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#19:勝者の権利

Penulis: 渡瀬藍兵
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-25 18:55:31

後方へ大きく跳躍し、男との間合いを切りながら着地する。

遅れて舞い上がった土埃が、壊れた路地裏の空気に溶け込み、静寂の中でゆっくりと落ちていった。

「……はぁ……っ、はぁ……」

荒い呼気が、堰を切ったように喉から零れる。

肺は灼けつくように酸素を求め、心臓は警鐘のごとく高鳴り続けていた。

エレナの身体が、もう限界だと内側から悲鳴を上げている。

(エレンが……こんなふうに息を切らすなんて……本当に、ギリギリだったんだね)

心配そうなエレナの声が、意識の隅に弱く響く。

(ああ。この男は……今まで対峙したどの敵よりも、明らかに格が違った。技も、速さも、あの雷の力も。だが――)

「……今回は、私の勝ちだ」

静かな声だった。

だがそれは、揺るがぬ事実として、その場に落とされた。

「うっ……参った、参った。まさか、ここまで一方的に捻じ伏せられるとはね」

瓦礫の山の奥から、男が身体を起こす。

肩を軽く回しながら苦笑するその表情に、先ほどまで渦巻いていた闘気は、まるで嘘のように消え失せていた。

エレンは一歩、静かに前へ出る。

「なぜ、いきなり私に斬りかかった?」

「んー、仕事でね。君たちの実力を測ってほしい、って。そういう依頼だったのさ」

その言葉に、エレンの眉間が、わずかに寄る。

「殺意がなかったのは理解している。だが……誰だ?

そのような、ふざけた依頼をしたのは」

――正直なところ。

エレンの胸の奥で、剣士としての火が、かすかに燻っていた。

久しく味わっていなかった、全神経を研ぎ澄まされる焦燥と、張りつめた高揚。

この男との剣は、確かに――愉悦に近い何かを伴っていた。

だが、その余韻は、次の感情にあっさりと塗り替えられる。

もし、あの最初の一太刀が。

もし、雷を纏ったあの踏み込みが。

エレナ本人へ向けられていたとしたら。

想像した瞬間、エレンの瞳の奥で、温度のない怒りが静かに灯った。

ゆっくりと、確実に。

音もなく広がる、底冷えのする炎のように。

その視線の変化を、男は敏感に感じ取ったのだろう。

「うわっ……すごいプレッシャーだ。いやはや、依頼主からは“聖女様一行”としか聞いてなくてね。

まさか、こんな規格外の達人がいるなんて、完全に想定外さ」

男はわざとらしく両手を上げ、降参のポーズを取る。

「君と、あのゴーレムとの戦闘が遠目に見えてね。

あまりにも見事だったから――つい、血が騒いでしまったのも事実かな」

(……つい、でこの人は斬りかかって来たの……?)

呆れたようなエレナの声が、内側に零れる。

(……この男の技量なら、仮にエレナが避けきれなかったとしても、寸前で峰打ちに切り替えるか、太刀筋を逸らすことはできただろう。だが――それでも、“万が一”を考えれば、決して許容できる行為ではない)

エレンの声は、低く沈んだ。

「……それで?」

鋭い視線を突き刺す。

「依頼主の名は」

エレンの声は、自分でも分かるほどに低く、冷え切っていた。

「ベルノ王国の王立マギア研究所の“所長”さんらしいよ」

(えっ……!? 所長さんが!?)

エレナの驚愕が、意識の奥で弾ける。

(研究所の……所長だと――?)

エレンの脳裏に、あの掴みどころのない男の顔がよぎった。

穏やかな笑みの裏に、底知れぬ知性を潜ませた人物。

(何のために、我々の力量を測る必要があった?)

(禁足地に行くに値するかどうか……それを測った、とかかな?)

エレナの推測に、エレンは即答しなかった。

だが、その可能性は決して低くない。

「ただね、今の君たちがどれほどのものか、一度見てきてくれ――そう頼まれただけさ。僕も詳しい事情までは知らないんだ」

その言葉に、嘘の色は見受けられなかった。

エレンは静かに剣を鞘へと納める。

(……まずいかもしれんな)

密やかな思考が、重く沈む。

(あの所長に、エレナの姿が見当たらず、なぜか“私”が前線に立っていたと知られるのは……)

ベルノ王国の司祭だけが知る、二人の秘密。

もし、エレナとエレンが入れ替わる特異体質で魔獣と戦っているなどという事実が表に出れば――。

(あっ……!! 確かに……!!)

エレナも同時に、その危うさに思い至る。

(あの男の底知れぬ知性を考えれば、そこから私と君の“関係性”にまで勘付かれる可能性は十分にある)

(うーん……あの人、何を考えてるか全然読めないもんね。でも、エレン。ここは勝者の権利として――“今日のことは見なかったことにしてもらう”って持ちかけてみるのはどうかな?)

(……ふむ。一理ある)

エレナの提案は、冷静で的確だった。

試す価値はある――そうエレンは判断した。

「それにしてもさ」

不意に、男が口を開いた。

「他の三人はともかく――まさか、噂の聖女様が、こんな途轍もない“秘密”を抱えていたとはね。いやあ、正直、驚いたよ」

(……っ)

この男は――すでに、気づいている。

ならばなおさら、このまま無条件で帰すわけにはいかない。

「……おい」

「ん?」

「私が勝った。それについては、異論あるまい」

淡々と、だが拒絶を許さぬ声音で言い放つ。

「ならば、勝者として――こちらの要求を一つ、飲んでもらおうか」

言葉と同時に、エレンは再び闘気を練り上げた。

刃を持たぬ、純然たる威圧の圧。

無形の重さとなって、男へとのしかかる。

「……うぅ……っ。わ、わかった、わかったよ! 飲もうじゃないか、その要求とやらを!」

男は額に汗を滲ませ、観念したように両手を上げた。

「まず、私のこの姿――そして、今日の戦闘については、他言無用。一切を胸に納めてもらう」

「へえ? 聖女様がこれほど戦えるなんて、民にとっては希望の光だと思うけどね? 隠すことないじゃないか」

なおも軽口を叩く男に、エレンの眼光が鋭く走る。

「……黙れ。こちらにも、守秘すべき事情がある。それを詮索するな」

その強い声音に、男は肩をすくめ、苦笑を浮かべた。

「……はぁ。了解したよ。負けた以上、君の“秘密”については口外しない。傭兵としての信義に懸けて誓おう」

そう言って、男はふらりと歩み寄ってくる。

どこか飄々とした、流浪者の空気だけが残っていた。

「僕はジン。見ての通り――世界を気ままに渡り歩く、ただの傭兵さ」

そう名乗り、彼は右手を差し出してきた。

なんとも掴みどころのない男だ――

その認識だけは、エレナとエレンの間で、言葉を交わさずとも自然と一致していた。

警戒心を完全に解くことはないまま、エレンは差し出されたジンの手を、ほんの一瞬だけ握る。

そして、すぐに離した。

「久しぶりに血が滾ったよ。機会があれば、また手合わせ願いたいものだね。君のような相手とは、そうそう出会えるもんじゃない」

それだけを残し、ジンは軽く手を振る。

瓦礫の散らばる路地を、飄々とした足取りで去っていくその背中は、やがて夕暮れの光に溶け込むようにして、静かに遠ざかっていった。

(……本当に、大丈夫かな……?)

エレナの不安げな声が、意識の奥に小さく響く。

(どうだろうな。だが、あの男の瞳に嘘はなかったように思う。それに、傭兵の信義とやらを違えるような男にも見えなかった)

そう答えたのち、エレンはふっと思考を切り替える。

(……それよりも、エレナ。君の体を休ませなくては)

(うん。私は大丈夫だよ! エレンこそ、あんなに消耗して……。早く休まないと)

その言葉に、張り詰めていた意識が、ほんのわずかだけ緩む。

嵐のような訪問者は去った。

エレンはひとり、夕闇が忍び寄る静寂の中に立ち尽くし、これから先に待ち受けるものへと、静かに思考を巡らせるのだった。

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  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第115話:立ちはだかる二人

    ────エレナの視点──── 石造りの螺旋階段を、私たちは息を切らしながら駆け上がっていた。 ごつごつとした壁が、手に持つ灯りの光を不気味に反射している。下層から響いていた激しい戦闘音は、もう聞こえない。石段を踏みしめる足音と、荒い息遣いだけが、神殿の静寂を破っていた。 「グレンさん、大丈夫ですかね……!?」 ミストさんの不安そうな声が、静寂に包まれた階段に響いた。その声には、仲間への深い心配が込められている。 「……きっと、大丈夫!」 何の確証もない。けれど、私の胸の奥で、温かい光のようなものが「大丈夫だ」と囁いていた。それは昔から私の中に宿る、聖女としての直感のようなもの。 「私の直感が、そう告げてるの!」 「えぇ!? そ、そんな直感が……!?」 ミストさんが驚きの声を上げる。 (私も原理は分からんが……エレナには、その力が間違いなく備わっている。運命そのものを、その祈りの力で強引にねじ曲げてしまうような、不思議な力がな。だから、今回もきっと大丈夫だ) エレンの声が、私の内側で静かに響いた。 (うん……!) 彼の言葉が、私の直感を後押ししてくれる。 「それなら良いが……慢心はするなよ」 シイナさんが、冷静に釘を刺した。 「未来が見えるからと、それに胡坐をかいて行動するようでは、今の暗明の聖女と何も変わらないからな」 「……うん、そうだね。私は、この直感を絶対に正しいなんて、傲慢なことは思わないよ」 私にできるのは、この直感を信じつつ、でも決して過信しないこと。神様のお導きを感じながらも、自分の足で歩むこと。 「そこが、エレナさんの素敵なところですね」 シオンさんが、静かに微笑んだ。 その時、長く続いた階段が終わり、私たちの目の前に、だだっ広い広間が見えてきた。天井は高く、月光が差し込む窓から、青白い光が石床を照らしている。 「きっと、ここにも残りの騎士が待ち構えていることだろう」 「その時は、私が残ります」 シオンさんの言葉に、ミストさんが待ったをかける。 「いやいやいや! そこは私でしょうー!!」 「……?」 シオンさんが、心底不思議そうに首を傾げた。 「そのお顔はなんですかァァ!?」 「いえ……だってあなたは、戦いがあまり得意な方ではないでしょ

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第114話:行動開始

    **────エレナの視点────** 「じゃあ皆、各々準備してくれ。五分後にはここを出て、リディアさんを助けに行くぞ」 シイナさんの力強い言葉に、私たちは一斉に頷いた。この小さな家の中に、静かだが確固たる決意が満ちている。みんなの表情に迷いはない。先ほどまでの混乱が嘘のように、今は一つの目標に向かって心が結束していた。 五分という短い時間の中で、私たちはそれぞれの装備を確認し、心の準備を整える。月光が窓から差し込み、武器の金属部分を青白く照らしていた。この静寂が、嵐の前の静けさのように感じられてならない。 「準備はいいか? 今回、ジンが大方の騎士は無力化してくれたという話だ。恐らく…すぐに四騎士との戦闘になるだろう」 シイナさんの声に緊張が走る。四騎士——この国の最強戦力との戦いが待っているのだ。 「ここの騎士たちの数は多かったからね。でも、気を付けて」 ジンさんが軽やかに言葉を続ける。 「流石に全部を倒すわけにもいかなかったから、十人程度は残ってるはずだから」 「それでも、そんなに多くの騎士を戦闘不能にするなんて……」 私は驚きを隠せなかった。一人でそれほどの騎士を相手にするなんて、どれほどの実力者なのだろう。 「はは、聖女様に褒めてもらえるなんて。なんだか嬉しいよ」 ジンさんの表情に、子供のような無邪気さが浮かんでいる。しかし、その奥に潜む何かが、私の心に小さな不安を芽生えさせた。 「ね、念の為に聞くのですが……殺しはしてないですよね……?」 恐る恐る尋ねた私の質問に、ジンさんの表情がふっと変わった。まるで別人のような、冷たい光が瞳に宿る。 「……剣を抜いた以上、お互いの命が尽きるまで刀を振り合うべきだと僕は思っているんだ」 その一言に、背筋が凍りつくような恐怖を感じた。ジンさんの声音には、戦いへの狂気じみた情熱が込められている。私の心臓が、ドクドクと激しく鼓動を刻んでいた。 「でも……今回は大丈夫。殺してないよ」 そう言って見せる笑顔は、まるで何事もなかったかのように穏やかだった。しかし、その急激な変化が、かえって不気味さを増している。 (今回は……? ということは、普段は……?) 心の奥で、暗い想像が渦巻いていた。 * * * 五分後。静寂を破って、私たちは行動を開始した

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    **────ジンのの視点────** やる気か、と。僕は心の中で、小さく呟いた。 ここは冒険者ギルド。依頼と情報が交差する、いわば中立の聖域だ。そんな場所で騎士が刀を抜き、殺し合いを演じようというのだから、面白い。実に、面白い。 僕は向かってきた騎士の剣戟をいなすどころか、その勢いを逆に利用して体ごと弾き飛ばした。空中で無様に体勢を崩した彼の喉笛へ、僕は逆手に持ち替えた刃を、まるで吸い込まれるかのように滑らせる。「がぁっ……!」 声にならない呻きを漏らし、騎士が床に崩れ落ちた。口からごぼりと泡を吹き、痙攣する手足が、彼の命が尽きかけていることを示している。 仲間の一人が一瞬で無力化されたというのに、残された騎士たちは状況が飲み込めていないらしい。驚愕に見開かれた目が、滑稽なほどにこちらを向いていた。「き、貴様っ! 正気か!?」「あはは、面白いことを言うね、君。先にその物騒な鉄の獲物を抜いたのは、そっちじゃないか」「そ、それにしてもだ! 我々騎士に刃向かうなど、あってはならないことだぞ!?」「残念だけど、僕はそんな立派な冒険者様じゃない。僕はジン。世界を渡り歩く、ただの傭兵だからね」「ジン……!?」 その名に、騎士の一人が息を呑んだ。どうやら僕の名も、多少は裏の世界に知れ渡っているらしい。「くそっ……! やられて黙っていては、騎士の名が廃る! こいつも捕縛しろ!」 別の騎士が、その手に蒼い水の魔力を纏わせながら、僕へと突進してくる。ギルドの中で属性魔法を放つ? ああ、本当に、愚かだな。「はぁ……後悔しても、知らないよ」 僕は腰に差した愛刀「雪月花」の鯉口を切ると、一閃、抜き放った。 (鳴神式抜刀術――神威の型。) 空気を切り裂く音だけが響き、騎士の右腕が、ごとり、と鈍い音を立てて石床に転がった。「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!! お、俺の腕がァァァァッ!!」 やかましいね。腕の一本や二本、飛んだくらいで喚くなんて。自分から仕掛けておきながら、いざ返り討ちに遭えば獣のように吠え立てる。弱者の典型だ。「お、お前……! 自分が何をしたか、分かっているのか!?」「さっきも言ったはずだよ。先に始めたのは、そっちだってね」 僕は刀身に付いた血を振るい、ゆらり、と笑みを浮かべた。「まだまだ足りないな。……もっと、殺り合おうよ」 ああ、い

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第111話:届いた悲報

    (この声に気配……覚えがある)エレンの意識が、私の奥底で警戒の炎を燃やし始める。(私もそう感じてた……なんだか、すごく(身に覚えがあるような……)(確か、夜の街で我々を襲撃してきた傭兵……名は確かジン……と言ったか)その名前を耳にした瞬間、あの記憶が、鮮血のように鮮やかに脳裏へと蘇ってきた。霊たちが彷徨う夜の街で、昼間の平穏な探索が一変した瞬間。突如として現れた謎の傭兵——。その圧倒的な実力は私には理解の範疇を超えていたけれど、エレン曰く、これまで戦った敵の中でも別格の強さを誇っていた……と。(そ、その人がなんでこんな場所に!? まさか、私たちを追ってきたの!?)(さあな。だが……敵意は微塵も感じられない。それに何か重要な情報を知っているようだ)(ここは一か八か、直接対峙してみるのも選択肢の一つだろう)「エレンが敵意は感じないから……出てみるのも一つの手だって……」私はシイナさんに、内心の不安を隠しながらそう告げる。「敵意を感じない……か。グレンもミストも意識を取り戻したことだし、直接話してみるか?」シイナさんの声に、慎重な判断力が込められている。(ああ、そうしてみてくれ)「そうして見てほしいって……」エレンの助言をそう伝えると、シイナさんが深く頷き、警戒を込めて扉の前へと歩を進めた。「何用だ」シイナさんの声が、扉越しに響く。「あれ、やっぱりいるんじゃないですかー」その飄々とした口調に、底知れない余裕が滲んでいる。「やあ、僕はジン。リディアっていう方からの重要な伝言があるんだけど、扉を開けてもらえないかな?」「残念だが、こちらにも複雑な事情があってな。このままでお願いしたい」シイナさんの慎重な対応に、扉の向こうから軽やかな笑い声が響く。「……あーそっか、いまこの国から追われてるんだっけ。それなら心配しなくていいよ」「大体の騎士は僕が片付けたから」「な、何だと!?」シイナさんの声が、驚愕に震える。「えっ!??」私も思わず声を上げてしまった。「ま、待て! この国の騎士一人一人は精鋭と言っても過言ではないほどに優秀だ。それをお前は単身で制圧したというのか?」「はは。まぁ確かにこの国の騎士はよく鍛錬されていたね。でも、僕も実力には自信があるんだ」その軽やかな口調で語られる内容の恐ろしさに、私たちは言葉を失った

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第110話:二人の目覚め

    **────エレナの視点────**次の日。「みなさん!!!!本当にご迷惑をおかけしました!!!」「本当に面目ねぇ……!!!今回迷惑かけた分は、必ず挽回するぜ!」二人が目を覚ましたんだ。あんなに傷だらけで、ずっと目を覚まさなかったグレンさんも元気になって、本当に良かったと思う……。でも……。聞かないといけない。二人に、何があったのか。「それより……二人に何があったんですか?なんで……グレンさんはあんなに傷だらけだったんですか……?」私がそう尋ねると、グレンさんが急に口を噤んでしまう。数秒の重い沈黙が部屋を支配すると、やがて言いにくそうにグレンさんが口を開き始めた。「お前たちが情報収集に行った数時間後、とんでもなく強い奴が現れたんだ」「とんでもなく強い奴?」シイナさんの声に、緊張が走る。「ああ。全身に見たこともない鎧を着て、刀を使っていた」(見たこともない鎧に刀……か)エレンの声が、意識の奥で静かに響く。「そいつは……全く俺の攻撃が通じなかった」「なに!?グレン、お前の攻撃がか!?」シイナさんは心底驚いたような様子を見せる。グレンさんの実力を知っている彼だからこその驚きだった。(…………)エレンが沈黙している。何かを考えているみたいだ。「ああ、正直全く底が見えなかったぜ。戦ってる感触としては……エレンに近かったかもな」「エレンに……?」私の声が震える。エレンと同じくらい強いなんて……。「それは……かなり厄介そうですね」シオンさんの美しい顔に、珍しく深刻な表情が浮かんでいる。「厄介なんてもんじゃねぇよ。あいつは俺の攻撃を全部受け止めやがった」グレンさんは、私たちのパーティ内でも屈指の攻撃力を持つ

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