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エピローグ

Auteur: 佐薙真琴
last update Dernière mise à jour: 2025-12-13 17:52:49

 十年後の春。

 弥生は、自分の会社を経営していた。「光の花々」という名前の、フラワーデザイン会社。

 従業員は二十人。全国に支店がある。そして、海外からの依頼も来るようになっていた。

 オフィスの壁には、様々な賞状が飾られている。でも、弥生が一番大切にしているのは、最初の病院の子供たちが描いてくれた絵だった。

「社長、次のミーティングの準備ができました」

 スタッフが声をかけた。弥生は頷いた。

「ありがとう。すぐ行きます」

 弥生は鏡を見た。三十八歳の自分。目尻に小さな皺がある。でも、その目は輝いている。

 会議室に向かう途中、窓から外を見た。春の陽光が、街を照らしている。

 携帯電話が鳴った。蓮からだった。

『今夜、早く帰れそう?』

『はい。六時には終わります』

『じゃあ、一緒に夕食を。新しいレストランを見つけたんだ』

『楽しみにしています』

 弥生は微笑んだ。

 結婚して十年。蓮との生活は、毎日が新しい発見だった。喧嘩もする。意見が合わないこともある。でも、それを乗り越えるたびに、絆が深まる。

 会議が始まった。新しいプロジェクトの提案。若いスタッフたちが、熱心にアイデアを出し合っている。

 弥生は、彼らを見守りながら思った。

 かつて、自分も彼らのように不安だった。自信がなくて、失敗を恐れていた。

 でも、今は違う。

 失敗は怖くない。それは、成長の機会だから。

 自分を信じることができる。それは、蓮だけでなく、多くの人々の支えがあったから。

 そして何より――自分自身で、その価値を認めることができたから。

 会議が終わり、弥生は一人でオフィスに残った。窓から夕日が差し込んでいる。

 机の上には、一枚の写真。結婚式の日の、蓮との写真。二人とも、心から幸せそうに笑っている。

 弥生はその写真を手に取った。

「蓮さん、ありがとう」

 小さく囁いた。

「でも、もう大丈夫。私

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  • 「君は最初から輝いていたんだ」――セレブ社長の溺愛が、私を真実に変えてゆく   エピローグ

     十年後の春。 弥生は、自分の会社を経営していた。「光の花々」という名前の、フラワーデザイン会社。 従業員は二十人。全国に支店がある。そして、海外からの依頼も来るようになっていた。 オフィスの壁には、様々な賞状が飾られている。でも、弥生が一番大切にしているのは、最初の病院の子供たちが描いてくれた絵だった。「社長、次のミーティングの準備ができました」 スタッフが声をかけた。弥生は頷いた。「ありがとう。すぐ行きます」 弥生は鏡を見た。三十八歳の自分。目尻に小さな皺がある。でも、その目は輝いている。 会議室に向かう途中、窓から外を見た。春の陽光が、街を照らしている。 携帯電話が鳴った。蓮からだった。『今夜、早く帰れそう?』『はい。六時には終わります』『じゃあ、一緒に夕食を。新しいレストランを見つけたんだ』『楽しみにしています』 弥生は微笑んだ。 結婚して十年。蓮との生活は、毎日が新しい発見だった。喧嘩もする。意見が合わないこともある。でも、それを乗り越えるたびに、絆が深まる。 会議が始まった。新しいプロジェクトの提案。若いスタッフたちが、熱心にアイデアを出し合っている。 弥生は、彼らを見守りながら思った。 かつて、自分も彼らのように不安だった。自信がなくて、失敗を恐れていた。 でも、今は違う。 失敗は怖くない。それは、成長の機会だから。 自分を信じることができる。それは、蓮だけでなく、多くの人々の支えがあったから。 そして何より――自分自身で、その価値を認めることができたから。 会議が終わり、弥生は一人でオフィスに残った。窓から夕日が差し込んでいる。 机の上には、一枚の写真。結婚式の日の、蓮との写真。二人とも、心から幸せそうに笑っている。 弥生はその写真を手に取った。「蓮さん、ありがとう」 小さく囁いた。「でも、もう大丈夫。私

  • 「君は最初から輝いていたんだ」――セレブ社長の溺愛が、私を真実に変えてゆく   第7章:新しい朝

     東京に戻った弥生は、新たな気持ちで仕事に向き合った。大手企業の装飾プロジェクトのデザインを、もう一度見直した。「これで行こう」 弥生は自分のデザインを信じることにした。完璧ではないかもしれない。でも、これが今の自分の最高の表現だ。 プレゼンテーションの日、弥生は緊張していたが、逃げなかった。「四季をテーマにした装飾を提案します」 弥生は資料を開いた。「春は桜とチューリップで再生と希望を。夏はヒマワリとラベンダーで活力と落ち着きを。秋はコスモスと紅葉で調和を。冬は白い薔薇と松で清浄と永続を表現します」 クライアントの担当者たちが、じっと資料を見ている。弥生の心臓が激しく打つ。「それぞれの季節に、花言葉の意味を込めました。このビルで働く人々、そしてここを訪れる全ての人に、花が持つメッセージを届けたいと思います」 沈黙が流れた。長い、長い沈黙。「素晴らしい」 担当者の一人が言った。「この企画、採用させていただきます」 弥生は信じられなかった。本当に?「特に、花言葉を取り入れたコンセプトが良いですね。単なる装飾ではなく、意味のある空間を作る。これは、我々が求めていたものです」 会議室を出ると、蓮が廊下で待っていた。「どうでしたか?」「採用されました……」 弥生は震える声で言った。「本当に、採用されたんです!」「おめでとうございます」 蓮は弥生を抱きしめた。「あなたは、やり遂げました」 弥生の目から涙が溢れた。でも、それは悲しみの涙ではなかった。喜びの涙。達成感の涙。 そして、初めて自分を認められた涙だった。 それから三ヶ月。プロジェクトは順調に進んだ。弥生は、フラワーアレンジメントの専門家たちと協力して、ビルのエントランスに四季の装飾を完成させた。 完成記念のセレモニーの日、多くの人々が集まった。報道関

  • 「君は最初から輝いていたんだ」――セレブ社長の溺愛が、私を真実に変えてゆく   第6章:勇気の扉

     週末、弥生と蓮は新幹線で弥生の実家がある信州へ向かった。車窓から見える景色が、都会から田園へと変わっていく。「久しぶりですか? 実家に帰るの」「はい。三年ぶりです……」 弥生は答えた。両親とは仲が悪いわけではない。ただ、自分の失敗した姿を見せたくなくて、距離を置いていた。「ご両親、驚くでしょうね」「はい……連絡はしましたが、蓮さんのことは詳しく話していないので……」 駅に着くと、母親が迎えに来ていた。五十代後半の、優しそうな女性。弥生の面影がある。「弥生、久しぶりね」「お母さん……」 母親は蓮を見て、少し驚いた表情を見せた。「こちらは……?」「神宮寺蓮と申します。弥生さんの会社の者です」 蓮は丁寧に頭を下げた。「まあ、わざわざ……」 母親は戸惑いながらも、二人を車に乗せた。 実家は、山に囲まれた小さな一軒家だった。庭には、色とりどりの花が咲いている。「お母さん、庭の花、綺麗ですね」「ああ、これはね。あなたのおばあちゃんが植えたものよ。毎年咲くの」 弥生は庭を見渡した。スイートピー、パンジー、マリーゴールド。祖母が好きだった花ばかり。「すばらしい庭ですね」 蓮も庭を見ていた。「この花の配置、とても計算されています。色のバランス、高さの変化、季節の移り変わりを考慮している」「まあ、よくわかりましたね」 母親は感心した。「おばあちゃんは本当に花が好きで。弥生も、小さい頃からずっと手伝っていたのよ」 家の中に入ると、仏壇があった。祖母の写真が飾られている。笑顔の、優しい顔。 弥生は仏壇の前に座り、手を合わせた。蓮も隣で手を合わせた。「おばあちゃん……

  • 「君は最初から輝いていたんだ」――セレブ社長の溺愛が、私を真実に変えてゆく   第5章:嵐の前

     パーティーから一週間、弥生は蓮からの連絡にうまく返事ができなくなっていた。会社には行く。仕事はする。でも、蓮と顔を合わせるのが怖かった。「橘さん、少し話せますか?」 金曜日の夕方、蓮がオフィスにやってきた。弥生は逃げられないと悟った。「はい……」 二人は会議室に入った。夕日が窓から差し込んでいる。「あの日から、避けていますね」 蓮は単刀直入に言った。「そんなことは……」「嘘をつかないでください。あなたの目を見ればわかります」 弥生は俯いた。「堀江さんの言葉を、まだ気にしているんですか?」「……はい」 正直に答えた。もう、嘘はつけない。「彼女の言うことが、正しいような気がするんです」「どういう意味ですか?」「私は、蓮さんには相応しくない。違う世界の人間です。いつか、蓮さんの足を引っ張ってしまう」 蓮は深く息を吐いた。「橘さん、質問してもいいですか?」「はい……」「あなたは、自分に価値がないと本当に思っていますか?」 弥生は答えられなかった。「僕が見ている橘弥生は、花を愛し、人を思いやり、真摯に仕事に向き合う女性です。でも、あなた自身は、そんな自分が見えていない」 蓮は弥生の手を取った。「それが、一番もどかしい」「蓮さん……」「時間が必要なら、いくらでも待ちます。でも、一つだけ約束してください」「何ですか……?」「自分を否定しないでください。少なくとも、僕の前では」 弥生は涙が溢れるのを堪えた。 その夜、弥生は一人で考え込んだ。蓮の言葉。堀江の言葉。どちらを信じればいいのか。 翌週、プロジェクトに大きな動きがあった。大手企業か

  • 「君は最初から輝いていたんだ」――セレブ社長の溺愛が、私を真実に変えてゆく   第4章:光の中の影

     プロジェクトが軌道に乗り始めた頃、蓮は弥生を自分の主催するパーティーに誘った。「今度は、ゲストとしてです」 蓮は微笑んだ。「あなたにドレスを着てほしい」 弥生は戸惑った。ドレス? そんな高価なもの、持っていない。「選びに行きましょう。一緒に」 週末、蓮は弥生を銀座のブティックに連れて行った。店内には、煌びやかなドレスが並んでいる。値札を見て、弥生は目を疑った。一着で、自分の月給の数倍する。「これなんか、どうですか?」 店員が薄いブルーのドレスを持ってきた。シンプルだが、上品なデザイン。「試着してみてください」 蓮に促され、弥生は試着室に入った。 ドレスを身につけて鏡を見た瞬間、弥生は息を呑んだ。そこに映っているのは、自分? ブルーの生地が肌に柔らかく添い、体のラインを美しく見せている。髪をアップにすると、首筋が見える。「橘さん、見せてください」 蓮の声に、弥生は恐る恐るカーテンを開けた。 蓮は、数秒間黙って弥生を見つめた。「……美しい」 彼の声は、いつもより低かった。「本当に、美しいです」 弥生は顔が熱くなるのを感じた。「で、でも、高すぎます。こんなの、私には……」「プレゼントさせてください」「だめです! そんな高価なもの……」「では、プロジェクトの制服ということで」 蓮は笑った。「これから色々なイベントに出る機会があります。その時に着てください」 弥生は迷ったが、結局受け入れた。蓮の真剣な眼差しを、断ることができなかった。 パーティーの日。弥生は美容院で髪をセットしてもらい、メイクもプロに任せた。全てが初めての体験だった。 会場に到着すると、そこは前回のパーティーとは比べものにならないくらい豪華だった。シャンデリアの光、生

  • 「君は最初から輝いていたんだ」――セレブ社長の溺愛が、私を真実に変えてゆく   第3章:溶けゆく氷

     それから二週間、蓮からの連絡は途絶えなかった。毎日ではないが、二、三日に一度、彼から短いメッセージが届いた。『今日は良い天気ですね。花日和です』 『面白い本を見つけました。今度貸しますね』 『週末、時間がありますか?』 弥生は最初、どう返信していいかわからなかった。でも、次第に自然に返せるようになっていった。 ある土曜日、蓮は弥生を都内の植物園に誘った。「ここの温室は、世界中の珍しい植物が見られるんです」 蓮は楽しそうに説明した。弥生は彼のその様子が意外で、少し微笑ましかった。ビジネスの世界で生きる冷静な経営者が、植物を前にすると少年のように目を輝かせる。 温室の中は、外の春とは違う、熱帯の空気が満ちていた。色とりどりの蘭、巨大な葉を持つモンステラ、天井近くまで伸びるヤシの木。「これ、見てください」 蓮が指差したのは、深紅の花を咲かせた植物だった。「アンスリウム。花言葉は『煩悩』『恋にもだえる心』」 弥生は驚いて蓮を見た。「花言葉、知ってるんですか?」「少しだけ。母から教わりました」 蓮は花に近づいた。「でも、橘さんほど詳しくはありません。いつか、もっと教えてほしい」 弥生は頬が熱くなるのを感じた。 温室を出ると、外の庭園を散策した。桜は既に散り、新緑の季節が始まっていた。「あ、あそこ」 弥生が指差したのは、青い小さな花が群生している場所だった。「ネモフィラです。花言葉は『どこでも成功』『可憐』」 弥生は花の前に膝をついた。「この花、好きなんです。小さくて、でも一生懸命咲いてる」 蓮は弥生の隣にしゃがんだ。「あなたに似ていますね」「え……?」「小さく見えるけど、一生懸命で、そして美しい」 弥生は蓮を見た。彼の目は真剣だった。「蓮さん……」「考えてくれましたか? 僕

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