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last update publish date: 2026-04-20 06:11:08

 再生回数、1万回突破。

 いいねの数、3000件。

 コメントが滝のように流れ始めた。

『えっ、何この景色エグい!』

『お化け屋敷とか言われてたけど、めっちゃ綺麗じゃん』

『幽霊も成仏する温泉ワロタ。行ってみてえ』

『てか、ここ今週末空いてるらしいぞ! 空室マーク、まだある!』

 完全にバズっている。

「……キタキタキタ!」

 実加が立ち上がり、拳を天井に突き上げた。

「すげえ勢いだ! インテリ、お前の計算すげえな!」

 翔吾の胸の中で、大きく心臓が跳ねた。

 自分の構築した論理が、これほどまでに目に見える熱狂を生み出している。

 ピコン。ピコン。

 タブレットから、通知音が連続して鳴り響いた。

「予約管理システムからの通知です」

 翔吾の声が、わずかに上ずった。

「週末の空室が……埋まっていきます。1部

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  • 名家の恥と捨てられた娘は、契約結婚先で花開く   434:新しい企画

     夕暮れの光が窓の向こうで何層にも重なり、東京の街並みをオレンジ色に染め上げている。 ホテル・サンクチュアリ最上階の社長室にて、来客用の本革ソファに、理玖と美夕は並んで座らされていた。 理玖が緊張のあまり姿勢を正そうと少し動くたび、柔らかな革が体重で沈み込み、キュッと軋む音が立つ。 座面の反発力は、5歳の子供の軽い体には強すぎた。足が床に届かず、宙ぶらりんになっているのがさらに居心地を悪くさせている。 小夜子はのデスクから離れ、サイドテーブルに置かれたティーセットに向かっていた。 コポポ……とお湯を注ぐかすかな音がする。カモミールとミントの爽やかな香りが、微かに漂った。 小夜子が歩み寄った。2人の前にティーカップを置く。 陶器のカップがソーサーに当たるカチンという硬質な音が、広い部屋に響いた。 理玖は両手を膝の上で重ねて縮こまっていた。(怒られる。絶対に怒られる) 小夜子は普段は優しいが、仕事に対してはとても厳しい。理玖はよく知っている。『小夜子師匠は優しそうに見えても、実はおっかなくてさー』 母の実加が実感を込めて話していたのを思い出す。 怖いもの知らずの実加があれだけ恐れるのだ。どれほど怖いのかと理玖はビクビクした。 けれど小夜子は表情を変えなかった。 向かいのシングルソファに腰を下ろすと、足を揃える。2人を正面から見つめた。「理玖くん、美夕。従業員専用通路は、カードキーを持ったスタッフしか入れない構造になっています。なぜだか分かりますか?」 小夜子の声は一定のトーンを保っている。怖い声ではないはずなのに、理玖は威圧感を感じた。「わかんないです」 理玖は言葉に詰まり、ふるふると首を横に振った。「ホテルには毎日、何百人ものお客様がいらっしゃいます。中には、悪意を持って入り込む人間がいるかもしれません。バックヤードは、そうした外部の人間からホテルの安全とお客様のプライバシーを守るための砦なのです」 小夜子はカップに手を伸ば

  • 名家の恥と捨てられた娘は、契約結婚先で花開く   433

     社長室の内部はとても広かった。 床から天井まである壁一面の窓からは、東京の街並みが一望できる。 夕暮れ時のオレンジ色の光が部屋全体を染め上げて、空中に漂う微細な埃をキラキラと光らせていた。 遠くには、テールランプを光らせて行き交う車の列が見えた。「わあ……! すごいね、美夕ちゃん!」 理玖は思わず窓からの光景に釘付けになったが、美夕は別の場所を見ていた。 部屋の中央には、磨き上げられたマホガニーのデスクが鎮座している。 その奥には、黒革の大きなエグゼクティブチェアがあった。 美夕はデスクの裏に回り込み、椅子の肘掛けを掴んでよじ登った。 小さな体が分厚い革の座面に深く沈み込む。「ふむ」 美夕は満足そうに頷くと、デスクの上に置かれた書類をポンポンと叩いた。「こんごの、じんざいいくせいけいかくについてですが」 おっとりとした、しかし妙に堂に入った口調で架空の経営会議がスタートした。「りくくん。そこにすわりなさい」 理玖は来客用のソファに腰を下ろした。 本革のソファは柔らかく、体がすっぽりと包み込まれる。「えっと、人材育成?」「ええ。きゃくしつのせいそうすたっふの、すきるあっぷが、きゅうむです」 先ほど実加の仕事を見たばかりだからか、美夕の指摘は的を射ている。 理玖はよくわからないまま、真面目な顔で相槌を打った。「そうだな。母ちゃんの掃除はすごかったし」 2人の小さな経営陣は、夕暮れの社長室で真剣な議論を始めた。「みかさんほどのすきるのしゃいんは、あまりいません。ぜんたいのれべるあっぷが、ひつようなのです」「うん。客室、いっぱいあったもんね。いくら母ちゃんがすごくても、全部は無理そう」 ――その時だった。 厚いじゅうたんに吸収されながらも、かすかな足音が聞こえてきた。「…………!」

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    (美夕ちゃん、すごい。あんなに素早く隠れられるなんて、絶対に将来、小夜子おばちゃんより怖い大人になるぞ……) 理玖は、隣で平然としている3歳児のためらいのなさ、判断の早さに圧倒され、ただ感服するしかなかった。「つぎへいくわよ」 美夕は立ち上がり、リネン室のドアをそっと開けた。 廊下に実加たちの姿は既にない。 2人は再び低い姿勢で移動を開始した。 目指すは、ホテルの最上階だ。 だが、サンクチュアリは高層ホテル。階段で登るにはあまりにも階層がありすぎる。「しゃちょうしつにいきたいけど。かいだんでのぼるのは、たいへんすぎね」「エレベーターに乗る? 大人に見つかっちゃいそうだけど」 美夕と理玖が従業員用通路のエリアに戻ると、客室清掃用のサービスエレベーターの扉が開いていた。 中には補充用のタオルやアメニティが積まれた大きなカートが置かれている。 スタッフは別の部屋へ搬入作業に行っているらしく、エレベーター内は無人だ。「ちゃんすよ」 美夕が走り出す。 理玖も慌てて後を追い、エレベーターの中へ滑り込んだ。 2人は大きなカートの裏側に体を丸めて隠れる。「んしょ。てがとどかない」 エレベーターの高層階ボタンは、幼児の手の届かない高い位置にあった。 美夕はもちろん、理玖も背伸びしてみたが無理だった。「ぼくも届かないよ」「それなら……」 美夕は周囲を見渡し、壁際に置かれていたプラスチック製の予備カゴを見つけた。 カゴをひっくり返し、操作パネルの下に置く。 その上に乗ると、彼女は一番上のボタンを迷わず押した。「あっ、なるほど」 理玖が感心していると、ボタンが点灯しエレベーターの扉が閉まった。 上昇を知らせるモーター音が、箱の中に響いた。 胃が持ち上がるような浮遊感とともに、エレベーターは最上階を目指す。 移動中、誰

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  • 名家の恥と捨てられた娘は、契約結婚先で花開く   429:再度の冒険

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