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第5話

مؤلف: 深夜の蝋燭
穂花は「偽装結婚」だと口では言いながらも、それからの2週間は、結婚準備の喜びですっかり舞い上がっていた。

明里の目の前で、迷いなく正人からの着信を切ったことだって何度もあった。

「実らない関係なんて、とっくに終わらせるべきだった」

タピオカのカップを握りしめた穂花は、無理やりふっきれたようでいて、まだ寂しいような声を出す。「正人さんはもあなたも、どっちも素敵。

でも、私と同じ感性を持っていて、私だけを見てくれるあなたに出会って初めてわかったことがあるの。隠さないでいい恋が、どれだけ心強いものなのかって」

そんな穂花のあざとい演技を目の当たりにして、明里は気分が悪くなった。返事をするのも面倒になり、会計をするために席を立つ。

店の入り口に着くと、耳障りな笑い声が聞こえてきた。

「あれぇ、清純派で有名な松田さんじゃない?

下着でも買いに来たの?こんな高級なブランド、あんたに買えるわけないのに?どうせ、パパ活かなんかなんでしょ?」

穂花の顔が瞬時に真っ赤になった。唇を噛みしめ、精一杯反論している。「彼氏に買ってもらったの!パパ活なんかじゃないから!」

「彼氏?」

リーダー格の女が眉をひそめ、冷ややかな目で穂花を見下ろす。「入学してからずっと彼氏がいるって言ってたけど、いつも隠してばっかで写真すら見せてくれないじゃん。もしかして世間には言えないような、薄汚い年上のおっさんとかじゃないの?まじ、笑えるんだけど」

数人に取り囲まれている穂花を、周りの通行人もジロジロと見ていた。

パニックになった穂花がスマホを取り出し、明里に連絡しようとした瞬間、正人が通りかかった。

穂花はわらにもすがる思いで正人に駆け寄り、彼の腕を強く掴む。

「この人が私の……」

「穂花!」

正人は眉をひそめ、怒りを滲ませた。

穂花は目を潤ませて正人を見つめる。「突き放さないで……クラスのみんなが、私はパパ活してるって笑うの……」

正人はその女子大生たちの馬鹿にするような顔を見回すと、穂花の手を取って毅然と言い放った。

「俺は穂花を経済的に支援している者だ。

穂花が何を買おうと、それは本人の自由だろう?それに、根も葉もない噂話をするのは、君たちの育ちの悪さをさらしているようなものだぞ」

「何言ってるの、このおじさん。支援者って言ったって、結局はパパ活と同じじゃん。そんな言い方を変えたって、私たちにはバレバレだよ?」

相手は怯むことなく続ける。「それにさあ、おじさん。その歳なんだから、奥さんいるんじゃないの?支援って言葉使ってるから、不倫にならないとでも思ってる?うちの大学の有名な美人さんが、まさか他人の家庭を壊す泥棒猫だったなんて、びっくりだよ」

遠慮のない嘲笑に、穂花は今にも顔から火が出そうだった。

彼女は怒りと情けなさで正人の手を振り払う。

「私がこんなふうに笑いものにされて嬉しい?満足した?

あなたが早く離婚してくれないから、私がこんなこと言われるんだよ?」

なだめようとした正人の指が穂花の肩に触れた瞬間、穂花はそれをはたき落とした。正人は困惑の表情を浮かべる。

「他人の言葉なんて気にするな。俺たちは、そんな後ろ指を指される関係じゃないんだから」

……

明里は、柱の影からすべてを見ていた。

明里は大きく深呼吸すると、マスクをつけた。平然を装って、近づいて行き、驚いた声を出す。

「穂花?僕が会計して帰ってくる間に何があったの?しかも、なんで泣いて……」

明里が現れた瞬間、我慢の限界に達した穂花は、正人を突き飛ばして明里の胸に飛び込んで泣き出した。

「かっちゃん、やっと来てくれた。みんな、私がパパ活してるって言うの。それに、不倫だって……」

明里は、万が一体に触れられた時にも、中身が女だと気づかれないよう、特殊な肉体補助スーツを着込んでいた。

冷静に穂花を胸元から引きはがすと、女子大生たちに向かって冷酷な眼差しを向ける。

「穂花は僕の彼女だ。今後、穂花に対して出鱈目を言うのは、やめてくれるかな?

でも、僕のとやり合いたいっていうのなら、それでも構わない。泣いて謝ることになるのが誰なのか、教えてあげるからさ」

その場が一瞬にして静まり返った。

女子大生たちは嫉妬と憎しみの表情で顔を見合わせていたが、誰も逆らえなかったため、そのまま逃げ出した。

正人はその場に立ち尽くし、唖然としていた。

今の話し方……どこかで聞いたことがあるような気がする。

しかし、考える間もなく、穂花が知らない男と立ち去ろうとするのを見て、正人は反射的に追いかけた。

「待て!」

明里は挑発した。「清水社長。僕からこの子を奪う気?」

「穂花に関わるなと言ったはずだ」

マスク越しに、明里はこれまで蓄積してきた恨みと憤りをぶつける。

「確かに言われたよ。でも、僕には関係ない。用がないなら、立ち去ってくれるかな?」

それでも動こうとしない正人に対して、明里はさらに一言追い打ちをかけた。

「なんでまだ行かないの?じゃあ聞くけど、清水社長は一体、何の立場で、僕に穂花と関わるなって言ってるの?

恋愛警察?それとも……他人の仲を壊す泥棒?」

緊張感が張り詰め、一触即発の状態となる。

言い返せなかった正人は、声を荒げた。「いい加減にしろ!」

しかし、明里は鼻で笑い、皮肉たっぷりに言い放つ。

「僕と穂花は愛し合っているんだ。なにも、いい加減なことなんてないよ?

もっとも、人それぞれの価値観は違うけどね。だから、清水社長がそう思うんだったら、こっちとしてはどうすることもできないよ」

これは、以前正人が明里の不満を適当にあしらう時に使っていた言葉だった。

今は、明里がそれをそのまま正人に返す。

胸をずっと塞いでいた鬱屈した思いが、ようやく少しだけ晴れていく気がした。
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