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正直に言えば、これまでの人生で、未来の自分の時間について考えることに膨大な時間を費やしてきた。
どのくらいかと言えば、二十五年という人生の中で、少年時代も青春時代も十歳のところで止まったままになっているほどだ。
もうすぐ三十路に差し掛かろうとしているのに、将来について迷っている若者たちのプレッシャーを、一部の親御さんたちよりもずっとよく理解できる。
まあ、似たようなことを経験してきたからだろう。
大人である自分たちの考えが間違っていると言いたいわけじゃない。自分たちの世代には自分たちの世代の考え方があるし、新しい世代には新しい世代の考え方がある。
俺はどちらの味方もしないタイプだ。ただ、選べるなら勝ち組の側につく。
青山アキトという人間がどんな人間かと聞かれても、うまく答えられない。しかし、
俺は自分がどんな人間で、どんな考えを持っているか、知っている。
そして、周りの人間にどうやって嘘をつくかも。
002「今日はなんでそんなしょんぼりしてんの」
体に悪いアルコールを注いでいるバーテンダーがそう言った。
今の俺は六本木のあるバーのカウンターで、犬みたいにぼんやり座り込んでいる。
次々と数を減らしていく歓楽街の中で、今俺が利用しているミッドナイト・ポリゴンは、日本の経済状況に真っ向から逆らうかのように開店してまだ数ヶ月しか経っていない店だ。しかし店内の雰囲気とここの飲み物は客を惹きつける魅力に溢れており、俺のように決まったものが好きな人間も例外ではない。
社会人になって二年が過ぎた俺にとって、仕事のストレスとプレッシャーは少しずつ積み重なっていき、気づけばいつも酒で終わっていた。
知り合いの中で、ほとんどの友人はとっくに出世している。大企業の役員になった奴もいれば、お坊っちゃん学校の校長になった奴もいるし、海外で働いている奴もいる。いつまでもパッとしない会社員でいるのは俺くらいだ。
変わりたいと思ったことは何度もある。しかしそのたびに、「お前には無理だ」という現実に顔面を叩かれてきた。
諦めているわけじゃない。ただ、こうのんびりだらだらした生き方も悪くないかと思うことがある。朝起きて、飯を食って、タクシーで会社に行って、夕方に帰る。たまに会社で寝ることもある。毎日そんな繰り返しだ。
そのうち俺も少しずつ大人になっていった。そして、一日中コンピューターにデータを打ち込みながら会議ばかりこなして、月給たった十万円しかもらえないことが、おじさんおばさんの言う「明るい未来のある良い生活」とはほど遠いものだと骨身に沁みてわかった。しかも、まったく楽しくない。
十万円が多く聞こえる人もいるかもしれないが、必要以上の規則で縛りつけてくる会社に軽いノイローゼになるほど追い詰められながらこなす仕事としては、正直もう限界だ。続けたい奴だけ続ければいい。俺はもうごめんだ。
しかし実際のところ、退職の手続きはできないままでいる。それは妹のせいだ。今ちょうど高校三年生として勉強に打ち込んでいる妹のことを思うと、踏み切れない。
俺より八歳年下のその妹は、深冬という名前だ。物静かで、あまり人と話さない。たいていは大事なことだけを口にする。
もう一つ気がかりなのも、やはり家族のことだ。俺と妹は二人暮らしで、俺が働いて妹の学費を一円残らず出している。しかし妹が中学に上がってから、性格がまるで別人のように変わってしまった。
かつての明るくて活発な子が、引きこもりがちで人と話さない子になってしまった。おまけに、俺たちが本当の兄妹かどうかさえわかっていない。
そう、十年来の付き合いでありながら、お互いが本当の兄妹かどうかを知らないのだ。俺が十六歳、妹が八歳のとき、おそらく母親であろう女性が、かわいらしい顔をした女の子を連れてきた。ちょうどおじさんとおばさんを亡くしたばかりだった俺に、その子を紹介したのだ。
そのとき彼女は妹にこう言った。「この人がいつも話してた、あなたのお兄ちゃんよ」。そして俺に荷物を預けて、「ちょっと仕事に行ってくるから、この子を一日だけ預かっててね」と言い残して出ていった。
あの「一日」は、もう十年が過ぎた。彼女が娘か息子(?)のところへ戻ってくる気配は、今もまったくない。当時まだただの子供だった俺は、その妹を引き取って育て、今では立派な若い女性になっている。
大人になってからやっとわかった。なぜあのとき母親が妹を俺に預けにきたのか。おじさんとおばさんが亡くなった後、子供のいなかった二人の遺産はすべて俺のものになっていた。家も、保険金も、土地も。そして青山の血筋の者たちはお互いに関わり合わないという取り決めがあったため、孫にあたる俺がその遺産を受け取ることになったのだ。
ただ、これはあくまで俺の推測に過ぎない。鵜呑みにしすぎないでほしい。現実はそこまで残酷じゃないかもしれないから。
「今日はクビになったんだよ。最悪」
俺は冴えない顔でそう言った。相手は店主でもあり俺の友人でもあるバーテンダー、康彦だ。同い年の友人の中では、俺を除けば社会的地位が一番低い部類に入る奴だ。もっとも「低い」といっても、商業地区で酒場を開いて一日の売り上げが五十万近くにはなるだろうが。
「次の仕事はどうするの」
相手はまるで俺の話を聞きたくないかのように淡々と聞いてきた。
「わかんない。こんなクビのされ方じゃ履歴書も使えないし」
日本でクビになるのは非常に恥ずかしいことだ。経歴に傷がつけば、家でゴロゴロするしかなくなる。
「フリーランスの仕事なら、お前にだってできるじゃないか。前に更屋敷のお嬢さんのところで働いてたじゃないか?」
「双葉のお嬢さんに頼り続けるのは嫌なんだよ。自分で何かやってみたい」
俺は人付き合いが広くて、気軽にどこにでも溶け込めるタイプだ。ある日、お坊っちゃん・お嬢さん学校に通っていた中学時代に、一人のお嬢さんと知り合った。更屋敷双葉という名前で、きちんとした雰囲気の愛らしい少女だった。彼女にとって、見返りを求めず自然に近づいてきた普通の人間としての初めての友人は、間違いなく俺だと断言できる。
仲が深まるにつれて、彼女はしょっちゅう俺に手伝いを頼むようになった。そのたびにいつも報酬をくれた。最初は何度もそれは友情とは違うと伝えたが、最終的には仕事と割り切って素直にお金を受け取るようにした。
「自分で何かって、あのパッとしない会社員のことか。たいしたもんだな」
康彦が皮肉っぽく言った。
「お前、バーテンダーになれたのになんでそんな口が悪いんだ」
「だってお前が、丁寧な言葉使われると鳥肌立つって言ったんじゃないか」
……それは確かに言った。
「それより、仕事を紹介してくれたりしないか?」
「何、俺の手下になりたいの?」
「それで食っていけるならいいぞ」
康彦はわずかに驚いた顔をしてから言った。
「お前みたいなレベルの人間が、こんな雇われ仕事に就くべきじゃないと思うけど」
俺が口を開く間もなく、相手は続けた。
「お前はさ……才能もあるし、人付き合いもうまいし、賢いし、物わかりも早いし……」
「ちょっと待て、何の話……」
「だから……みじめな顔すんなよ。本当のことを聞くけどさ、毎日腰を曲げて背中を固めて仕事するのが良いと思ってるの? お前、昔、VTuberの会社の社長になるって言ってなかったっけ?」
「よく中学のときの夢みたいなこと、まだ覚えてるな」
044「イーモくんじゃない……どうして……」 レンタル彼女の仕事をしている少女……シャーロット・宮島……彼女は自分の常連客になった少年の背中を見つめていた……「なんでカバンを二つも持ってるの……」 彼女はさっさと彼の元へ歩み寄り……その手を掴んだ……「あっ……」 今日の彼女はいつもと違う格好をしていた……普段ユウタは服装のリクエストをしたことがなかったので、彼女はいつもお嬢様学校の制服を着ていた…… でも今日の客はお嬢様風の衣装をリクエストしていたので、彼女はフル装備で来ていた 彼女は青白のロングスカートを着ていた……全身にリボンがびっしり付いていて……青い長袖の上着を羽織っていて……白とピンクの大きめのスニーカーを履いていた……「……ミヤ……ジマ……」「なんか様子がおかしかったから声かけたのよ……」 彼女は相変わらずストレートな物言いだった……「そうか……あの……今日は大事な用事があってさ……オフィスに行くところなんだ……」「……………様子悪そうだけど……大丈夫なの?……」 彼女の表情は少し心配そうだった……「あっ!大丈夫だって!大丈夫……あの……今日の君は……いつもと違って見えるね……はは」 彼は誤魔化すように笑った……でも彼が嘘をつくのが下手すぎることは周知の事実だった……「あんたさ……嘘つくならもう少し上手くつきなさいよ……」 彼女は彼の顔を指さしながら小言を言った……「……………全部話すよ……」 雨が弱まってきた……二人はコンビニの前にあるベンチに座って弁当を食べることにした……「家出したの!?……」「うん……」 ユウタはシャーロットに全部話した……「それで……どこに住むつもりなの?友達の家に泊まるとか……」「とりあえず先輩のコンドミニアムに一時的に泊めてもらうつもりで……その間に安い賃貸を探そうと思ってる……」「それで生活費とかは?あんたまだ学生でしょ……学費とかちゃんと払えるの?」 シャーロットはユウタが彼女の曽祖父が設立した学校に通っていることを知っていた……だからその学校の学費がどれだけ高いかも当然知っていた…… しかもユウタは実の母親とも縁を切ろうとしている「大丈夫だよ……アキトさんのところで働いてるから……給料すごくいいんだ……生活費くらいならなんとかなると思う……学費は……バイトを
043「ただいま……」 今日、瑠璃の頼まれた部品作りの件でマンションから帰ってきた後……ユウタは家の前に何十個ものゴミ袋が積まれているのに気づいた。今日はゴミの日でもないのに、おかしいなと思った……「母さん……今日ゴミの日じゃないよね……」「ああ、あれね。無駄なものだから置いてあるだけよ……」 なんか変だな……「帰ったの?」「兄さん!?今日仕事休みなの?」 知っての通り……ユウタには病院で医者として働く兄がいる……「今日は休みだよ……日曜日じゃないか、忘れたのか?」「あ……ごめん、忘れてた……」 長期休みに入るといつも曜日を忘れてしまう……でも平日はちゃんと覚えているのに…… ユウタは部屋のドアを開けて入った……そしてそれが、この家で普通の表情を保てる最後の瞬間だった……「いや……いやいやいやいや、これは何だ……」 普段部屋はそんなに散らかってはいない……でも最近は瑠璃に頼まれた部品を作るために散らかっていたのだが……「待てよ……工具と電子回路基板がなくなってる……」 彼は急いで引き出しを開け閉めしたが見つからない……部屋中探しても見つからなかった……「何なんだ……どこに行ったんだ……」 彼はベッドの上で頭を抱えて座った……考えながら……「ん?……」 そして彼は何かに気づいた……その時、ユウタはちょうど本棚に目をやった……「待てよ……あそこはワールドトリガーとHUNTER×HUNTERの棚だったはず……」 両方の漫画の背表紙の色は黒と白のはずなのに、ユウタが見た背表紙は何色もあって……しかも厚みも増していた……「何でこんなことに……」 彼はすぐにその棚から本を引っ張り出した……「専門医学書、医療の裏マニュアル、一冊でわかる医者への道……どういうことだ……どういうことだよ……」 ユウタは事情をだいたい理解した……犯人が誰かは確信できたが……それでも信じたくなかった……「俺たちのノートパソコンも……なくなってる……」 すべての……見慣れたものが……消えていた…… ユウタはすぐに階下へ降りた……そして母のもとへまっすぐ向かった……「母さん……」「何よ……」「俺の私物どこ行ったの……」 しかしユウタの母は何も答えなかった。彼女はそのまま料理を続けていた……「俺の私物どこ行ったのか聞いてるんだけど!!!」
042「ふん!!!」「あぐっ!!!!」「はい!……勝者は……今回もユリカさんです……」 黒髪に白いメッシュのポニーテールをした少女が、道場内の生徒を一瞬で投げ飛ばした……そしてそれで彼女は12人目の相手にも勝利した。「すごい……榎本先輩って……本当に電光石火の速さだよね……」「そうだよね……国代表にもなったことあるらしいよ……確か5年前にテコンドーで金メダルも取ったんだって……本当は合気道が得意なのに」「不思議じゃないよ……だって武術一家の榎本家の娘さんだもん……青山や中野と同じくらい古い武士の家系らしいよ……古墳時代からあるらしいし……」「え……それは盛りすぎでしょ……」 この頃私は……いつも同じ夢を見る……「先輩!!……あの……その……お、水です……」「……………」 私は頷いて返事をして、水を受け取って飲んだ……「あっ……」 この子はきっと新入りなんだろう……「あ……そっか、新入りだから知らないよね……先輩は話せないの……」「あっ!!すみません!!!先輩がそうだって知らなくて……」 私は微笑みながらその子の手を取って、自分を指さしてから、彼女を指さした……それから手を握り合った……「……………」「彼女は言った……『これから友達だね』って……」「はい!よろしくお願いします!!」 私はその子の頭を撫でてから、道場のホールを出た……「きゃー!!榎本先輩!!」「相変わらずかっこいい……」「昨日もかっこよかったし、今日もかっこいい……」「明日もきっとかっこいいよね……」『『だよね!!!』』 毎日いつも……私がどれだけかっこいいか褒めてくれる人がいる……「先輩!!」「……?」「写真撮ってもいいですか?……」「………」 私は頷いた……女の子たちが私の周りに群がってきた……「ユリカ……」 背が高くて筋肉質な男の人が私を呼んでいる……「……………?」「ちょっと話がある……」 そう……この人は私の父だ……「父さん……何度も……言ったけど……でも……お前……まだ……継ぐ……つもりが……ない……のか……うちの……家業を……本当に?……」 またか……正直に言って……私は家業を継ぐつもりなんて全くない……「………」 私はすぐに首を振った……「でも……お前は……一人娘……なんだぞ……この家の……」「私……なり
041『主役ですよ……いや、マジで主役なんですよ……』『それで?』『だからあなたが主役なんだから……CMがどんなに短くても演技の学校に行かないといけない……』『先輩、このプロジェクトから俺を外せませんか!? 俺はアキさんですよ、なんでこんなことしないといけないんですか……』『演技を舐めるなよ……』『舐めてないです!ただやりたくないだけで……』『でもクライアントがあなたを指名したんだよ』『あなたはすごくいいエキストラだったんだから……』『誰でもいいじゃないですか!! SNSに投稿して、俺の顔に似た人を探してますって書けば……ギャラ一万円でも来ますよ!五千円でも来ますよ!信じてください……』『あなたじゃないとダメなんだよ……クライアントがあなたをすごく気に入ってるんだ……定時上がり名人……』『考えてみなよ……あなたが主役なんだぞ……ヒロインと共演することになるんだ、しかも有名女優だぞ!!見てみろよ!! 柊ゆきなだぞ!!』『先輩の会社じゃないですか……』『でも今日から……アキさんには個室を用意しないといけないな……』『ちょっと!俺がいつからアキさんになったんですか……』『まあ……アキさんはもう契約したんですから……あなたは今やアーティストですよ……』『そんなに長くアキさんって呼ばれてたのに、今になってこんな呼ばれ方するとは……』『じゃあ……秘書を呼んできますね……あ!カワイさん……』『はいっ、あ……アキさん……わあ……柊さんと共演するんですね……』『そうです……しかも二シーンも並んで……』『じゃあスケジュール確認しますね……』「俺のスケジュール、何が入ってんだろ……」『あの……ここに演技の学校に行くって書いてあります……』『俺のギャラはいくらですか……』『500円』『先輩、俺を行かせるつもりですか……』『演技の学校に……』[wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww][誰でもいいじゃん!!! wwwwwwwwwwwwwwwwwwww][マーガレットさん、3万円ドネート 500円かよ wwwwwwwwwwwwwwwwwwww][安すぎる wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww][スターレベルで500円って、普通に悲しすぎる][クロロ・ルシルフルさん、11,111円ドネー
040「よーみんな……」[こんにちはです、師匠!!!][来たーーーーっ!!!!][やほーーーー!!!!][ついにきたーーーーっ][有名人登場ーーーっ][今やすごく有名になったよねえ……][ははっ][wwwwwwwwww]「まあ……ずっと話してる通りさ、俺って人脈が広くて、作家業界から芸能界までいろいろ知り合いがいるじゃないですか……」「でね……俺が関わってる広告代理店の仕事があって……そこから出演の話が来たんだよ。ある広告のメインで……」[ああ……あのスマホゲームのCMのやつ?][ツイッターで見たことある……][そうそう、YouTubeの広告でも見たよ][見たことある][なるほどねえ……]「俺はね、脚本を手伝ったり、プロット考えたり、撮影どうするか、演技どうするかとか……その日は普通に打ち合わせしてたんだよ。そしたら……クライアント側の人がいきなり俺を指差して、この役はあなたにぴったりだ、あなたみたいな人がいい、顔もいい……って言い出して」「俺は……えっと、スタッフ側なんですけど……裏方です……って答えたんだよ」『あなたって……この役にすごく合ってるんですよね……』『えっと……私を使うんですか?』『使います……エキストラとして』[これだよ!! スター力……][よっぽど気に入られたんだね][アベンタドールさん、100円ドネート wwwwwwwwwwww]『いや……私は裏方なので……ちょっと難しいかなと……』『あなたが出るべきですよ……顔がすごく合ってる』「それでカメラテストをすることになったんだけど……面白いのがさ、自分が所属してる会社でカメラテストをすることになって……俺が所属してる代理店のトップって、長年の知り合いの先輩でさ……広告とかスポンサー関係もその人がずっと助けてくれてて……」「YouTubeやる前から、その会社の裏方の仕事を手伝い続けてたんだよね……そんな俺がカメラの前に出ることになるなんて……」[おお……社長に感謝しないとですね……][仲いいんでしょうね……][俺もこの業界で働きたいなあ……そういう人に出会ってみたい……][まあ……師匠、顔は悪くないですからね……][笑えるwww]「プロットはね……仕事で疲れ果てた男のところに、クライアントが直接打ち合わせに来るっていう感じで……」
039「ここが……ユリカちゃんの武道場ってやつか……」 せっかくの休日だし、いろんなところに遊びに行こうと子どもたちは言っていたが……三十路が近い俺たちにはそこまで気力はなかった……それはそうと、あまり運動していない俺は最近腰が痛くなってきていて、もうほんとにめちゃくちゃ痛いんだが……「榎本武道場……ネットで見たことはあったけど、まさか江戸時代から続いてるとは知らなかったな……」 ユリカちゃんが俺たちを出迎えてくれた「ようこそいらっしゃいました!皆さんはお客様です……どうぞくつろいでいってください……」 彼女は厚紙のボードを持って見せてきた…… そしてしばらく俺たちを眺めてから、またボードに書いた「他の皆さんは?」 今日来たのは少人数で……俺とルリちゃん、それからサちゃんだけだった「今日は……ハルくんが……家の手伝いが……あって……マユリちゃんと……アキラちゃんは……衣装の生地を……買いに行って……ユウタくんは……家で……勉強しないといけないって……」「ふむ……」 二人が話す時はだいたい手話でやり取りしていた…… サちゃんが挨拶しに行った。右手を握って下に向け、少し頭を下げる……基本的な手話で「こんにちは」を表していた「あ!」 ユリカちゃんはサちゃんに会うたびに、必ず抱きついていた……サちゃんは自分の妹みたいだと言っていた ユリカちゃんは一人っ子で、妹がずっと欲しかったんだそうだ…… この二人、ほんとに微笑ましいな 俺も普通に挨拶した……最近は彼女と話せるよう手話を覚えようとしているのだが、彼女はいつも、自分のために苦労して覚えなくていいと言う……もちろん俺とサちゃんはそんなこと気にしないのだが「今日は……武道というものを……ちょっと体験してみたくて……ね……」「おお!」 彼女は俺たち三人の手を引いて、道場の中へ連れて行ってくれた 中は時代劇で見るような昔ながらの道場で……よく手入れされた木造の空間が広がっていた……中には小学生、ほとんどが女の子たちが大勢稽古に来ていた……「外部の先生も雇ってるんだな……」 そりゃそうだろ……榎本家でまともに指導できるのは、ユリカちゃんとお父さんだけだし…… 俺たちは道場の中へ進んだ……木製の人形がたくさん並んでいる部屋に案内された……生徒も大勢いた……「わあ……雰囲気、完全に







