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【エピソード02〜偽物の夫婦〜】

Penulis: 水沼早紀
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-15 14:55:23

✱ ✱ ✱

「さ、入ってくれ」

「お、お邪魔、します……」

 うわ、大きいお家だな……。広さどのくらいなのかな……なんて考えてしまうほど、爽太さんのお家は大きかった。

 爽太さんの家に招かれた私は、爽太さんから「紅音、これにサインしてくれ」と一枚の紙を渡された。

「……あ、はい」

 渡されたそれは婚姻届で、私はそれにサインをした。 私の保証人の欄には、職場の人にサインしてもらうことにした。

「紅音、君に伝えなければならないことがあるんだ」

「え? 伝えなければ、ならないこと……?」

 それは何なのだろうか……。まさかまた何か、あるのだろうか……。

「この結婚だが……。この結婚は契約結婚だ」

「け、契約、結婚……?」

 一体どういうことなのだろうか……。契約結婚……?

「俺との契約結婚の期間は、明日から二年だ」

「二年……?」

 私たちは二年間だけの、夫婦ってこと……?

 契約結婚……。どうして、契約なのだろうか……?

「俺たちは明日、ニ年間の夫婦になる」

「ニ年……ですか」

「そうだ。 ニ年間の゙期間限定夫婦゙だ」

「き、期間限定夫婦……ですか?」

 期間限定夫婦って……。結婚にそんなワードはさすがに聞いたことはないけど、まあいいか。

「明日、お前の借金も全部俺が返済しておいてやる。そうすればお前は、これから借金取りに追われなくて済むだろう」

「……ありがとう、ございます」

 そして爽太さんからもう一つ、結婚するための条件を出された。 それは【子供を作らないこと】だ。

 ニ年間だけの結婚生活を送る上で、子供は絶対に作らないことを契約された。

 私は借金を返済してもらう代わりに、その条件を全て飲んだ。 生きていくための手段として、それを了承したのだ。

「……爽太さん。これからニ年間、よろしくお願いします」

「ああ。よろしくな」 

 そしてその日は、偶然かは分からないけど私の誕生日だった。 25歳になったばかりの日に、こんなことになって、正直戸惑ったりもしている。

 だけどその日から私は、爽太さんの゙妻゙としてこの小田原家にやってきた。

 最初はどうなるのかわからずおどおどしていたが、徐々に小田原家にも慣れていった。 

 それから半年が過ぎ、私はこうして爽太さんと夫婦として楽しく過ごしている。

 爽太さんのおかげで、毎日の生活が楽しくなった気がした。 爽太さんがいてくれるから、今の私がいる。

 爽太さんに出会ったから、私は今こうして毎日を生きていける。 一度は絶望の淵に立たされて、地獄のような毎日を送っていたのに、縁とは不思議なものだ。

 こんな私にも、地獄から抜け出せる日が来るなんて思いもしなかったし、あの時は。

 だけど今は、夫婦としてこうして普通に生活出来ていることを本当にありがたいと思う。

 結婚して半年が過ぎて、私はちょっとでも爽太さんのことを知りたいと思うことも多かった。

 結婚してすぐの時、爽太さんから形だけでもと言われてもらった結婚指輪が、爽太さんからもらった初めてのプレゼントだった。

 私もそうだし、爽太さんもちゃんと結婚指輪を左手の薬指に付けてくれている。

 それを見るだけで、本当に爽太さんの妻なんだと実感してしまう。

 ニ年間だけの短めの期間限定の夫婦だけれど、そのニ年間を少しでも夫婦として楽しみたいとも思っている。

 離婚を前提に結婚したわたしたちは、他の夫婦とはちょっと違う夫婦だ。 期間限定でニ年後には離婚をする夫婦なのだ。

 それでも私は、爽太さんと過ごすこの夫婦生活が充実していると実感している。

「明日、紅音休みだろ?」

「はい」

「俺も明日は早上がりなんだ。よかったら、明日、二人でディナーでも行こうか」

「はい」 

 こうしてする夫婦としてのデートも、今だけは楽しみたいな……。どのくらいデート出来るかもわからないし。

 今思うと結婚して初めてのデートの時には、私はあまりにも緊張してしまって体調を崩してしまったっけ……。

 とても心配してくれた爽太さんは、私を病院まで運んでくれて……。確かその時の病院、錦(にしき)総合医療センターだったな。

 あの時はびっくりしたっけ……。錦総合医療センターの加古川っていう救命医の先生と、まさか爽太さんが知り合いだったなんて……。

 テレビでもよく出てくる病院だったこともあり、あの時はびっくりしたことを今でも鮮明に覚えている。

 加古川先生の奥様も色々あったみたいで、奥様が死のうとした所をたまたま加古川先生が助けたことがきっかけで、加古川先生たちも結婚したと確か聞いた気がする。

 その時ちょっと思ったのは、境遇というか、なんか私たちと少し似ているなと思った。

 爽太さんが言うには、加古川先生の奥様はとても可愛らしい人で、とても旦那様思いらしい。 そんなに旦那様のことを愛せるなんて、羨ましいとさえ思った。

 それに比べて私たちは、ニ年という期限付きの夫婦だから、そんなに長くはいられないのだ。 だから思いを強くしてはいけないと、そう常に心に言い聞かせている。

「紅音、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 朝いつも通りに爽太さんを見送った私は、家事を済ませてから仕事へと向かう。

 そして夕方になったら帰宅して、夫のために夕飯を作る。

 毎日夫婦で一緒に夕飯を食べることは日課で、残業で必ず帰りが遅い時も、爽太さんは帰ってからちゃんと夕飯を食べてくれる。

 今は家賃4万5千円ほどで住んでいたアパートに比べるとだいぶ裕福な生活だ。 キッチンも広くて、冷蔵庫も大きくて、お風呂もとても広くて……。しかもお風呂なんか、ジャグジー付きだ。

 借金を抱えて生きてきた私にとっては、裕福すぎるくらい贅沢な生活だった。 毎日美味しいものを食べることが出来て、そして暖かいお風呂に入ることが出来る。

 夫婦で寝るベッドなんかキングサイズでとても大きくて、夫婦二人寝るのには広すぎるくらいに感じるのだけど。

 だけどその反面、私は今まで貧乏な生活をしてきたから、こんな裕福な家庭で育ってきた人たちが羨ましくも感じた。

 うちは貧乏だったから、家族みんなでご飯を食べるのもやっとだったのだ。 学費なんてものも払えないから、結局親に言われて学校も辞めるしかなかった。

 お金がないと生きていけないのは、本当なんだな。 爽太さんの家は裕福だったから、きっと何一つ苦労なんてないんだろな……。

 たまに、自由に生きてきたのかなって思う時がある。

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     それから何日か経ち、私はCTやMRIなどを取り異常なしと判断され、一週間ほどで退院した。「退院、おめでとう」 病院の入口で、加古川先生と奥様の美乃里さんが、見送ってくれた。   「ありがとうございます。……色々とお世話に、なりました」「これからも、何かあったらいつでも来てください」「退院、おめでとうございます」 美乃梨さんからも言葉をもらった私は「ありがとうございます」と言葉を返した。「加古川、本当にありがとう。……美乃梨さんも、あの時はありがとう」「ご無事で何よりです」「また何かあったら、連絡してくれ」「ああ。……行こうか、紅音」「はい」 私たちは二人に改めてお礼をしてタクシーに乗り込み、自宅へと帰宅した。「ただいま」「おかえり」 一週間ぶりの自宅は、とても懐かしい感じがした。ディフューザーのいい香りが漂うリビングに来ると、帰ってきたんだなって思う。  その時、後ろからギュッと爽太さんが抱きしめてきた。 「……え?」「寂しかった……紅音がいなくて」 そう言われた私は、「爽太さん……?」と問いかけた。「お前がいなくなったらって思ったら、俺たまらなく不安になったんだ。 お前がこんなにそばにいないだけで、こんなにも不安なるなんて……思わなかった」 爽太さんは私をさっきよりも強く抱きしめた。「爽太さん……心配させて、ごめんなさい」「紅音……本当に無事で良かった」 私たちは少し見つめ合って、爽太さんからの甘いキスをもらった。  私はそっと目を閉じて、自分から爽太さんの首に手を回した。「……爽太さん、好き……」 この関係でいられるのも、後一年しかない。 後一年しか、ないんだよね……。  後一年で、私たちは離婚して夫婦としての役目を終える。……それまでは、この幸せを噛み締めていたい。     夫婦として生活していく中で、私はもう止められないくらい爽太さんのことを好きになっている。  実際にこうなってみて、さらにその想いが強くなっていくのが分かったんだ。「……私、ずっと一緒にいたい」「紅音……?」「ずっとずっと、爽太さんと一緒にいたい」 そうやって気持ちを伝えるのは、いつも怖い。……だけど言わないまま後悔をしたくないんだ。「……紅音」「こんなこと言って困らせてしまうことは、分かっています。……でも爽太さ

  • 私たち期限付き夫婦でしたが愛に包まれ最高の愛を手に入れました。   【エピソード10~これは奇跡だ~】

    「……んん……。ん……?」     ふと目が覚めると、見えた景色は白い壁に白いカーテン。……そして私の手を握ったままうつ伏せで眠っている姿の、爽太さんだった。 ここって……病院……?  え、爽太さん? なんでここに……?  あれ、私……なんで病院にいるんだっけ……?  ふと自分の姿を見ると、腕にはたくさんのかすり傷があった。そして頭には、包帯らしきものも巻いてあった。  自分のその姿を見て、自分がどういう状況なのかもまだ理解出来ていなかった。   「……爽太、さん……?」「あ……かね? 紅音っ!?お前、目が覚めたのか……!?」 爽太さんは私を見て、驚いたような顔をしている。「ここ、病院ですよね……? なんで私、ここに……?」 自分でもあまり覚えていない。事故に遭ったということだけは、分かるけど……。  だけど薄っすらと覚えているのは、買い物帰りに子供が道路に飛び出していて、咄嗟に体が前に出た……ということだけだ。「紅音……お前、無茶するな。……心配しただろ、バカ」「ごめんなさい……。心配かけて……」 爽太さんはそんな私を見て、泣きそうになっていた。「……良かった。本当に、無事で……良かった」「爽太、さん……私、生きてるんですね……?」「当たり前だろ?……優秀な救命医が、助けてくれたんだ」 優秀な……救命医? それって……加古川先生のこと?「……良かった。私、生きてて良かったっ……」 そう思うだけで、涙がこぼれた。生きてて良かった。……今本当に、そう思う。  こうしてまた爽太さんの顔を見ることが出来て、爽太の声を聞くことが出来たことは、まさに奇跡とさえ感じた。「紅音……。頼むからもう、これからはあまり無茶するな。 お前に何かあったら、俺……不安になるだろ」「はい。……ごめんなさい」 私、どのくらい眠っていたのだろうか……。たくさん爽太さんに迷惑かけちゃったんだな。「でも本当に、良かった。……また紅音にこうやって触れることが出来て、良かった。安心した」 爽太さんは私の頬を撫で、おでこをコツンとくっつけてきた。「……爽太さん、心配かけて、ごめんなさい」「いいんだ。……紅音が生きてさえくれれば、それでいいんだ」 その言葉に嬉しくて、私は爽太さんに抱きついた。「オホン……。イチャついてるとこ悪いが、ちょっと確認

  • 私たち期限付き夫婦でしたが愛に包まれ最高の愛を手に入れました。   【エピソード09〜予期せぬ出来事〜爽太SIDE〜】

     その日も仕事を終えて帰宅する途中だった。 突然俺のスマホの着信音が鳴り響いたのだ。  電話の相手は、医者の知り合いの加古川凜人(かこがわりひと)だ。  俺はアイツから電話なんて珍しいな、なんて思いながら俺は電話に出た。「もしもし、加古川? どうした?」   「小田原、大変だ!お前の嫁が……!」「……え、紅音がどうした……?」     紅音に何かあったのか?なんて思っていた時、次の瞬間に加古川から聞こえてきたのはーーー。「お前の嫁が、車に轢かれて意識不明の重体で救命に運ばれてきたっ……!」 と言う加古川の焦ったような声だった。「……え?」 紅音が、車に轢かれた……? 意識不明の重体……?  え、なんだって……!?「早く来い!紅音さんの命が危ない……!」「わかった。……すぐ行くっ!」 俺はそこでタクシーを呼び、すぐに加古川の働く錦総合医療センターへと向かった。  病院に着いた俺は、すぐに加古川のいる救命へと走った。「あの、紅音は……。紅音は……!?」「小田原紅音さんの、ご家族の方ですか?」 そう看護師から聞かれた俺は「はい。そうです……!」と慌てて答えた。「こちらです!」 と案内された場所へと走った。その後すぐ、処置室から加古川が出てきた。「加古川……! 紅音は……紅音はっ……!?」 俺は焦りからか、加古川の服を掴んだ。「落ち着け! 紅音さんは車に轢かれたショックで頭を強く打ち、ショック状態になっている。 脳の中で出血が起こっている可能性が高い」「そんな……」 このまま、紅音は死ぬっていうのか……? そんなの、絶対にイヤだ……! ちゃんと紅音と気持ちが繋がったって言うのに……!「頼む!紅音を助けてくれっ!」「紅音さんは危険な状態だ。すぐに緊急のオペが必要だ。……だけどオペをするには、家族であるお前の同意が必要だ」 そう言われた瞬間、処置室からチラッと見えたのは……。  衣服に血がついていて、腕や頭に傷のある状態の紅音の姿だった。「紅音……」 紅音が死ぬなんて絶対にイヤだ……。「小田原、一刻を争うんだ! すぐにオペをしない と、紅音さんは助からないかもしれない」「……加古川、頼む! 紅音を助けてくれ!なんとしても、助けてくれ!」 俺は加古川にすがりついた。紅音を助けてほしいという気持ちが強かったか

  • 私たち期限付き夫婦でしたが愛に包まれ最高の愛を手に入れました。   【エピソード08〜予期せぬ出来事〜】

    「おはようございます」 「おはよう、小田原さん」 それから結婚してあっという間に一年ほど経った。相変わらず結婚生活は、何一つ変わらない。 仕事へ出掛ける爽太さんを見送り、私は家事をこなしてから薬局の仕事へと出かける。  朝10時から夕方16時まで勤務し、休憩を一時間を取る。 納品された化粧品や日用品などをチェックし、在庫の確認をする。 その他レジ打ち、お客様への案内、店内の商品の清掃などを日々こなしている。 この仕事についてもう五年になる。今でこそ時短勤務になったけれど、元々はフルタイムで朝から晩で働いていた。 結婚してからは、時短勤務になってしまったけれど、私はこの仕事が大好きだ。「小田原さん、冷蔵と冷凍の温度チェックお願いします」「はい。行ってきます」 ニ時間に一回、冷凍コーナーと冷蔵コーナーの温度チェックを行うのも大事な仕事だ。 規定の温度に保たれているかチェックし、もし温度がプラス・マイナス三度以上ずれていたら、上司に報告しなければならないという義務がある。「佳奈美さん、温度チェックOKです。特に異常なしです」「了解。ありがとう」 上司である佳奈美さんに「はい」と返事をしてから、私は陳列の確認と賞味期限チェックを行う。「小田原、賞味期限チェック入ります」「はい。お願いしまーす」「上原、小田原さんのフォロー入ります」  インカム越しにそう伝え、食品コーナーの確認をする。 日用品だけでなく、食料品も取り扱っているため、食品の賞味期限チェックも忘れてはいけない。  もし期限が近いものや在庫処理をしなければならない時には、なるべくロスを避けるために値引きシールを貼らないといけないのだ。 ロスをなるべく出さないようにするための活動とでも言うのだろうか。「えっと……。今日は野菜とお肉と、ヨーグルトと……後は」  これを一つ一つ確認していくのは、すごく手間がかかるし、大変なのだ。 リストを見ながら一個一個確認しないとならないし、漏れが出てしまったりしたらお客様が間違って購入してしまう可能性もあるので、集中力が必要なのだ。「お待たせ、小田原さん!」「いえ、大丈夫です。 まずは野菜コーナーとお肉コーナーからですね」「じゃあ始めましょうか」「お願いします」 先輩スタッフの上原さんと一緒に、賞味期限チェックをリストを

  • 私たち期限付き夫婦でしたが愛に包まれ最高の愛を手に入れました。   【エピソード07〜繋がる身体と心〜】

     思えば初めて結婚したあの時から、私はずっと爽太さんの人柄に、その優しさに惹かれていたのかもしれない。 最初は無愛想な人だと思っていたけど、全然違っていた。 一緒に生活する中で、私は爽太さんの優しさに気付いては嬉しくなって、ドキドキしたり恥ずかしくなったりしていた。 いつから好きだったのかなんて、分からないけど……。 だけど私は今、夫である爽太さんに惹かれている。好きで好きで、仕方ないんだ。「爽太さん……んっ、っ」 家に帰るとすぐ、爽太さんから激しい口づけを交わされる。 爽太さんは口づけをしながら、そのまま私が着ていたワンピースのチャックを下ろした。「爽太さっ、ダメッ……」 こんなところでなんて、ダメ……。恥ずかしい。「ひょえっ……!? そ、爽太さんっ……!?」「暴れると落ちるぞ」 「は、はいっ」  かと思ったら、いきなり抱き上げられそのままキングサイズのベッドに押し倒される。「そ、爽太さん……?」 爽太さんの目を見つめると、爽太さんは「紅音、俺は今すぐに紅音を抱きたい。……だから今日は黙って、俺に抱かれろよ」と再び唇を奪われた。「……はい」 その日私は、爽太さんの言う通り素直に爽太さんに身を委ねた。「あっ……爽太、さんっ……」「紅音……っ」 爽太さんの熱い体温に溶かされながら、お互いの吐息が混ざり合うこのベッドの中で、私は爽太さんに甘く激しく抱かれた。「んっ、爽太さんっ……」 爽太さんの名前を呼ぶと、爽太さんは私の唇を激しく奪いながら私を身体をゆっくりと揺さぶっていく。「ん……気持ちいい……」 爽太さんに抱かれるのは初めてじゃない。結婚してからは営みとして、何回か身体を重ねていたから。「あっ、あっ……んっ、はあ……」 だけどこんなに愛のある行為に感じたのは、今日が初めてだった。 今までよりもずっと、深い愛を感じて幸せだと感じている。「紅音、大丈夫か……?」「ん、大丈夫……続けて? もっと爽太さんがほしいの」 だけど同時に、その気持ちが大きくなればなるほど私は不安を覚えていく。「紅音……っ、紅音っ」 「爽太さん……んんっ、あっ」 私はあまりの激しさと気持ちよさに、爽太さんの身体にしがみついて、爽太さんをしっかりと受け止めていく。 「好きだ、紅音……」 「私も……好き、ですっ」   期間限定で結

  • 私たち期限付き夫婦でしたが愛に包まれ最高の愛を手に入れました。   【エピソード06〜伝えたい想い〜】

    「今日はお邪魔しました。ありがとうございました」 夕方になり、私たちは家に帰るために小田原家を出ることにした。「またいつでも来てね?紅音さん」「はい。ありがとうございます」 今日はとても楽しかったな……。美味しい手作りクッキーまで頂いてしまったし。「行こうか、紅音」「はい。では、失礼します」「気を付けてね!」 小田原家を出ると、爽太さんはわたしの手をギュッと握ってくれていた。 爽太さんのこの手の温もり、本当に好き……。温かくて、優しくて、なんか心地よい。「今日は、とても楽しかったです」「そっか。ならよかったよ」「ありがとうございます。連れてきてくれて」 爽太さんにそう言って微笑むと、爽太さんはすぐに目を逸らしてしまった。「……爽太さん?」  今なんで、目を逸らされたのだろうか……? え、私何か気に触るようなことでも言ってしまったのかな……?「……どうか、しましたか?」 心なしか、爽太さんの顔が赤くなっているようにも見える気がするのだけど……。気のせい?「……いや、なんでもない」 爽太さんはそれだけ呟いて、また歩き出した。「っ……爽太さん、あの、私っ……!」  爽太さんの背中に、そう思わず口を開いてしまった。「紅音……?」 不思議そうに私を見る爽太さんの表情は、少しだけ困惑しているようにも見えた。「爽太さん、わたしっ……」   自分でも今、爽太さんに何を言おうとしているのか分かる。 だって私は今、言ってはいけないことを言おうとしている。「紅音……」「爽太さんのことが、すっ……」 その言葉の続きは、言えなかった。だって爽太さんの唇が、私の唇を塞いでいるから。 ちょっとだけ乱暴に塞がれたその唇に、私は思わず目を閉じて爽太さんの手を握りしめていた。 さっき私は、爽太さんのことを【好き】だと、そう言おうとした。 無意識だったのかは分からない。 だけどずっと前から溜めていたその気持ちが溢れて、こぼれてしまいそうだった。「……紅音、頼むからそれ以上言うな」 爽太さんからそう言われたのにも関わらず、私は「爽太さん、好きです……」と溢れる想いを告げてしまった。 もう後戻りは、出来ない。……そう思ったからだ。「……好きです。 爽太さんのことが好きなんです」 そのことで爽太さんを困らせてしまうことは、よく

  • 私たち期限付き夫婦でしたが愛に包まれ最高の愛を手に入れました。   【エピソード05〜小田原家の家族②〜】

     沙和さんからそう聞かれた私は、そう答えた。「本当?ならよかった。 お兄ちゃん結構厳しいとこあるから、もしいじめられたりしたらすぐに私に言ってね?」「あ、ありがとうございます」 そんな、いじめられたりなんて……しないよね……?「おい沙和。お前変なこと紅音に吹き込むなよ」「だってお兄ちゃん、好きな人出来たらいじめちゃうタイプでしょ?」 「え、そうなんですか?」 私はその言葉に、思わず隣に座る爽太さんの方を見た。 本当に? 全然、そんな風に見えないのだけれど……。「おい沙和……! 紅音が本気にするからやめろって言ってるだろ……!」「お兄ちゃんダメだよ。紅音さんのことちゃんと大切にしてあげなきゃ」 そんな兄妹の他愛もない会話を聞いているだけで、なんだかほっこりする。 私にもし兄妹がいたら、こんな風に笑ったり出来ていたのかな……。「沙和、お前楽しんでないか?」 そこに言葉を発してきたのは、爽太さんの弟の爽哉(そうや)さんだ。 爽哉さんはクールな感じで、ちょっとミステリアスな雰囲気がある人だった。「そ、そんなことないよ?」「沙和、同い年だからってあんまり兄貴の嫁をからかっちゃダメだぞ? 一応、小田原家長男の奥さんなんだから」「わ、わかってるもん……!」 爽哉さんは本当に大人びているな……。爽太さんとは二つ違いの28歳で、現在は俳優やモデルとしても活躍している小田原家の次男だ。 長男である爽太さんが私と結婚したことで、本人は自分は結婚しなくて済むから楽なんだと言っているらしい。 だけど俳優さんとして活躍している爽哉さんは、今出演中のドラマの撮影をもうすぐでクランクアップした後、休む間もなくすぐに主演映画の撮影に入るらしく、多忙な日々を送っているとのこと。 俳優だけでなく雑誌のモデルの仕事もあるため、その後も仕事が立て続けに入っているらしい。「じゃあ俺、撮影あるからもう出るわ。 紅音さん、ゆっくりしてって」「ありがとうございます。 お仕事、頑張ってください」「ありがとう。じゃあ」「気をつけるのよ、爽哉!」 仕事に出掛ける爽哉さんをみんなで見送った。「爽哉さん、お仕事お忙しそうですね」「アイツはたまに、撮影後も役を引きずって来る時があるけどな」「え、そうなんですか?」 やっぱり俳優さんだから、演じた役ってなかなか抜け

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