LOGIN親友が大富豪になって自分を養ってくれる。そんな夢を毎日見ていた。 ところが、彼女が株で本当に4000万円もの大金を稼ぎ出した。 欲望の渦巻く歓楽街。その中心にあるクラブで、彼女は湯水のように金を使い、極上のホストたちを横一列にはべらせてみせた。 カーテンが開くと、入ってきた男たちは誰もが息を呑むような美男子ばかり。 柳原瑞希(やなぎわら みずき)は興奮して私の腰をつついた。「どう、最高にイケてるでしょう?」 望月拓海(もちづき たくみ)の平然とした視線が私に止まった。その冷たさに、私は体が震える。 最高に決まっている。 だって、彼は私、浅井琴音(あさい ことね)の彼氏なのだから。
View More瑞希は私の背中を優しく叩いた。「拓海はあなたに自分のことを忘れてほしかったのよ。私も、あなたに『ごめんなさい』と言わなきゃいけないわね」私は瑞希を強く抱きしめ、唇を噛み締めた。成長すると決めたのなら、脆いところを見せてはいけない。そういうことだったのね。でも拓海、どうして私に「それでいいか」って聞いてくれなかったの?どうして勝手に決めてしまったの。私は、あなたの愛に気づけないほど愚かだった。「これだけ追いかけているのに、僕が君のことを好きだって気づかないのかい?」アルバイト帰りの私を彼が引き止める。私は困ったように彼を見た。「本当に分からないわ」彼はにっこりと笑って説明した。「実はさ、あのお店、まかないなんて出ないんだ。毎日、僕がせっせと君のために買いに走ってたんだよ」「全部あなたが?バカね、そんなの言われなきゃ気づくわけないじゃない」街灯の下で、彼の瞳はキラキラと輝いていた。彼は言った。「いつか絶対に気づくよ。白状するのは今回だけ。これからは自分で僕の良さを見つけてね」けれど、私は見つけられなかった。あなたは、私を責めているかしら。「彼はどこに眠っているの?」瑞希に連れられて、市郊外の墓園に向かった。とても静かな一角。新しく立てられた墓石には、ただ簡素な名前と生没年月日が刻まれていた。写真は、どこか真面目くさった顔をしていた。甘えん坊だった拓海とは、全然似ていない。生きていくのは辛いことばかりだけど、せめてあの世では、あなたには笑顔でいてほしいの。私は白い百合の花束を抱え、そっと墓前に供えた。春の風が吹き抜け、青草と土の柔らかな香りを運んでくる。穏やかな陽光が、私の全身を優しく包み込んでいた。私はしゃがみ込み、写真の顔を見つめた。「拓海。あなたを見つけたわ」言葉が詰まり、喉が激しく震える。「でも拓海。また、あなたを失ってしまった」私は連れてきた花を彼に見せた。「私、花を育て始めたの。あなたはいつも『すぐ枯らす』なんてバカにしてたけど、見て、ちゃんと育てられたわよ。私を騙した代償は大きいのよ。少なくとも二年間は、もう会いに来ないから」私はすでに二年の旅行計画を立てている。しばらくはこの街に戻るつもりはない。一度決めたことを変えるつも
けれど、どうして危篤なんて書かれているの?私はその診断書を握りしめ、目玉が飛び出しそうになるほどそれを見つめた。拓海。彼は、死にかけていた。そこへ瑞希が戻ってきて、私がそれを見ていることに気づくと、深いため息をついた。「やっぱりあなたたちの縁は切れないのね」私は抑えきれず彼女に向かって叫んだ。「拓海に何があったの?」「彼は亡くなったわ」瑞希の声はとても静かだったが、それでも私の耳にははっきりと届いた。私は凍りついたように動けなくなり、血の巡りが止まったような感覚に陥った。どれほど彼を恨んでも、落ちぶれて惨めな思いをすればいいと願う程度だった。本当に死んでほしいなんて願ったことは一度もなかった。私はかつての彼との日々を思い出した。大学を卒業して間もない頃、私たち二人とも一文無しだった。私がアルバイトで稼いだお金さえ、母親に脅し取られていた。拓海は就職先を探しながら、フードデリバリーの配達員として働き、私の生活を支えてくれた。私は彼のモーターバイクの後ろに座り、気軽に冗談を言っていた。「まさかずっとこのモーターバイクの後ろに乗せるつもりじゃないでしょうね?私たちは、本当に貧乏ねえ」彼は答えず、黙々とモーターバイクを走らせていた。けれど私は、彼が奥歯を噛み締め、唇が白くなるほど耐えているのを私は知っていた。空気を変えようと、私は「気にしないで」という意味を込めて笑い飛ばした。「でも、これでいいと思ってるのよ。私たちにはお金はなくても、大切なものはあるんだから。ねえ、あなたの愛があるし、今はモーターバイクもある。なんて幸せなのかしら!」私は拓海の広い背中にそっと顔をうずめ、彼から漂う清潔感のある爽やかな香りを胸いっぱいに吸い込んだ。夜風が優しく頬を撫で、この上なく心地よい充足感に包まれる。拓海の声が不意に耳元で響いた。その言葉は体を通って、私の心に深く刻まれた。「琴音、たとえ僕がどんな無惨な最期を遂げようと、君にこんな生活を一生させるような真似は絶対にしない」私は慌てて彼の口を押さえ、珍しく眉をひそめた。「そんなこと言っちゃダメ。あなたは病気も怪我もなく生きなきゃダメなのよ」彼は微かに笑った。私の手のひらがくすぐったくなる。「僕の琴音は生まれつきのお姫様なんだから、絶
母の目には涙が浮かび、その顔に深く刻まれたシワが過酷な歳月を物語っていた。父はいたたまれなさに耐えかねるように、深く項垂れている。私は母親の手を握り、必死に答えを求めた。「『愛している』と一言言ってくれたら、悠真のマンション代を出すわ」だが母は、私の視線を拒むように、静かに顔を背けた。母はカラカラに乾いた喉を鳴らし、ようやく一言を絞り出した。「あなたがお腹の中にいた時くらいかしら。それより、悠真のマンション代は必ず出しなさいよ。数日以内に振り込みなさい」私は力なく手を下ろした。顔は絶望に染まり、土気色に沈んでいる。二人は私の様子など気にかけることもなく、逃げるようにその場を後にした。私はついにすべての現実を受け入れ、過去に別れを告げる決心をした。両親が去った後、私は市内でも指折りの敏腕弁護士を雇い、長年にわたって両親や悠真がありとあらゆる名目で私を揺すり、搾取し続けてきた証拠をすべて整理した。彼らは私の名義を盗用して、借金まで重ねようとしていた。弁護士の仕事ぶりは迅速かつ的確だった。提訴から受理まで、信じられないほどの速さで手続きが進んでいった。裁判所からの召喚状がいわゆる「実家」に届いたその日、私は彼らをブロックし、あらゆる繋がりを断絶した。二十数年続いた悪夢に、ようやく自分の手で終止符を打った。惜しむような未練など微塵もなかった。瑞希と拓海も、私の生活から完全に姿を消した。噂では、彼らはこの街を離れたという。それでいい。目に触れなければ、心も乱れない。4000万円を手にしてから、私の人生はゴールが見えてしまったような感覚になった。だから、私は世界一周旅行に出ることにした。これからは大自然に身を委ね、奪われた歳月をこの手に取り戻して謳歌するつもりだ。一人旅はいつだって自分との戦いだ。拓海の庇護の下で、私はすっかり牙を抜かれ、独り立ちする術を忘れてしまっていた。けれど幸い、生活を立て直すのは難しくなかった。ただ時間が必要なだけだった。だから旅の間、私は一株の花を大切に連れ歩いている。その花を過去の自分だと思い、私は拓海の代わりになってその花を守る責任を負った。この「責任」という使命感が、私を支え続けてくれた。昔の拓海が私の一人旅を知ったら、間違いなく無
私は呆然とそのカードを見つめた。4000万円。私の命を買い取るには十分な額だ。そして、七年の恋を終わらせる「手切れ金」としても。私はその場に立ち、彼氏が親友を抱きしめている姿を見ていた。愛されていない私こそが、最初からこの二人の「部外者」だったのだ。プライドは「受け取るな」と叫んでいたが、理性が私の頭を下げさせた。母の執拗な取り立ては、まるで首を絞められるのように、私の呼吸を容赦なく奪っていく。この金さえあれば、平穏な余生を買い取ることはできるだろう。ただ、限りなく甘やかしてくれた拓海はもういない。私は苦笑し、最後の力を振り絞って、未練がましく尋ねた。「拓海、私に言うことは何もないの?」彼は静かに目を閉じ、唾を飲み込んだ。付き合って五年。私たちの関係は、誰もが羨むほど安定していたはずだった。「山頂にあるあの寺は、本物の縁を結んでくれるパワースポットなんだって」彼はそう熱心に語り、私を頂上まで連れて行った。あの時、私たちは重なるように抱き合い、永遠の愛を誓うキスを交わしたというのに。「琴音、僕たちは永遠に一緒だ」私は目に涙を浮かべ、笑って言った。「指切りね」「指切り。僕は一生、君のものだ」けれど、拓海の言う「一生」がこんなに短いなんて思わなかった。たった数年で終わってしまうなんて。「拓海、私に言うことは何もないの?」彼は極めてゆっくりと首を横に振った。一言もなかった。私はそれ以上何も言わず、カードを受け取った。吹っ切れた私の声は、空恐ろしいほど澄んでいた。「お金はもらうわ。二人の『慈悲』に感謝するわ。末長くお幸せに」私は背を向け、ドアへと歩き出した。その足取りは凛としていて、一度もよろめくことはなかった。「琴音!」背後で瑞希が私を呼んだ。私は振り返らなかった。「ごめんね。元気で」二人の邪魔をしないよう、至れり尽くせりの心遣いで静かにドアを閉めてあげた。この大金のためなら、笑顔で寝床を整えてやることも厭わない。なんて意気地なし、なんて情けない女。だけど、誰がお金を拒めるっていうの?ああ、心が死ぬというのは、こういう感覚を言うのね。エレベーターの鏡に映る私の顔は、異常なほど冷静だった。私は自分を長く落ち込ませはしなかった。このお金
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