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裏も表もない

ผู้เขียน: 靴下 香
last update วันที่เผยแพร่: 2026-09-19 11:15:11

「惠、少し家を空ける。留守を頼んで良いか?」

「っ!? は、はいっ! お任せくださいっ!」

 さて、真人としては当然の声掛けと言うべきか深い意味のない言葉ではあったが惠に対して特別効果のあるものだった。

「あ、あぁ。会わなければならない人がいてな、夜か明日の朝には戻る。日向も連れて行くが、誰も家に残していかないわけでもないから、何か困ったことがあれば遠慮なく相談してくれ、話は通している」

「かしこまりましたっ! どうぞお気をつけていってらっしゃい!」

「う、うむ……? ま、まぁ頼んだぞ?」

 惠の勢いに気圧されつつも、真人は急ぎなのか早足で準備を整えに去っていく。

「よ、よぅし……! 留守をしっかり預かるぞ……!」

 留守を任される。

 それすなわち、家を一時的に預けられるという事他ならない。

 そう、辰巳家に存在許可証を求める惠にとっては一大事であり責任を持ってしっかりしようと決意を新たにすべきことだった。

「え、えぇとまずは……そうね、来客

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     体感時間という言葉があるように、時間の進み方には個人差がある。 個々に差がある中で早瀬恵という女性は極めて速い時間の中に生きてきたと言えるだろう。 あるいは立ち止まる時間を与えられたことがないとも言えるか。考える暇があれば手足をと言われてきた弊害とも言える。 重ねてではあるが、辰巳家はそこまで大きな家ではない。 蓄えた、あるいは培われた力の量に比例して、権力を誇示するかのように敷地を広げていく早瀬家とは対照的に、辰巳家は力をつける毎に小さくなっていった。 それは一つの拠点とも言える場所を多くの場所に作っているためだ、一か所に集合するメリットが薄い。 日本各地の動向を調べるため多くの場所に巣とも言える場所を作り人を配置する。 故に、究極的に言えば真人の住む家がそれこそ夫婦だけで完結してしまうくらい小さな家になったとなれば、それは巳神の力が日本各地に十分浸透した証左と言えるだろう。「これで大丈夫、ね」 ようやくと言うべきか、納得できる出来栄えに惠は胸を撫でおろした。 惠がこれくらいやって当然と思っている状態のハードルが高すぎることを理解してしまった男衆はひきつった笑いを浮かべていたが、それはともかくとして。 改めて体感時間である。 終始引きつり笑いを浮かべていた男衆の表情が示したように、辰巳家の庭の手入れは小さいと言えど一人や二人、それも午前中に終わらせられる仕事ではない。「後は何をしておくべき、かな」 そういった家事に分類されることが得意が故に早く終わらせられると言った面はもちろんだが。 惠にとってはやはり、何もしていない時間とは多くの人間よりも遥かに長い時間と感じてしまう。「……え、っと」 それこそ、苦痛と思えてしまうほどに。 茶菓子だなんだと言った用意があることは、台所を扱っている身として知っている。 男衆が入浴している間に家の中は掃除し終わっているし、いつでも誰でも迎えられる状態だ。 家に残っている男衆は風呂に入る前と後で通った廊下の輝きが違うと何度目になるか惠の能力に驚いていたが、それもいい。 存在許可証が発行されるべく焦る気持ちは別として。 スタートラインとも言える何かを超えた惠は今、ミスというものに自覚なく過剰に怯えている。「何、しよう」 残る必要な準備があるとすれば、来客があった場合応対するのは自分であ

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    「惠、少し家を空ける。留守を頼んで良いか?」 「っ!? は、はいっ! お任せくださいっ!」 さて、真人としては当然の声掛けと言うべきか深い意味のない言葉ではあったが惠に対して特別効果のあるものだった。「あ、あぁ。会わなければならない人がいてな、夜か明日の朝には戻る。日向も連れて行くが、誰も家に残していかないわけでもないから、何か困ったことがあれば遠慮なく相談してくれ、話は通している」 「かしこまりましたっ! どうぞお気をつけていってらっしゃい!」 「う、うむ……? ま、まぁ頼んだぞ?」 惠の勢いに気圧されつつも、真人は急ぎなのか早足で準備を整えに去っていく。「よ、よぅし……! 留守をしっかり預かるぞ……!」 留守を任される。  それすなわち、家を一時的に預けられるという事他ならない。 そう、辰巳家に存在許可証を求める惠にとっては一大事であり責任を持ってしっかりしようと決意を新たにすべきことだった。「え、えぇとまずは……そうね、来客に備えて玄関から門を掃除すべき、ね」 俄かに慌ただしく惠は動き始めた。  実のところ惠は留守を任せられるという経験が初めてだ。  早瀬家にいた頃は来客があれば使用人頭であったりと、相応の人間が対応していたし、基本的に日陰で在るべき人間であると教えつけられていたこともあり表に顔を出す機会がそもそも惠にはなかった。「う……そ、そう思えば、気軽にお任せくださいなんて言うべきじゃなかったかも」 早速不安に駆られる惠だったが、改めてここは早瀬家ではないのだと自分に言い聞かせ、不安を振り払うように掃除道具を持って玄関へと足を運ぶ。「さて、と」 早瀬家ほど大きな庭ではない、とは言ってもだが。  10人以上が生活できる大きな平屋の庭は当たり前に広い。  古風な木造の門から玄関までの道のりはおよそ20メートルほどか、左右に広がる庭も含めたのなら一人で手入れするには中々に骨が折れる作業だ。「普段からやっていて良かった、かな? 失礼にはならないと思うけど……」

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     何もしなければ何も変わらない。  これは当たり前と言うべきか真理である。  木に実る果実を食べたいと思ったのなら手を伸ばさなければならないのだ、食べたいと念じただけで手元に果実が転がってくるわけもなし。「辰巳の仕事に携わりたい?」 「は、はい。何かできることがありましたら、是非」 家の掃除を終えた惠は緊張した面持ちで真人に告げた。 何かを変えたいがために行動を。  と言うよりは惠の抱える存在許可証を希求する心の働きによる発言だったが、それだけではない。「ふむ……」 「何卒、ご一考の程をお願い申し上げます」 三つ指をついて頭を下げた惠が纏う服に見合うため。  まだ弱々しい輝きなれど、確かに芯を持つ決意の下での発言であり考えだ。(以前にも同じことを言っていたが……同じ、ではないか。前向きなものであるのならば求めに応じたい気持ちはあるが、家業を、か) 真人自身は、何もしなければ何も変わらないという真理を痛みと共に知っている。  知っているが故に、惠の畳についた指が震えていることにも気づいているし、快く応じてやりたいとも思う。 だがしかし、である。「勘違いしているようだが。先日言った通り、惠に課せられている仕事と言えば俺の子供を孕むことだけだ」 「っ……」 仕事に携わるということは責任を負うということでもある。  惠のような人間を血生臭いとまでは言わずとも、大なり小なり危険を伴う仕事に就けるのには大きな抵抗があった。「新たに仕事を求めずとも良いだろう。古風で時代遅れと思われるかも知れないが、惠には家にいて欲しいと俺は思っている」 好きでもない男の子を孕む、などという重責や嫌悪感だけで十分以上だ。  そんな真人の考えもあるが、何より既に惠が炊事洗濯などしてくれているだけで助かっている現実があった。 十分以上を既に果たしてくれているというのに、これ以上を求めるのは酷であり、傲慢だ。 結論、真人は今そう考えている。「……私が、したいのです

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     羊屋に注文した服が届けばすぐにお披露目会が始まった。  注目されることに慣れていない惠ではあったが、今は羞恥の感情が強いらしく俯き加減だったが。「おー! 似合ってるっすよ! 惠さんっ!」 「そ、そうでしょうか? いえ、こちらの着物はとても素敵なのですが、えぇと」 「いやいや! 惠さんの綺麗な黒髪に白が映えるっす! オヤジのセンスとはとても――」 「俺のセンスがどうした?」 思わずというよりはあえてだろう。  日向の言葉にしっかりと真人は反応して。「後で来い」 「か、勘弁っすよオヤジ! だってほら、テンションあがるっすよこの惠さんを見たらっ! オヤジもそうでしょう!?」 「否定せん。よく似合っている。だがそれとこれとは話が別だ」 「ひえぇ……うぅ、小指でいいっすか?」 「いらん」 日向と真人のやり取りに男衆が笑うが、空気に合わせてそうしているだけで内心では驚き一色だった。 誰よりも先に当主である真人が惠を認めた。  その事実に驚いているのだ、それは日向にしても同じく。(オヤジ……いいんすか?) 意図が掴めないというわけではない。  それなり以上に長い付き合いだ、外側だけでも辰巳家の人間と示す必要性はあったのだから、こうして服を仕立て与えることに異論はない。 無いが、これは真人からの合図としても受け取れるのだ。  各自、惠に対しての態度を改めて考えてみろと言った合図として。(……これから、っすね) 判断を急がされたとは思わないが、これからは警戒と共に、受け入れるという方向性を常に考えるべきだろう。  そんなことを日向や男衆が考えている中、惠は確かめるように。「ほ、本当に似合っていますか? 旦那様」 「ああ。つまらんことで嘘は言わん。本当によく似合っている」 「ほんとう、に?」 「くどいな。それともこれで俺の隣を歩くに相応しいとでも言えばいいか? むしろ俺のほうが負けてそうで悪い気がするが」 真顔で真人は言う。  その様子と、周りがひとまずの覚悟を決め始めたタイミングで。「……素敵な服をありがとうございます、旦那様。大事に、します」 「そうしてくれ。だが、大事にしすぎるな。いつでも新しいものくらい、用意する」 ぎゅっと胸元で手を握り、惠は小さく安堵するように息を零した。 こういった場面でどういう態度を取る

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    「お、お待たせ致しました」「ふむ、来た時の服か。これならば恥をかくこともないだろう」 着替えて玄関にやってくれば、もう一度着替えてこいと回れ右を申し付けられる事三回。 ようやくというべきか、惠は辰巳家へとやって来た時の服を着ることで良しとされた。「恥……あっ、考えが至らず申し訳ありませんでした。旦那様のお傍にいるのでしたらそう、ですよね」「俺のことでない。ないが……そうだな、相応しいとは言えないという意味ではそうか」 使用人服を着た女を連れ歩く男は確かに異様の一言だろうが、真人が言いたかったのはそういう事ではなく。 単に惠が奇異の目で見られないようにという配慮のつもりだった。 しかし、今回の外出目的を考えれば大きく筋を外れてはいないと、やや真人は混乱しつつも無理やり頷くことにした。「えぇと?」「気にするな。行くぞ」「は、はい」 そのあたりの機微を惠はいまいちどころか全く考えを及ぼせられない。 むしろ早瀬家にいた頃は使用人服が私服と言えたような状態だったが故に仕方ないのかもしれないが。 ともあれ。(やっぱり、大きいな) 真人の三歩後ろを歩き始めた惠はそう思った。 共に同じ布団で眠るようになった時にも実感したが、男の背は大きく広い。 この背中に何を背負っているのかをまだ惠は推しはかることができないが、それでも干支神として世の一般男性より大きく重いものを背負っているのだろうということは理解できる。「なおさら、お役に立たないと、ですね」「む? 何か言ったか?」「い、いえ。なんでもありません」「そうか」 惠が抱いた考えはいつもの生存本能から一歩先に進んだところにあるものだった。 自分が脅かされないためではなく、他者の為をもとにした発想だ。成長と言うには彼女に自覚はないが、それでもである。 惠が内心で心を新たにしている一方、真人はむず痒さを感じていた。「大和撫子たるもの男児の三歩後ろを、か」 真人が持つ貞操観念というか、こうあるべきという価値観そのままである構図だったが、どうにも落ち着かない。 実際に体験して初めてわかるとはこのことか、どうにも最近自分には亭主関白は似合わないらしいと感じていた。(だが、命令など論外だ。性に合わん) かといって落ち着かなさを解消するため隣に来いというのにも違和感がある。 こういう時上

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