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アスナと飛鳥とアスカ

Author: をち。
last update Last Updated: 2025-05-03 16:20:56
とりあえず、アスナの設定はこうだ。

アスナは「高位精霊」

実体のないアスナは、自分とそっくりの外見を持ち魔力の相性まで良いレオンハルトを見つけ、その身体を自分のものとしようとしていた。

俺はアスナと交渉し、アスナの身体を魔力で実体化してやる代わりにアスナを俺の従魔にした。

今後アスナは俺の従者として常に俺に付き従うことになる。

元はと言えば、俺関連でこっちの世界に来てレオンに憑りついたともいえるのだが、そこは伏せておく。

前世の云々、ゲームで云々と言ったところでどうせ理解できまい。

アスナを高位精霊とした方が理解しやすいだろうし、レオンに恩も売れる。一石二鳥だ。

アスナにもこの設定を言い聞かせ、余計なことは言わないよう念を押しておいた。

「いいか?前世だとか俺を追ってきたとか言うなよ?言ったら即その身体を取り上げるからな。

お前と俺は今日初めてここで会った。分かったな?」

「えー?じゃあ、『アスカに手を出すな』って言っちゃダメ?」

「手を出されるつもりはないが、お前にそれを言う権利はない。黙ってろ」

「……仕方ない、分かったよ。俺は下僕だしな。アスカに全て従うよ。これでいいだろ?」

肩を竦めて見せる姿は、前世のアスナそのもの。

なんだか妙な気分だな。

言っている内容は別として、まるで昔に戻ったみたいだ。

ふと浮かんだ考えをブルブルと頭を振って吹き飛ばす。

「あのな、確認しとくぞ?見ての通り、俺の外見も性格も前世の俺とは違う。

お前とは違うんだよ。俺は飛鳥ってわけじゃない。前世の記憶があるだけだ。

飛鳥は死んだんだ。分かってるよな?」

「……うん。アスカが思う以上に分かってるよ。言われなくても俺が一番分かってる。…………俺がどれだけ後悔してどれだけ絶望したと思ってるの?」

ブワリ、と黒いものがアスナの身体から立ち昇った気がした。

それは狂気と呼ばれるものなのかもしれない。

あれからアスナは、俺の見たことがないような虚空を生きてきたのだ。

そう思わされた。

前世の俺は、必要以上に俺に執着したアスナと、そんなアスナと俺が親しいことを許せないアスナの親派のお陰でいわれない悪意にさらされた。

重苦しい理不尽な悪意に耐えられず、俺をそんな状況においたアスナを憎み、その周りを嫌悪した。

でも、周りから理不尽な悪意を向けられることさえなければ?

いつかアスナとまた笑いあえる日がきた
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