭園が驚くほど整備された。 色とりどりの花がバランスよく植えられ、鬩ぎ合うように咲く様は綺麗だった。 しかも花で波打つように道を作っている。 これまで存在しなかった「寄せ植え」という手法を使い、プランターに密集させた様々な花を、溢れ落ちるように咲かせた。 あまりにも美しいのでその中央に、今度新しい噴水を設置させようとさえ思った。 これまでアデリナを無能と思っていた王宮勤めの臣下や官僚達も、この変化に戸惑っているようだった。 ◇ あれからアデリナには監視をつけている。 以前は悪さをしないかどうかだったが、今は少し違う。 「ランドルフ。今日はどうだ?」 「はい。今日もまた本を片手にティータイムをなさっていらっしゃるようです。」 「はあ。そうか。 ……まだ懲りてないんだな?」 「…その様ですね。」

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ローランドの変化

     翌朝、アデリナは自分で作ったという料理を侍女達に運ばせていた。 食欲を唆られるような色どりの野菜と肉炒めに、具沢山のスープが用意されていた。 何か重大な病気では?と侍医が言う。  長く王家に仕えている家系だ。  意見は無視できない。 しかしアデリナは「だから栄養不足による貧血ですって。」と、侍医と何故か言い争っていた。  後からクビにした方がいいとも言っていた。  何を根拠に言っているのかは分からないが、自信満々だった。  確かに歳を取った侍医にはいささか不安がある。  考慮するべき点でもある。 食欲が湧かないと言っているのに、アデリナは食べろとひつこく、断れば急に怒り出した。    自分の事をもっと大切にしろと。 ……私は王だ。やるべき事がたくさんある。  そんな事はもう長い間、ランドルフ以外には言われていなかった。  まさかアデリナが私を心配しているのか?  思わずそう尋ねれば。 「ええ!そうです!  妻が夫の心配をするのは当たり前でしょ!」  あの薄青紫の色をした双眼が、真っ直ぐに私を見おろしている。  ピシッと伸ばした背中、堂々とした振る舞い。  とても侮辱や嫌味を言ってるようには聞こえない。  信じられないが、本当に私を心配してくれているようだった。 なぜ今さらそんな風に素直に言うんだ……? 妻から心配される………。  たったそれだけの事がこんなにも嬉しいだなんて。   どちらの料理も胃につっかえるかと思っていたが、案外あっさりした味で、すんなりと喉の奥に収まっていく。 そして、どちらも美味かった。  まさか元皇女が、自ら料理を作るなんて誰が想像できただろうか?  側に控えるランドルフも、何故か何も言わなくなっていた。  多分ランドルフも、アデリナのこの変化に気づいているのだろう。 ただ素直に「美味しかった」とか「ありがとう」とかは言えなかっ

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