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爆弾処理班の夫、救ったのは妻じゃなかった
爆弾処理班の夫、救ったのは妻じゃなかった
Penulis: マリモ

第1話

Penulis: マリモ
私の夫の小野達也(おの たつや)は、とっても腕のいい爆弾処理の専門家。でも、人の顔を認識できない、重度の相貌失認を患っていた。

結婚式では、大勢の招待客の前で友人代表とキスをして、花嫁の私を置き去りにした。

出掛けるたび、案の定、別の女の人を私と間違えて家に連れて帰ってくる。

周りの友達は、みんな私をなだめた。

「達也さんの相貌失認は、嘘じゃないと私たちが証明できるよ。あなただけがそういう目に遭ってるわけじゃないし、少しは許してあげなよ」

その日から、私は達也が唯一見分けられる白いワンピースだけを着るようになった。真冬の凍える日でも、他の上着を羽織らなかった。

それにもかかわらず、とある表彰式のインタビューで、家族に述べる予定の感謝が、全てそばにいた女性スタッフに向けられていた。妻である私に気づかなかったのだ。

信じがたい気持ちを抱えながら、それでも家族として彼に寄り添った。

そんな私が彼を諦めたのは、何年も達也のアシスタントの和田佳奈(わだ かな)と私が、同時に爆弾を体に巻きつけられる、あの事件がきっかけだった。

爆発までの時間は、容赦なく減り続けていた。

達也が現場に駆けつけてきたが、血で赤く染まった私の白いワンピースを一瞥すると、まるで知らない人を見るような視線を向けたのだ。

「お前は誰だ?俺の妻は、こんな顔じゃない!」

その時、佳奈が声を上げた。達也は、はっとしたようにそちらを振り向いて、驚くほど速く、正確に佳奈の名前を叫んだのだ。

「佳奈!」

……

00:32:56

00:32:55

カウントダウンの数字を見つめながら、私は全身を震わせた。もう、冷静にはいられなかった。

「私よ!本当にあなたの妻だってば!ワンピースが血で赤くなっちゃっただけなの!」

達也は、佳奈の爆弾を処理する手を止めなかった。そして、私の方を振り向くと、怒りに満ちた目で睨みつけた。

「俺の妻のふりをして、何が目的なんだ?お前、犯人グループと口を合わせたんだろ?」

その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。

私のヒーローは、すぐ目の前にいるのに、ものすごく遠い存在に感じられた。

無情に鳴り響くカウントダウンの電子音が、神経をギリギリまで締め付けてくる。

心は、ずたずたに引き裂かれそうになった。

すがりつくようにして、私は自分の香水の匂いを彼に嗅がせようとした。なおも、いつも彼が愛しげに撫でていた、私の長い髪を差し出した。

でも、達也はそんな私を容赦なく蹴り飛ばした。

「いい加減にしろ!俺は騙されないって、何回言えば分かるんだ!」

私の頭は、そばにあった柱に強く打ち付けられて、一瞬で視界が真っ赤な血に染まった。

達也は、そんな私に見向きもしなかった。彼はすぐ佳奈のもとへ駆け寄り、心配そうに傷の手当てを始めた。

「声がひどいじゃないか。あいつらに何かされたのか?」

佳奈は泣きながらこくりと頷き、達也の胸に顔をうずめた。

昔、エレベーターに閉じ込められたことがあった。その時も、私は必死に達也の名前を呼んで助けを求めた。

でも、風邪で声がかすれていたせいで、彼は私だと気づいてくれなかったんだ。

結局、私は駆けつけたスタッフに助け出されたが、ショックで口もきけない状態になっていた。

それ以来、私は閉所恐怖症になった。

なのに、佳奈はあんなにひどい声になっていたのに、達也は一瞬で、それが彼女だと分かった。

カウントダウンの数字が、確実に減り続けていた。

しかし、達也は助かった佳奈を優しく抱きしめながら、処理班のメンバーに安全確認の指示を出した。

処理班の一人が、まだ爆弾を巻かれたままの私を見て、達也に率直な疑問を口にした。

すると、達也の穏やかだった表情が、みるみる険しくなった。

「この程度の爆弾じゃ死にはしません。でも、ああいうなりすましのクズには、いい教訓になるでしょう」

達也の冷酷な言葉を聞いて、私は完全に希望を失った。

最後の力を振り絞って、あるサインを送った。それは、二人だけの約束のハンドサインだった。

達也がじっとこちらを見つめてきたのを見て、私は、やっと気づいてくれたんだとほっとした。

しかし次の瞬間、彼の目には、もっと強い嫌悪の色が浮かんでいた。

「佳奈を脅して、このサインを聞き出したのか!俺の気を引いて、一体どうするつもりだ?」

そして、達也はこちらを睨んだまま、私の指をへし折った。

「ああっ!」

私の悲鳴が響き渡る。その痛みの中で、私はすべてを理解した。あのサインは、私だけのものじゃなかったんだ。

もうすぐゼロになるカウントダウンを見つめながら、私は力なくまぶたを閉じた。

ドォォン――

肌を焼くような激しい痛みが、体中に広がっていく。煙の中で、私は最後の決断をした。

達也なんて男、もういらない。
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