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暗殺騎士と弾丸⑤

Author: 当麻月菜
last update publish date: 2025-11-09 21:42:41

 やめろと言われたけれど、ツグミは強引にエルベルトに”跳躍強化”と”速度増加”と”ステルス”の魔法を付与した。

 今更、隠す必要がないというのもあったし、少しでもエルベルトの負担を減らしたかったから。

 おかげでエルベルトは、誰にも気づかれることなく夜の街を颯爽と走り抜けている。

 軽やかに屋根を伝い、軽々と塀を飛び越えていく、その足取りは、まるで背中に翼があるかのように。

 ツグミはというと、情報過多のため、ぼんやりと流れていく景色を見つめている。

「もうすぐだ」

 足を止めることなく、エルベルトは独り言のように呟いた。

 辺りを警戒しているのだろう、声は鋭く聞き取れるか聞き取れないかわからないくらいのものだった。

 それに応えるように、ツグミは声を発することなく頷く。

「傷に響くかもしれないが、堪えてくれ」

 エルベルトがツグミを強く抱きしめた途端、腕が一層強まった。

「……っ……痛っ」

 予告されたとはいえ、ふわりと身体が浮いた後の衝撃は、思っている以上だった。耐え切れず、ツグミは呻き声を出してしまう。

「す、すまない……!」

 エルベルトはツグミの頬に手を添えると、まるで自分
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