LOGIN「この塔にはもう用はないな」
スフィンがそう言いかけた時、女神の声が二人の脳内に響く。
「そうそう、マッサ。あなたにも何か能力を差し上げねばなりませんね」
それを聞いて、待ってましたと言わんばかりにマッサの胸は高鳴る。
「あなたには、別の世界の勇者も持っていた能力を与えましょう」
「別の世界の勇者の能力……?」
「そうです」
何が来るんだと、|勿体《もったい》ぶらせる女神にマッサはソワソワとしていた。
「名付けて『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」
「は?」
女神の言葉にマッサは何を言われたのか理解できない。いや、理解したくない。
「ですから、『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」
「いや、何すかその能力!?」
マッサはツッコミを入れた。その後頭をかきむしる。
「別の世界の勇者はこの能力で世界を救いました」
「噓でしょ!!
「この塔にはもう用はないな」 スフィンがそう言いかけた時、女神の声が二人の脳内に響く。「そうそう、マッサ。あなたにも何か能力を差し上げねばなりませんね」 それを聞いて、待ってましたと言わんばかりにマッサの胸は高鳴る。「あなたには、別の世界の勇者も持っていた能力を与えましょう」「別の世界の勇者の能力……?」「そうです」 何が来るんだと、|勿体《もったい》ぶらせる女神にマッサはソワソワとしていた。「名付けて『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」「は?」 女神の言葉にマッサは何を言われたのか理解できない。いや、理解したくない。「ですから、『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」「いや、何すかその能力!?」 マッサはツッコミを入れた。その後頭をかきむしる。「別の世界の勇者はこの能力で世界を救いました」「噓でしょ!! 絶対嘘でしょ女神様!?」 後ろではスフィンがクククと笑いを堪えていた。「さぁ、行きなさい人の子よ! 世界を救うのです!!」「そんな、もっと別の能力に……」 マッサの訴えも|虚《むな》しく、女神の声は消えて、扉が開く。「全然手応えないわね、準備運動にもならないわ」 塔の外では魔物を蹴散らしながらラミッタが呟く。 マルクエンも同じだった。マッサの心配もしながら、魔物を簡単に斬り捨てている。 その時、塔の扉が開いて、二人は振り返った。 塔の石畳をコツコツと音を鳴らして人が来る。 スフィンの隣を平然と歩くマッサを見て驚くラミッタとマルクエン。「マッサさん、大丈夫ですか!?」 マルクエンが声をかけると、ニッと笑うマッサ。「大丈夫っす、スフィンさんに治してもらいました!」「治したって、どういう事よ!?」
「それじゃあ、バチバチしちゃうよー?」 ミネスはそう言っておもむろに地面に降り立つ。「食らっちゃいな!」 突き刺さる氷のナイフの表面が溶け出し、そこへ雷の魔法を打ち込む。 ナイフ同士に電気が流れ、一瞬にして襲いかかってきた。「甘いわね」 土混じりの防御壁を巡らせ、ラミッタは防ぐ。 しかし、隙が出来てしまった。「そこで一生そうしてなよ! お二人共お幸せにー!!!」 ミネスは電気を流し、そのままマッサとスフィンの元へと飛んでいく。「まずい、二人を守らねば!!」「って言っても、防御壁崩したら電気地獄で丸焦げよ!?」 ラミッタの言う通りだ。助けようにもこちらが倒れてしまっては元も子もない。「待ってなさい、この程度の魔法、私が相殺してあげるわ」 ミネスはマッサとスフィンの元へと高速で飛び、追い付く。「さぁ、もう逃げられないよ!!」「逃げるのも飽きたな、戦ってやる!!」 スフィンが言って馬を止めて剣を抜いた。「待て、スフィンさん!! 戦うのは試練の塔を突破した後だ!!!」「死んじゃえ」 ミネスは氷のナイフを無数に発射する。 スフィンも手練れなのでそれを剣で弾き、身を守った。「おー、やるね」 余りにも多いナイフに、打ち漏らしが出てきて、顔や足などを掠めて血が滲む。「どこまで耐えられるかなぁ?」 ミネスはナイフを出しながら段々と近づいてくる。「スフィンさん、俺が食い止める!!」 マッサがそう言って割り込もうとするが、彼も氷のナイフ達に悪戦苦闘していた。「それじゃそろそろ逝ってみよー」 ミネス自身がナイフを構えてスフィンへ突進してきた。 そのナイフは腹を突き刺す。 だが、スフィンのではない。「かっ、かふっ」 ナイフは割って
朝を迎え、マルクエンとラミッタが起き出す。 ラミッタは隣にスフィン将軍が居ないことに気付き、しまったと思った。「おはようございますスフィン将軍! 申し訳ありません、将軍より遅くに起きるとは……」「いや、良いんだラミッタ」 怒ってはいない様子なので、ホッとしたラミッタ。続けてマルクエンもテントから出てくる。「おはようございます」「敵が起きているというのにイーヌの兵は随分と不用心なのだな」「いや、まぁ、ははは……」 相変わらずマルクエンに対してはあたりの強いスフィンだ。「おや、おはようございます。飯出来ているんで食べましょうや!」 マッサに言われ、食事を済まし、馬車を走らせ試練の塔へと向かう。「この調子なら明日の朝には着くとおもいますぜー」 荷台に座るスフィンは「あぁ」と短く返し、揺られていた。「あそこに見えるのが試練の塔ですぜー。思ったより早く着きましたなー」「あれが……」 遠くに高くそびえ立つ建造物が見え、スフィンがジッと目を凝らしていた。 そんな時だった。「っ……!! 魔人の気配!!」 ラミッタが突然大きな声で言う。スフィンも膨大な魔力の気配を感じ取っていた。「こりゃ、まずいかもなー」 口調とは裏腹にマッサは真剣な眼差しで空を見る。 遠くからこちらへ飛んでくる影があった。「はぁーい、元気してた?」 奇術師の魔人。ミネスがやってきて、拡声魔法を使って話しかけてくる。「残念ながら元気よ、どこかへ行ってもらえるとありがたいのだけど」 ラミッタがそう返すと、やれやれといったポーズをし、ミネスは話し続けた。「そっちの金髪のおねーさん。ちょっと殺させて貰えないかなー?」 ミネスは自分の事かと剣を引き抜いて構える。「やれ
「まぁいいや。旅の準備だ!! それに仲良くしましょうや!!」 マッサが笑いながら言い。皆を見た。「それじゃ、俺はギルドで馬車の手配と、他に手続きを済ませてきますわー。皆さんは各自必要なものを買っておいて下さいな」「必要なものか」 スフィンはうーんと考えてみる。「小さな街ですが、旅人用に旅の道具の品揃えは良いのでね!」「よし、分かった。行くぞラミッタ」「え? あっ、えぇ、はい!」 いつも買い物はマルクエンと一緒だったので、一瞬ポカンとしたラミッタ。「まさか、私よりもイーヌの騎士と買い物がしたいと?」「め、滅相もありません!! こんなド変態卑猥野郎なんて知りません!」 しょんぼりマルクエンは余計にしょんぼりとしていた。 買い物も終わり、マルクエンとスフィン達はギルドの前に集まる。「いやー、お待たせしました。それじゃ行きましょうか!」 扉を開けて出てきたマッサはニコニコ笑って言った。 マッサの後を付いて街を出る三人。「そういや、マルクエン様とラミッタ様に聞きたかったんですが、試練の塔とはどんな場所だったんですかい?」 その質問に答える前に、かねてから思っていた事をマルクエンは告げた。「そのー。様付けで呼ばなくても大丈夫ですよ。これから一緒に旅をするのですし」「だけど、流石に呼び捨てって訳にもいかねーしなー。マルクエンさんとラミッタさんって呼ばせてもらうぜ!」「そうですね、それで良いです」 勇者と距離が近くなった気がして、マッサも上機嫌だ。「それで、試練の塔っすよ! どんな所なんですかい?」「どんな所かと言っても……。本当に不思議な所でした。無限に続く階段に動く石像。塔の中なのに大自然が広がったりと」「そうなんすか、やっぱ試練の塔ハンパねぇですねー」 そこで口を挟んだのは意外にもスフィンだった。
昼前頃にスフィンは目が覚めた。酒を飲んで寝るなんていつぶりだろうか。 少し痛む頭に、酔い覚ましの魔法を掛けて上半身を起こす。「って、なっ、なあああああ!?」 隣で寝ているマッサに気が付いてスフィンは飛び起きた。「な、何故貴様がここに居る!?」 その大声でマッサは目を覚ます。寝不足のクマができており、フラフラしていた。「おはようございます。何故ってスフィンさんが付き合えって……「私がそんな事言うわけ無いだろう!!!」「理不尽だ!!! 言いましたよ!!! 軍人としての心得を教えるって説教が数時間!!」 説教と言われ、あぁ確かに酒を飲むとよくそんな事をしていたなとスフィンは思う。「そ、そうか。それでも同じベッドで寝る必要は無いだろ!!」「お互い体力が尽きてバッタリですよ。多分」 自分に責があるので、あまり問い詰めることが出来ないスフィン。「……まぁいい」 それだけ言って立ち上がり、部屋を出た。「スフィン将軍!! おはようございます!!」 ラミッタが敬礼をして一階に降りてきたスフィンを迎える。「ラミッタか、どうやら寝過ぎたようだ」「あのー、おはようございます」 マルクエンもおずおずと挨拶をするが、ジッと見つめられ、目線をフンッと逸らされるだけだった。「それじゃ、朝飯っていうか昼飯でも食べましょうかね」 ふわーっと眠そうなあくびをしながらマッサも一階に降りてきた。 四人は椅子に座り、食事をする。「とりあえず。この後は冒険者ギルドに行って、国からの伝令待ちっすねぇ」 ゆで卵の殻を剥きながらマッサが言う。「そうか、分かった」 スフィンは短く言うと、また沈黙が流れた。「スフィン将軍はその……。この国で勇者になれーって言われたらどうします?」「答えは決まっている。ルーサへ帰れるならば私はなんだってするさ」 昼食を終えた一行は冒険者ギルドに向かって歩き始める。 その途中で、慌ただしく走るギルドのスタッフと遭遇した。「あっ、ギルドマスター!! 向かおうと思っていたんですよ!!」「どうした? 俺のことが恋しくなっちまったか?」「それは無いですね」 冷たく言われるマッサ。ギルドのスタッフは「そんなことよりも!」と言葉を続ける。「国から、いや、国と勇者マスカル様からの伝令が届きました!」 その言葉に一同はどんな
「それじゃカンパーイ!」 マッサが酒の入ったグラスを上に掲げると、ギルドに居た冒険者からも乾杯の音頭が返ってきた。「まぁまぁ、スフィンさんもそんな難しい顔しないで。美人が台無しだぜ?」「ふん、うるさい」 そっぽを向いてスフィンはワインを口にする。「……中々、美味いワインだな」 素直な感想を言ったスフィン。気を良くしたマッサは更に笑顔になった。「そうでしょそうでしょ? 料理も沢山あるからドンドンどーぞ!」 冒険者向けの味の濃い料理にマルクエン以外の三人は酒が進む。 やがて、ラミッタは頬を紅潮させ、スフィンも長い金髪を少し乱して酔っていた。「そうだ! いい感じに酔ってきましたし、王様ゲームでもやりませんか?」 マッサがニヤリと笑って言うと、スフィンは顔をガバっと上げる。「王国? イーヌ王国は潰す!!!」「いやいや、王国じゃなくて、王様」「王の首は取る!!」 こりゃダメそうだなと、マッサは笑っていたが、マルクエンは複雑な気持ちだ。「それじゃアレですか? 恋バナでもします?」 マッサがニヤニヤと笑いながら口にする。マルクエンは牛乳を吹きそうになり、ラミッタは顔を更に赤くした。「なーにが恋バナだー? 私は軍人になった時から女としての幸せは捨てた」 スフィンがフラフラになりながらも言うと、ラミッタも頷いた。「それに……。私の手はもう血に染まっている。こんな手で赤子を抱くことは出来ない」「そうっすか? 俺、そういうの気にしないっすけどね」 そう言われ、スフィンはマッサをジッと見つめる。「何すか? 何すか? もしかして脈あり? いやー、モテる男はつら」「いや、仮に軍人でなくともお前は無いな」「あびゃー!!!」 マッサは撃沈し、ショックを受けて大声を出した。 そんなスフィンの隣で、ラミッタは何だかシュンとしている。「どうしたラミッタ?」「な、何でもないわよ!!」 察したマッサが助け舟を出してやることにした。「マルクエン様は、好きになった相手が軍人だったら気にします?」「えっ、わ、私ですか? 私も気にしないですけど……」「ふ、ふーん」 ラミッタはそっぽを向いてマルクエンの言葉を聞く。「ふにゃー、もう飲めない……」 ラミッタは酔ってふにゃふにゃになり、その隣でスフィンはグビグビワインを飲んでいた。「何だ、だらしな
「昔から身体強化は使っていたみたいだけど、あの青いオーラの奴は魔力の消費が特に激しそうね」 ラミッタの言葉にマルクエンは頷いて答える。「あぁ、物凄い疲れるぞ」「身体強化にしろ、光の刃にしろ、宿敵は魔力を100出せば良い所を、120ぐらいで使っているから疲れるのよ」「なるほどな……」 ラミッタの指摘を理解は出来たが、どうすれば良いのかわからない。「まぁ、これは数こなして慣れしかないけどね」「だが時間がないな……」「そうね……」 二人の間にしばし沈黙が流れる。 それを破ったのはラミッタだった。「今、出来ることを考えましょう」「そうだな。ラミッタと連携をしてヴィシソワさんを
「お、お前、生きていたのか!?」 マルクエンは動揺して言った。同じ様に焦るラミッタも言葉を返す。「いや、まって、宿敵、なんでアンタがここに!?」 互いに混乱し、上手く言葉が出て来ない。代わりにシヘンがマルクエンに声を掛けた。「お知り合いなんですか?」「い、いえ、知り合いというか、知ってはいるのですが」「えー、何スか? もしかして痴話喧嘩とかー?」 ケイはにやにや笑いながら言った。マルクエンは顔を赤くして言葉を返す。「いや、決してそんなものでは」 そんなやり取りをしていると、村人が血相を変えて冒険者ギルドに入ってきた。「た、大変だ!! ゴブリンと魔物の群れが村に襲いかかって
女の名がわかった所で、笑顔を作りマルクエンは言う。「シヘンさんですか、よろしくお願いします」「い、いえ、その、マルクエンさんのお国の……」 シヘンは先程言われた国名を忘れてしまい、察したマルクエンがもう一度言う。「あぁ、イーヌ王国です」「そう! イーヌ王国……。ごめんなさい、聞いたことがありません」「そうですか……」 イーヌ王国は決して小さな国ではないので、名を知らぬという事は、よほど遠い地なのか、もしくは本当に死後の世界なのか。「あの、どうしてマルクエンさんは森に?」 シヘンに聞かれ、マルクエンはうーんと悩み言った。「えぇ、とても信じられない話なのですが、気付いたらこ
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」 一人の女が赤面しながら男を指差し言う。 そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』に決闘ではなく、結婚を。プロポーズを受けた。 騎士と魔剣士が剣を構え、対峙していた。互いの背には軍勢が半円状に並んでいる。 一人の名は『マルクエン・クライス』と言い王国騎士の男だ。前髪をかき上げた少し長めの金髪に重厚な白い鎧を身に纏っている。 もう一人は『ラミッタ・ピラ』魔剣士の女だ。肩より少し長めで切りそろえた茶髪に白と茶のヘアバンドをし、黒を基調とした軽装備で、左肩に赤い肩当て。 互いに別の国に仕







