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第130話

Author: こふまる
ある母親が小声で耳打ちした。「藤宮さん、桐井園長を追い出してくださって、本当にありがとうございます。教務主任が園長代理になってから、色々改革してくれて。今年の表彰は公平になると思います」

夕月は謙虚に答えた。「私がしたことじゃありません。瑛優の退学騒動がなくても、桐井先生はいずれ……」

保護者たちや教師の多くは夕月に感謝していた。桐井健の横暴に長年悩まされていたのだ。

「夕月さん!」橘京花が望月の手を引きながら、にこやかに近づいてきた。その横には夫の斎藤鳴の姿もあった。

京花は真っ白に塗った顔に細い眉を描き、ゆったりとしたカシミアのコートを纏っていた。エルメスのバーキンを手に下げ、首元には1億円相当の翡翠のペンダントが揺れている。

以前、橘家で夕月にわざわざ自慢げに見せびらかしたものだ。

斎藤鳴は端正な容姿の持ち主で、その身なりからして学者然としていた。

「夕月!大変なことになったわ!瑛優ちゃん、また暴力事件を起こしたのよ!」

京花の甲高い声が、周囲の保護者の注意を引く。

夕月の前に立った京花は、目尻を吊り上げ、興奮気味に噂話を始めた。「望月が教えてくれたの。瑛優ちゃんが休み時間に暴力振るって、骨折させちゃったんですって!」

周囲の保護者たちは動揺を隠せず、我が子を夕月から遠ざけるように引き寄せた。

「あの子、藤宮瑛優には近づかないのよ」と耳打ちする母親もいる。

「でも母さん!僕、瑛優ちゃんのこと超かっこいいと思う!」

瑛優の名前が出るや否や、子供たちは興奮気味に親に話し始めた。

「瑛優ちゃんってすごいんだよ!僕も瑛優ちゃんみたいになりたい!」

子供の言葉に憤る保護者たち。「まさか!あの子のマネなんてしちゃダメよ!」

しかし子供たちは止まらない。「瑛優ちゃんね、年長組の全員に勝ったんだよ!」

「たった一人で、クラスのみんなをやっつけちゃったの!」

保護者たちは子供の話を聞きながら、ボディビルダーのような筋肉質の女の子を想像して背筋が凍る。

クラス中の子供たちを投げ飛ばし、校庭に転がった子供たちが悲鳴を上げている光景が頭に浮かぶ。

桜井が桜都一の名門でなければ、とっくに転校を考えていただろう、と皆が顔を曇らせる。

周囲の動揺を見て、京花は更に意地悪く続けた。「夕月さん、女の子をそんな風に育てちゃダメよ。瑛優ちゃんを筋肉アイドル
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