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第181話

Auteur: るるね
last update Date de publication: 2026-08-05 22:40:55
 由衣は、顔色の悪さ以上に、その姿全体から痛々しいほどの憔悴が滲み出ていた。

 顔には隙のない美しいメイクが施されている。

 全身から漂う疲弊だけは、どれほど丁寧に化粧を重ねても隠しきれない。

 いつも愛らしく、どこから見ても完璧に着飾っていた彼女とは、まるで別人だった。

 ほんの数日しか経っていないというのに、ひと回りも痩せたように見える。

 なめらかだった頬の輪郭はすっかり痩せ細り、もともと大きな瞳は、その痩せた顔立ちによってさらに大きく映っていた。

 目だけが異様なほど印象に残り、見る者へ得体の知れない恐ろしささえ抱かせる。

 慎一を囲んでいた人々の間から、小さなどよめきが広がった。

 好奇心を隠しきれない男が一人、慎一の表情をうかがいながら遠慮がちに尋ねる。

「朝倉社長、綾瀬さんはどうしてこちらに……?」

 紗月も少し離れた場所に立つ由衣へ目を向けた。

 由衣も会場にふさわしいカクテルドレスを身にまとい、手には招待状らしきものを握っている。

 大きな瞳は慎一だけを真っ直ぐ見つめていた。

 周囲から向けられる囁き声も視線も、何一つ意識していないようだった。

 慎一は驚いた様子を見
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     慎一なりに、意識して声音を和らげているのだろう。紗月にもそれは伝わっていた。 それでも彼がこうした話を口にすると、また何かの取引を持ちかけられているようにしか聞こえない。 由衣に舞い込んでいた仕事は、質も量もヴァレンティス・プロダクションの中で群を抜いていた。 慎一ほどの立場にいる男にとっては、それらの仕事でさえ、大した価値はないのかもしれない。だから、こうして何のためらいもなく譲ると言えるのだろう。「……どうして?」 紗月が聞き返すと、慎一は喉の奥で小さく笑った。「綾瀬が芸能界から干されることは、最初から決まっていた。会社として正式に関係を切るには時間がかかる。手を出さずにいたのは、そのためだ」 慎一は紗月の手に自分の手を重ねたまま、淡々と言葉を続ける。「今の事務所には、ほかに重点的に売り出す予定のタレントはいない。紗月、お前は女優になりたいんだろう。その気があるなら、ヴァレンティス・プロダクションで引き受ける」 慎一が芸能事務所を立ち上げた理由には、もともと由衣が関係していたはずだった。 詳しい事情までは紗月も知らない。 朝倉グループは数多くの事業を展開していたが、芸能界へ進出したのはヴァレンティス・プロダクションが初めてだった。その事務所が最初に契約したタレントも由衣である。 当時、慎一はあれほど由衣を高く評価していた。 そう思うと、何もかもがひどく滑稽に思え、紗月は思わず小さく笑う。 重ねられた手を引こうとした。 慎一は逃がすまいとするように、反射的にその手へ力を込める。 紗月の心は、それでも少しも動かなかった。 確かに、かつて諦めた夢をもう一度追いかけたいと思っている。 紗月が望んでいるのは、自分の意志で、自分のやりたい芝居をすることだった。 有名なスターとして祭り上げられることではない。 由衣とは違う。 由衣が追い求めていたのは、人気と地位、誰もが羨む華やかな世界だった。 紗月が求めていたのは、眩いスポットライトでも、華やかな名声でもない。 ただ、自分が心から演じたいと思える役を演じ、その人生を生き抜くことだけだった。「慎一、私はヴァレンティス・プロダクションへ入ろうなんて、一度も思ったことはない。それに、あなたの力で仕事をもらうつもりもないわ」「そうか」 慎一は淡々と頷いた。 そのまま話を切り上

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