แชร์

第3話

ผู้เขียน: 小粒キャンディ
一花が車に乗り込もうとしているのを見て、慶は気持ちを切り替え、一緒に行こうとした。

この時間帯には、二人はいつも一緒に出勤する。

「あなたは秘書に送ってもらって。私は不動産屋さんと約束して部屋を見に行くの」

慶はそれを聞いて一瞬、訝しげにしていた。「だけど、今日は会社で重要な……」

「この物件はとても人気があるの。だから、今日行かないと誰かに取られちゃうわ」

一花は直接彼の言葉を切り捨てた。「あなたいつも言ってるじゃない。仕事が終わらなくても、ある程度のところで終わりにしないとキリがない、たまには自分を甘やしてやれってね」

一花は淡々とした口調で言っていて、感情を表には出さずに微笑んでいた。

しかし、その微笑みに、慶ななぜだか背筋がひやっとしてしまった。

すると彼はすぐに口角を上げた。「分かった。じゃあ、俺も今日は会社を休んで君と一緒に家を見に行くよ」

「その必要はないわよ」

一花は輝くような笑顔を見せ、振り返って、指で軽く彼の胸元を突っついた。「一人で選びたいの。選んでからあなたに見せに連れて行くから」

一花はもちろんこの時の慶の目論見が分かっていた。彼は別に彼女に付き添いたいわけではなく、見張っていたいだけだ。

慶に任せてしまい、夫婦の名義で家を購入することになれば、そこは彼と綾芽のものになってしまう。

一花が甘えるような口調で話すものだから、慶は突然ゾクッとして彼女の手をぎゅっと握りしめた。

「お楽しみってこと?」

「そうよ」

その瞬間、一花の口元はこわばり、すぐに手を引っ込めた。

「そうか、じゃ、君の言う通りにするよ」と慶は声のトーンを低くし、軽く彼女の肩を抱いた。

それを避けることができず、一花はただ気持ち悪いのを堪えるしかなかった。

そして一花が車でその場を去ると、慶の表情からスッと笑顔が消えた。

彼はどうも一花が少しいつもと違うように感じていた。

それとも、女性は敏感な生き物だから、何かに気づいて彼と綾芽の仲に嫉妬したのかとも考えていた。

慶はネクタイを整え、ソワソワする気持ちを抑えようとした。

一花に気持ちを持って行かれるわけにはいかなかった。

いくら一花が魅力的な女性で、心から自分のことを想っていてくれたとしても……

妻は綾芽、ただ一人なのだから。

それから一時間後、一花は全面ガラス窓から、オフィスエリアの風景を眺めていた。

彼女が目を付けたこのタワーマンションは、天井まで豪華な造りで、スマートホーム化されている。シンプルながらも高級感があり、レイアウトは完璧だった。総面積は90坪にもなる。

面積に関しては一番大きな部屋ではないのだが、オフィスエリアの一等地にある。

夜、街中がライトアップされれば、ここからの景色は最高だろうと一花はすでに想像していた。

「ここにします。手続きをお願いします。私の名前で契約しますね」

一花はとても満足して、この物件を担当する不動産仲介スタッフである河本にそう言った。

ここは契約すれば即入居可能であり、彼女はいつでもあの窒息しそうなほど息苦しい「家」から出て行けるのだ。

「かしこまりました」

河本は、彼女がただ見に来ただけの客だと思っていたので、即決してくれたことにとても喜んでいる様子だった。

すると一花に対する態度が一変し、担当者は一花を顧客専用の部屋へと案内し、他のスタッフに飲み物と茶菓子を持って来させた。そして自ら不動産契約書を取りに行った。

少しして一花は契約書にサインをし、一括購入を選び手付金の支払いを済ませた。その後の手続きに関しては、プロに頼んで代わりにやってもらうつもりだ。

一花が契約書にサインをしている時、甘ったるい女の声が耳に飛び込んできた。

「あなたが私が目をつけていた部屋を横取りしたのね?」

一花がその声のほうへ視線を向けると、そこにはブランド物に身を包み、めかし込んだ若い女の姿があり、勢いよく駆け寄ってきた。

彼女の後ろには二人のボディーガードと、不動産仲介の女性スタッフがいた。

「私のことですか?」

一花は一瞬驚き、すかさずそう尋ねた。

「当然でしょ、この部屋は私が先に目を付けていたのよ。この部屋を買うのはこの私よ!」

女がサングラスを外すと、その下からは魅力的な瞳が現れた。しかしその瞳には怒りを宿し、鋭い視線で一花を睨みつけていた。かなり横柄な態度の女だ。

「さっき、この部屋は誰かが予約しているなんて話は聞きませんでしたけど。あなただって手付金を支払ってはいないのでしょう?私が先に契約したので、ここは私のものです」

一花は冷たい声でそう言い放った。彼女は話の通じなさそうな相手とは言い争いたくなかった。そして彼女は立ち上がって他の席に座った。

その女は腹を立てて、あまりの怒りで何かを話す前にその場で地団太を踏んでいた。

「そんなことはどうだっていいのよ。別にあんたにお知らせに来たわけじゃないし。私には優先権があるのよ、だから私に逆らえる権利なんてあんたにはないんだからね!」

一花はまたその女のほうへ視線を戻し、理解できない様子で言った。「優先権?」

そして女の隣にいた不動産仲介スタッフの中野も淡々とした口調で言った。「我々には、家を購入できる資格があるかまずは審査をする権利がありますので、先に契約書にサインしていたとしても意味はないのです。お客様の家柄がまずは考慮されるのです」

そう話す彼女は一切一花に目を向けず、かなり相手を馬鹿にするような態度だった。

「そんな規定があるなんて、本当に……呆れて言葉も出ないわね」

一花は眉間に皺を寄せた。

そしてこの時、さっき契約書を取りに行った担当者も、申し訳なさそうな様子で戻ってきた。

そして一花の横で偉そうに腕組みしている女を見ると、小声で一花に話した。「申し訳ございません。こちらのお方は二階堂萌絵(にかいどう もえ)様とおっしゃって、国内で最も有名な玩具メーカーの会社のご令嬢なのです」

一花は有名な玩具製造会社、二階堂グループならもちろん知っている。

一花が莫大な遺産を継いだ後、家族について調査していた。南関市のビジネスランキングで、二階堂グループは第五位である。

だからこの目の前にいる二階堂お嬢様が、ここまで偉そうな態度を取れるのは当然のこと。

そして中野はまた口を開いた。「気分を害されたのは分かりますが、すみませんね、規定は規定ですので」

「別に気分を悪くはしていないけど、ただ不公平だと思っただけよ。だけど、そちらにそのような規定があるなら、その優先権とやらはそこにいる女性より私のほうが上よ」

一花は軽くため息をつき、続けて隣にいる担当者へ指示を出した。「すぐに手続きを終わらせてもらえますか。私、急いでいるので」

つまり一花は南関市の第五位に座する二階堂氏よりも格上だということだ。

「?」

その言葉に、萌絵と中野は呆然とした。

「何を言っているの。彼女のほうに優先権があるですって?」

萌絵は自分の聞き間違いかと思い、中野のほうへ目を向けた。

中野はすぐに手元にある予約表へ目を通した。

もし、二階堂氏よりも大口の顧客がここへ来るのであれば、彼らスタッフ一同には事前通達がされるはずだ。少なくとも、仲介マネージャー自ら出迎えることになる。

しかし、目の前にいる女性はいたって普通の格好をしていて、良くても宝くじで大金を当てただけの、一時的な金持ちだろうと中野は思った。二階堂家の令嬢を超える身分の人間などそうそう現れるわけがないと思っていた。

「お客様、私の言葉を理解されていないようですが、うちはお客様の家柄によって……」

「だったら、その審査とやらをしてみればいいじゃない」

一花は無駄話をしたくなかったので、再び身分証明書を突き出した。

彼女は怒っているわけではない。今までにこれ以上にムカつく連中なら嫌というほど見て来たのだ。このように人の身分にこだわる連中など屁でもない。

そして一花の担当をしている河本が少し訝しげにしていたものの、言われた通りに審査に入った。

この時、二階にあるVIPルームのカーテンが少し動いた。

後ろの背の高い人影が立ち上がってその場を離れた。

その傍にいた付き人がすぐに意味を理解し、部下に命令した。「行け、伊集院様がおっしゃっている。あの者たちにあちらのお嬢様の資産を審査をするのを止めさせろ。あの方は西園寺家のご令嬢だ」

南関市の西園寺家といえば、一つしかない。それは南関のトップ財閥家である。しかし、西園寺家に令嬢がいるという噂は今まで聞いたことがなかった。

一花はまたソファに座り直した。

この時、中野はもはや我慢できない様子だった。

「お客様、身の程を弁えられたほうがいいと思いますよ。さっきも言いましたが、我が不動産で住宅を購入される際には、その資格があるかどうか審査が必要なのです。手元に資金があっても、ここの家を買うだけで精一杯な程度でしょう。これ以上二階堂様のお時間を無駄にしないでください。でなければ、今すぐ警備員を呼んで追い出しますよ」

この時、萌絵はさっきまでの怒りを鎮め、鼻で笑うと中野を押し退けた。

「別にいいわ、ちょっとくらい待ってあげる。見せてもらいましょうよ。この女が一体どこの名家の娘なのかね。

お耳に痛い話をさせてもらうけど、もしあなたが二階堂の上をいく家柄でないのに、私の時間を無駄にしたのなら、土下座して謝るのよ。じゃなきゃ、容赦しないからね」

この女、二階堂萌絵は一花よりも少し年下で二十歳を少し過ぎたくらいだろう。完全に甘やかされて育ったわがままお嬢様だ。

一花は軽く笑った。「いいわよ、じゃ、あなたが言うその『優先権』とやらが私にあるならどうする?あなたも土下座して謝るのよね?」

「あんた……」

二人が話している時、スーツを来た男が額の汗を拭きながら一花のほうへ駆けてきた。

「お嬢様、大変申し訳ございませんでした。確かにお嬢様のほうに決定権がございます。とんでもない態度をお見せしてしまい、誠に申し訳ございませんでした!」

河本はさっき審査をしに行こうとしたところ、通知を受け、彼が担当している女性は総資産兆超えであると知り、度肝を抜かしてしまった。しかも、彼女はあのトップに君臨する財閥家、西園寺家が探し出した令嬢だったのだ。

中野はまだ一花に問い詰めようとしているところを、他の店員に引っ張られてこの件を伝えられた。するとその瞬間全身の力が抜けてしまい、床に膝をつき崩れてしまった。

しかし、彼女は我に返ると、跪いたまま謝罪し始めた。「も、申し訳ございませんでした、西園寺様。世間知らずのわたくしめが、先ほどは失礼な態度を取ってしまって、どうかお許しください……」

萌絵は目の前にいる女性が西園寺家の人間だと聞き、信じられない様子でいた。

彼女は自分が知っているあの西園寺家のことなのかと思っていた。

南関では、西園寺家が少し動くだけで、ビジネス界を大きく変えてしまうほどの実力を持っている。

「早く手続きを済ませてちょうだい。私、忙しいのよ」

一花は言い争う気もなく、ただその審査とやらをさっさと終わらせてもらいたかった。

それを聞いたマネージャーはすぐに契約書を持ってきて、一花にサインをしてもらうと、部下に手続きをしに行かせた。

「あなたが西園寺家の娘ですって?今まで会ったことなんてないはずよ」

萌絵は頭を棒で殴られたかのように衝撃を受け、呆然と一花を見つめていた。

西園寺家の同世代であれば、萌絵も知っている。しかし、唯一……この目の前にいる女とは顔を合わせたことがないのだ。

「なにが西園寺よ、絶対に嘘に決まってるわ!」

萌絵は考えれば考えるほどおかしいと思った。ここにいる全員が手を組んで自分を騙そうとしているとまで思ってしまった。そして合図一つで後ろにいたボディーガードが強引に止めようとした。

しかし、それを不動産スタッフが止めに入る前に、その場には黒服の男たちがなだれ込んで来て、萌絵たちの邪魔をした。

その一団の先頭に立っていた中年男が、朗らかな声で言った。「二階堂様、ご無沙汰しております。わたくしは西園寺家の執事、古谷と申します」

それを聞いて、萌絵だけでなく、一花も驚いていた。

西園寺家の人間がどうして突然ここへ現れたのだろうか?

スーツに革靴姿の中年男は、白髪交じりの頭に、黒ぶち眼鏡と白手袋をはめていた。非常に優雅な雰囲気を醸し出しているが、人を圧倒するオーラを持っている。

萌絵は古谷を見ると、さっきまでの勢いがしぼんでいった。

「古谷さん、彼女は……まさか、本当に西園寺家の令嬢なのですか?」

ここまで来ても萌絵は信じたくなかった。

萌絵が知るところでは、西園寺匠の妻は不妊症で、一人だけ養子をもらったはずだ。匠が他界してから、どうして何もないところから急に彼の娘が現れたのだろうか。

まさか……隠し子なのだろうか。

「間違いなく、こちらにいらっしゃるお方は、我が西園寺家の匠様の娘様でございます。そして今、唯一西園寺家を継ぐお方なのです」

そう言い終わると、古谷は萌絵を通り過ぎ、一花をじっと見つめた。

一花は見つめられて非常に慣れない様子だった。そして次の瞬間、古谷が丁寧にお辞儀をした。「お初にお目にかかります。一花お嬢様」

「お嬢様」

古谷がそう言うと、後ろに付き従っている黒服の男たちが一斉にお辞儀をした。

その光景に一花は驚き、萌絵も怯えた様子で思わずよろけてしまった。

萌絵はカバンをぎゅっと抱きしめ、すぐにその場を離れようとしたが、黒服たちに囲まれてしまった。

「お嬢様、こちらの二階堂様と何かあったようですが、解決いたしましょうか?」

古谷は萌絵のほうをちらりとも見ず、薄い笑みを浮かべて恭しく一花に尋ねた。

この時、萌絵は顔を真っ青にさせていた。さっき一花に言った言葉のように、ここで土下座をさせられるのかとおどおどしていた。

ここで土下座でもしてしまったら、今後上流社会の集まりでどんな顔をして出席すればいいのか。恥ずかしくてたまらない。

「……」

西園寺家が上流社会ではかなりの地位であることは知っていても、一花はこのような状況は初めてだから少し戸惑った。「いいです。別に何かされたわけじゃないですから」

「そうおっしゃられるのでしたら、二階堂様には我が西園寺家のお嬢様に謝罪の言葉を述べていただきましょう。そうしないと両家の面子というものがございますので」

そう言いながら古谷は背筋を伸ばした。一花が気に留めなくとも、如何なる人間もこの西園寺家に失礼な態度を取らせたままで終わらせるわけにはいかない。

古谷はニコニコと微笑んではいるものの、萌絵はその圧力に押し潰されそうに感じていた。

彼女はゴクリと唾を飲み込むと、大勢の前で一花に謝るしかなかった。「す、すみませんでした」

そう言い終わると、黒服たちはようやく萌絵に道を開けた。

萌絵は顔を真っ赤にさせて、すぐに付き人を連れてその場を去っていった。

萌絵が去った後、古谷が合図を送ると、さっき萌絵を担当していた中野も人に連れられていった。

一花が口を開く前に、古谷が前で進み出て、彼女に「どうぞ」と手を出口のほうへ向けた。

「こちらの事はわたくし達が処理しておきます。車が外に待ってますので、お嬢様は先にお乗りください」

古谷を見つめる一花の瞳は、最初警戒していた様子だったが、この時幾分か落ち着いていた。

彼女はすぐには動かず、ただ平然とした様子で尋ねた。「車って、どこへ向かうのですか?」

「もちろん、西園寺家にお戻りになるのです」そう答える古谷は穏やかだったが、相手に有無を言わさぬ口ぶりだった。
อ่านหนังสือเล่มนี้ต่อได้ฟรี
สแกนรหัสเพื่อดาวน์โหลดแอป

บทล่าสุด

  • 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します   第5話

    車を止め、勇はドアを開けてまた一花に言った。「車に乗ってください」一花は少し迷って、やはり乗ることにした。この日、自分を助けてくれた人物が国内トップクラスの財閥家である伊集院家であると、勇から聞いて知ることになった。伊集院家は、金融、テクノロジー、そしてエネルギー分野を中心にビジネスを展開している。国内の経済を牛耳る巨大財閥であり、「一国に匹敵するほどの財力を持つ」と言っても過言ではない。現在伊集院家の後継者は、28歳という若さの伊集院柊馬である。彼はその力で一族の事業を新たな高みへと押し上げ、ビジネス界では最も影響力を持つ若きリーダーだと認められている。昨晩、一花の祖父に当たる幸雄が伊集院家から電話をもらい、政略結婚の話を持ち出されたのである。そして彼らが選んだのが一花だった。勇は、伊集院家と親戚関係になりたいと考える名家は数えきれないほど存在し、もちろん西園寺家もその中の一つであると一花に教えた。そして、勇自身も柊馬の祖父である伊集院和彦(いじゅういん かずひこ)の指示で一花を探しに来ていた。「つまり、伊集院家は西園寺家よりも格上ということですか?」一花はあまり勇からあれこれ聞くのが面倒で、直接そう尋ねた。勇はそれに答えた。「比べることはできませんね。しかし、どうしても比べろと言われたら、西園寺家は南関で最も資産を持つ一族で、ビジネス界では首位にあります。しかし、伊集院家のほうは、国内において誰一人として頭の上がらない存在です」「その、伊集院柊馬って……どのような方なんですか?」一花はまた尋ねた。「伊集院柊馬は海外ではかなり有名な方です。国内ではあまり表舞台に現れないので、謎に包まれた存在、とでも言いましょうか。私自身、彼に会ったことはないのです。ただ、噂によると……」勇は鼻を擦った。彼は一花にこの政略結婚の説得にやって来たのだが、何か話そうとして少し思いとどまっていた。「噂によると?」「噂だと彼は……人付き合いにおいては、あまり積極的に交流される方ではないようですね」勇は事実を述べているが、かなりオブラートに包んで言っておいた。もし、柊馬がただ人付き合いが難しいだけの人間であれば、伊集院家は彼と政略結婚しようとする人がすでに殺到し、家の中はごった返しているだろう。「あまり積極的に交流されな

  • 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します   第4話

    「西園寺家にですか?」一花はまた強調して尋ねた。「ええ、西園寺家でございます。これからは一花様のお家でございます」それを聞いて一花は一瞬黙ってしまった。西園寺匠は一花の実の父親だ。兆を超える遺産がまるで棚から牡丹餅のように一花のもとへ降ってきた。そして遅かれ早かれ西園寺家に戻る運命なのだ。隠れもできないし、隠れる必要すらない事実だった。一花は首を傾げた。「それもいいですね。私の家なわけだから、いつかは行ってみるべき場所なのだし」それが遅いか早いかだけの違いだ。そしてその途中、古谷が簡潔に西園寺家の現状について説明した。西園寺家が展開している事業は広範囲に及んでいる。そのほとんどの資産は匠に帰属している。残り一部分の資産は匠の父親、つまり一花の祖父と、匠の兄のもとにある。そして今、その匠の莫大な遺産が一花の手の中にあるということだ。つまり、一花は西園寺グループの筆頭株主となった。現在、祖父にあたる西園寺幸雄(さいおんじ ゆきお)は海外で療養中だ。それで西園寺家は今、匠の妻である和香(わか)が一族の管理をし、会社は養子である西園寺陸斗(さいおんじ りくと)が責任者として率いている。一時間後、ロールスロイスファントムが西園寺家の本宅に到着した。300坪を超える庭は見る者を圧倒する雰囲気だった。門を入って屋敷に到着するまで、車でも十数分かかった。西園寺邸の建物は普通の豪邸と比べても雄大で壮観だった。足元の石畳ひとつ取っても相当な価値がありそうなくらいだ。一花は生まれて初めてここまで贅沢に金を使って造られた豪華絢爛な場所に来て、緊張しないと言えば嘘になる。しかし、できるだけ平静を装っていた。彼女は古谷の案内で本館の応接間へとやって来た。重々しい雰囲気の扉をメイドが開けると、全面ガラス窓の前には優雅で高貴そうな人影が現れた。貴婦人の傍には二人の付き人が立っていて、ソファにはスーツに革靴の若い男性の姿があった。一花が現れると、その女性は軽く一花に視線を走らせ、近づいてきた。この時、古谷が小声で一花に、目の前にいる女性は西園寺匠の妻である西園寺和香であると紹介した。そしてソファに腰掛けているのは、匠と和香の養子である一花の名義上の兄、西園寺陸斗だ。和香が視線を上げると、古谷が他の使用人を連れて部屋を離れた。そし

  • 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します   第3話

    一花が車に乗り込もうとしているのを見て、慶は気持ちを切り替え、一緒に行こうとした。この時間帯には、二人はいつも一緒に出勤する。「あなたは秘書に送ってもらって。私は不動産屋さんと約束して部屋を見に行くの」慶はそれを聞いて一瞬、訝しげにしていた。「だけど、今日は会社で重要な……」「この物件はとても人気があるの。だから、今日行かないと誰かに取られちゃうわ」一花は直接彼の言葉を切り捨てた。「あなたいつも言ってるじゃない。仕事が終わらなくても、ある程度のところで終わりにしないとキリがない、たまには自分を甘やしてやれってね」一花は淡々とした口調で言っていて、感情を表には出さずに微笑んでいた。しかし、その微笑みに、慶ななぜだか背筋がひやっとしてしまった。すると彼はすぐに口角を上げた。「分かった。じゃあ、俺も今日は会社を休んで君と一緒に家を見に行くよ」「その必要はないわよ」一花は輝くような笑顔を見せ、振り返って、指で軽く彼の胸元を突っついた。「一人で選びたいの。選んでからあなたに見せに連れて行くから」一花はもちろんこの時の慶の目論見が分かっていた。彼は別に彼女に付き添いたいわけではなく、見張っていたいだけだ。慶に任せてしまい、夫婦の名義で家を購入することになれば、そこは彼と綾芽のものになってしまう。一花が甘えるような口調で話すものだから、慶は突然ゾクッとして彼女の手をぎゅっと握りしめた。「お楽しみってこと?」「そうよ」その瞬間、一花の口元はこわばり、すぐに手を引っ込めた。「そうか、じゃ、君の言う通りにするよ」と慶は声のトーンを低くし、軽く彼女の肩を抱いた。それを避けることができず、一花はただ気持ち悪いのを堪えるしかなかった。そして一花が車でその場を去ると、慶の表情からスッと笑顔が消えた。彼はどうも一花が少しいつもと違うように感じていた。それとも、女性は敏感な生き物だから、何かに気づいて彼と綾芽の仲に嫉妬したのかとも考えていた。慶はネクタイを整え、ソワソワする気持ちを抑えようとした。一花に気持ちを持って行かれるわけにはいかなかった。いくら一花が魅力的な女性で、心から自分のことを想っていてくれたとしても……妻は綾芽、ただ一人なのだから。それから一時間後、一花は全面ガラス窓から、オフィ

  • 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します   第2話

    一花はすぐには避け切れず、そのままジュースをかぶってしまった。その音を聞いて、使用人たちがすぐに一花のもとに駆け寄ってきた。「颯太!」すると颯太は血相を変えた慶に怒られたことに驚き、脱兎のごとく二階へと駆けあがっていってしまった。慶が追いかけようとしたが、それを綾芽が立ち上がって引き留めた。「慶君、まだ子供なんだから、力で脅すような教育をしようとしても駄目よ。私が様子を見に行ってみるわ」彼女はそう言い終わると、体にかかったジュースを拭き取っている一花へ視線をちらりと向けて、何か言いたげにしていた。それで慶はようやく一花のほうへと意識を向けた。「大丈夫だったか?見せてみて」一花はこの時すでに拭き終わっていて、慶の手が彼女の顔のほうへ近づいてくると「汚いから、触らないで!」と咄嗟にそう口に出した。しかし慶は一花の言葉の意味を理解していなかった。「ジュースくらいで俺が嫌がるわけないだろう?ただ君のことが心配なんだよ。颯太がこんなにわがままだったなんて、知っていれば君に世話を任せるべきじゃなかった」一花は軽く口角を上げて、皮肉交じりに言った。「そうね。もし実の母親が世話をしていたなら、私なんかよりもずっと立派に世話していたでしょうね。だけど残念ね、彼の母親は亡くなってるんだもの。養子を育ててる母親代わりの私では、本当にどうやって世話をしたらいいのか分からないわ」それを聞いた慶は一瞬たじろぎ、顔をこわばらせた。「何を言っているんだ、颯太は俺たちが養子として迎えた子だぞ。彼には一花という良い母親しかいないよ」そう言い終わると、彼は愛おしそうに一花の頭を優しく撫でた。一花は警戒しておらず、それを避けることができなかったため、触られた瞬間に気持ち悪くて体を硬直させた。部屋に戻ると一花はすぐにシャワーを浴びた。すると慶も彼女に続いてすぐにやって来た。彼は綾芽を滞在させる件で相談したかったのだ。相談と言えば聞こえは良いが、彼が自分の意見など全く聞かないことくらい一花は分かっていた。あの二人は本物の夫婦で、一花はただ偽の肩書きを持っているだけなのだ。「今会社は上場する前の大事な時期だし、颯太には誰か世話をしてくれる人が必要だ。それに会社は君を必要としているんだよ。柏木先生は子供教育のスペシャリストだ。君も見た

  • 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します   第1話

    結婚して2年、水瀬一花(みなせ いちか)が引き出しの整理をしている時、婚姻届受理証明書がうっかり破けてしまった。それで再度発行してもらおうと役所へ行き、申請すると、職員が困惑して言った。「申し訳ございません。既婚である事実は確認できませんが」「そんなまさか、結婚してもう2年なんですよ?」一花はそう言うと、真っ二つに破けてしまった婚姻届受理証明書を職員に渡した。職員はしっかりと三回確認して、パソコン画面を見つめながら一花に言った。「本当に結婚手続きされた記録は確認できません。それに、この判子も役所のものとは少し違うようです……おそらく、偽物でしょう」あまりの出来事に気が動転して役所を出てきた一花のもとに、一本の電話がかかってきた。「水瀬様でいらっしゃいますか?こんにちは、私はお父様からご依頼を受けた弁護士です。財産相続の件でサインをいただきたいので、河野総合法律事務所までお越しいただきたく存じます。お時間ございますでしょうか?」詐欺電話かと思い、一花が電話を切ろうとしたその瞬間、相手が突然こう言った。「水瀬様、お母様の水瀬雪乃(みなせ ゆきの)様が、20年前に水瀬様を市内のひかりの丘学園の前に置いていかれました。調査した結果、あなたは南関市のトップに君臨する財閥家出身である西園寺匠(さいおんじ たくみ)の血を引いている唯一の娘様だったのです」それを聞いた瞬間、一花はその場でピタリと体の動きを止め、すぐに弁護士事務所へと向かった。彼女は弁護士から今までの人生において、最も衝撃的な話を聞かされたのだった。彼女の実の父親は西園寺匠であり、西園寺家は莫大な資産を持つ財閥家である。彼は先月亡くなり、彼名義の株、不動産、会社を全て合わせると余裕で兆を超えていた。そして一花は彼の血を引く娘だったのだ。あまりの衝撃で頭が追いつかない中、弁護士が突然質問してきた。「水瀬様はご結婚されていますか?お子様は?」その瞬間、夫のあの顔が脳裏に浮かび上がった。それからカバンの中の偽造された婚姻届受理証明書のことを思い出し、彼女はペンを持つ手に力を込めた。「2時間ほど待ってもらえませんか。少し確認したいことがあるんです」弁護士事務所を出ると、一花はまっすぐに夫の会社へと向かった。夫である黒崎慶(くろさき けい)のオフィスのドアは少しだけ開いて

บทอื่นๆ
สำรวจและอ่านนวนิยายดีๆ ได้ฟรี
เข้าถึงนวนิยายดีๆ จำนวนมากได้ฟรีบนแอป GoodNovel ดาวน์โหลดหนังสือที่คุณชอบและอ่านได้ทุกที่ทุกเวลา
อ่านหนังสือฟรีบนแอป
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status