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第787話

Author: 風羽
舞は慕美を抱きしめたまま、胸が張り裂けそうだった。

彼女たちは血のつながりこそないが、心はまるで親子のように深く結ばれていた。

……

舞に引き取られてから、慕美はもう「母のいない子」ではなくなった。

孤独でも、頼る人のいない子でもない。

彼女はみるみる元気を取り戻した。

頬に肉が戻り、目の光も生き生きとしてきた。

笑顔が増えるたびに、澪安は母に感謝した。

慕美があの日の暗闇から、ようやく抜け出してくれたのだと。

だが、退院の日が近づいても、澪安は彼女を周防本邸に住まわせようとはしなかった。

「ふたりで暮らしたい」と言い張り、自分の別荘へ連れて行くことにしたのだ。

ちょうど舞は願乃の結婚準備で忙しく、深くは止めなかった。

三月の終わり。

慕美は退院し、澪安の別荘に移り住んだ。

二人の関係は、以前のような緊張やすれ違いは薄れ、少しずつ修復されていた。

慕美ももう、泣きながら部屋に閉じこもることはなかった。

家では料理を習っていたが、味も形もまだ不格好。

それでも、澪安が帰宅するたびに、彼が見るのは彼女の明るい笑顔だった。

――それだけで十分だ。

そう思う。彼女はようやく前へ進めたのだ。

夜、彼らは同じベッドで眠る。

慕美は流産のあとで、しばらくは身体を大事にしなければならなかった。

若い澪安には、それは酷なことだった。

抑えきれない夜もあった。

それでも、彼は彼女を抱きしめ、唇を重ねるだけで済ませる。

そして最後は冷たいシャワーで頭を冷やすのだった。

二日後は、願乃と彰人の結婚式。

その前夜、友人の宴司から電話が入った。

「彰人のやつに最後の独身夜をくれてやろうぜ。送別会だ」

澪安はソファに腰をかけ、スマホを耳に当てたまま、庭に目をやる。

ガラス越しに見える慕美は、薄い翠のワンピース姿。

長い黒髪を背に流し、花に水をやっている。

陽の光を浴びて輝く白い肌――彼女は、まるで春そのもののように美しかった。

澪安の口元に自然と笑みが浮かぶ。

「お前、彰人とそんなに親しかったか?どうせメディアグループの仕事を取りにいく魂胆だろ」

電話の向こうで宴司が笑う。

今、舞は完全に手を引き、メディアグループの運営は彰人がほぼ仕切っている。株の半分は願乃が持っている。

つまり彰人は、才腕ある「妻の部下」だ。

電話の
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