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Author: Miss-Er
last update publish date: 2026-09-06 21:55:38

第7章 シェリル・モレノ夫人は、ニューヨークの上流階級の社交界にふさわしい気品を漂わせながら、邸宅のエントランスホールへと足を踏み入れた。その隣には、高級なグレーのスーツを申し分なく着こなしたデイヴの義理の兄、レイモンド・モレノが歩んでいる。二人は一ヶ月にわたる中国での一連のチャリティイベントへの出席を終え、戻ってきたばかりだった。

エレベーターからメインリビングへとデイヴの車椅子を押すエリンの足取りは重かった。少し前にバスルームで感情を爆発させたことで残ってしまった目の赤みを隠そうと、彼女は下を向いたままだった。車椅子の上で、デイヴは再び顔のあらゆる表情を削ぎ落とし、魂がどこか見知らぬ場所へ蒸発してしまったかのように、ただひたすら前方を凝視していた。

息子の車椅子を押す見知らぬ豊満な体つきの女を目にした瞬間、シェリル夫人は深く眉をひそめた。

「ヴィクトリア、この女は誰なの?」不審感を露わにした高圧的なトーンで尋ねる。

暖炉の近くに立っていたヴィクトリアは、すぐさま完璧に可憐な笑みを浮かべ、洗練された足取りで義母へと歩み寄った。

「まあ、お母様。彼女はエリンです。デイヴのちょっとした身の回りの世話をしてもらうために雇った新しい看護師ですよ。日常のお薬を渡したり、食事の介助をしたりするだけですわ、お母様」ヴィクトリアは、先ほどエリンに押し付けた台本通りに、念入りに作った優しい声で答えた。

シェリル夫人は目を細め、軽蔑の眼差しでエリンを頭からつま先まで見分した。

「それならいいけれど。少なくともこの看護師はブスで太っているものね」エリンが目の前にいることなど一考だだにせず、吐き捨てるように言った。「この看護師に夫の体を洗わせたり、必要以上に触れさせたりしてはダメよ、ヴィクトリア。行き過ぎというものだわ。このような女に私の息子の体を深く世話させるなど、モレノ家の名誉に関わることですからね」

エリンはデイヴの車椅子のハンドルを固く握りしめた。その屈辱は再び彼女の脆い心を切り裂いたが、必要な500万ドルのために、ただ頭をさらに低く下げ、あらゆる恥辱を飲み込むことしかできなかった。

固く凍りついた顔の裏側で、デイヴは心の中で絶え間なく毒づいていた。

(愛するおふくろ…アンタが知らないのは、この“ブスな女”がほんのさっき俺に触れて、俺の男の象徴を完璧に立ち上がらせて変装を台無しにしそうになったってことだ…!)デイヴの脳内で煮え立つような怒りが吹き荒れていた。

シェリル夫人はデイヴの車椅子へと近づき、深くため息をつきながら息子の顔を覗き込んだ。

「それで、デイヴの経過はどうなの、ヴィクトリア? 私が出発してからもう一ヶ月が経つけれど。何か改善は見られたの?」

ヴィクトリアの表情が瞬時に一変した。その瞳には涙が溢れ、絶望的な悲しみと、一見真実に見える愛情を放ち始めた。彼女はデイヴの車椅子の横に膝をつき、夫の硬直した手を優しく包み込んだ。

「何の改善もありませんの、お母様…」すすり泣きを耐える振りをしながら、震える声で言った。「デイヴは相変わらず…生きている屍のままです。でも心配なさらないで、お母様。私はこの人を介護し、守ることに決して疲れはいたしません。デイヴを心から愛していますの。永遠に彼のそばにあり続けますわ」

ヴィクトリアの圧倒的な演技を目の当たりにして、エリンは吐き気すら覚えた。

(このクソ女が! 本当に大した女優だよ!)デイヴは頭の中で激怒の叫びをあげていた。自分の状態を悲しむ振りをしてみせるヴィクトリアの姿に、今すぐ立ち上がってその首を絞め殺したい衝動に駆られていた。

「辛抱するのよ、ヴィクトリア。あなたは本当に類稀なる忠実な義理の娘だわ」シェリル夫人は、義理の娘の忠貞という仮面にすっかり騙され、その肩を撫でながら称賛した。「ヨーロッパの最高峰の専門チームを引き続き探してみせるわ。デイヴはきっと回復できると信じているの」

(無駄だ!)デイヴは顔に出せない苦笑とともに、心の中で再び悪態をついた。(アンタの愛しい義理の娘が、俺の神経を麻痺させるあのクソ薬を毎日食事に混ぜ続けている限り、世界中のどの医者だって俺を治せやしないさ)

シェリル夫人はダイヤの腕時計に目をやり、静かに息を吐いた。

「さて、私は取締役会に出席するために今すぐ本社へ向かわねばなりません。解決すべき緊急の件が残っているのです」

年配の女性は振り返ったが、レイモンドが動こうとしないことに気づいて立ち止まった。

「レイモンド、あなた会社へ一緒に行かないの?」

レイモンドはうっすらと微笑み、礼儀正しく首を振った。

「先に行っていてください、母上。個人的な書類と支社の件で、義妹と少し話しておきたいことがあるのです」

「わかりました。では行くわね」

シェリル夫人は豪奢なエントランスホールを後にし、邸宅を出て行った。

巨大な扉が閉まった瞬間、部屋の空気は奇妙に変化した。ヴィクトリアはひざまずいていた姿勢から即座に立ち上がり、指先で荒々しく偽りの涙を拭い去った。そしてエリンに向かって、冷たく刺々しい視線を向けた。

「エリン、何をぼんやりしているの? 今すぐこの生きている屍を部屋へ連れ戻しなさい!」蔑みを露わにしたトーンで命じる。

「は、はい、奥様」エリンは慌てて答えた。

すぐさまデイヴの車椅子を旋回させ、これ以上あの毒々しい二人組の近くにいたくない一心で、急速にエレベーターへと押していった。

しかし、エレベーターの扉が完全に閉まる直前、前方を凝視したままのエリンとデイヴは、狭まっていく隙間越しに不快な光景を目撃した。

レイモンドが迅速に動き、ヴィクトリアの腰を引き寄せて己の腕の中に収めた。そして時間を無駄にすることなく、荒々しく歯止めのきかない情熱で義妹の唇を貪り始めたのだ。

「愛しい人、会いたくてたまらなかった…」キスの合間に、レイモンドは欲情に掠れた声で囁いた。「あのクソババアに付き添って中国で丸一ヶ月過ごすなんて、耐えがたいほど退屈だったよ。お前の体が恋しかった」

「あなた…私も会いたくてたまらなかったわ…」ヴィクトリアは荒い息をつきながら答えた。

すぐさまレイモンドの首に両腕を回し、同じように荒々しい熱量でキスを返した。

バン! エレベーターの扉が完全に閉ざされた。

あまりにも堂々とした不貞の現場を目の当たりにしたショックで、エリンは全身を震わせたままエレベーターの中で硬直していた。

まさにその瞬間、デイヴが車椅子から突如として立ち上がった。冷ややかで殺伐としたオーラが、彼の堂々たる肉体から解き放たれる。激しい復讐心に燃える鷹のような瞳でエリンを振り返った。

「自分自身の目で見ただろ? 俺の裏で、あの淫乱な妻がどう振る舞っているか」抑えきれない憤怒に声を震わせ、デイヴは低く唸った。

エリンは唾を飲み込み、返事をすることもできなかった。

デイヴは一歩歩み寄ると、彼女の両肩を強く掴み、無理やり自分を見上げさせた。

「よく聞け、ぽっちゃりちゃん。今すぐスマホを取り出せ。足音を殺して階下の廊下へ戻り、あいつらの胸くそ悪い行為のすべてを1秒残さず録画するんだ。ヴィクトリアの動きを追え。あの激しいキスの後だ、あいつらは俺のベッドを穢すために、俺の部屋で交わりを続けるに決まっている」

エリンは目を見開き、驚愕と恥ずかしさで顔を真っ赤に染めた。

「な…なんですって? それじゃあ…奥様があの男の人と関係を持っているところを、私が直接見て録画しろとおっしゃるのですか、旦那様?!」正気の沙汰とは思えないあまりに不条理な要求に、エリンは声を震わせた。

デイヴは唇を歪め、冷たく官能的な威嚇に満ちた笑みを浮かべた。エリンの耳元へ顔を寄せ、危険なほど挑発的なトーンで囁く。

「なんだ? 何か問題でもあるのか? もしあのクソみたいな動画を見て急に興奮したっていうなら…この“生きている屍”が横たわる部屋へ直接来ればいい。ベッドの上で、俺と一緒に最後まで戯れてやってもいいんだぞ」

「あなたという人は…!」大富豪の不躾な言葉を聞き、エリンは怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、弾かれたように後ずさった。

屈み込むような屈辱と怒りが体内で入り混じり、抑えきれない感情に苛まれながら、彼女の胸は激しく上下していた。

つづく…

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