LOGIN「お前はいろいろと都合がいい。ヤクザじゃないし、表向きは真っ当な医者だ。俺がお前と接触を持つ分には、刑事として冒す危険は少ない。それに、長嶺にとってお前は、金も手間も、愛情すらかけている大事で可愛いオンナだ。そのオンナを、俺に抱かせたということは――少なくとも俺を、利用する気はあるってことだ」
熱い吐息をこぼした和彦は、おずおずと自らの下肢に片手を伸ばし、柔らかな膨らみを執拗に攻める鷹津の手の上に重ねる。わずかに力を込めると、その通りに鷹津の手に力が入り、柔らかな膨らみを刺激する。 和彦は、自分が好きな愛され方を、鷹津の手を通して自らに施す。それは自慰のようでもあるが、愛撫を施すのは鷹津の手だ。倒錯した感覚に襲われ、感じてしまう。「長嶺に利用されてやるが、俺もあいつを利用する。今度は、あいつの特別なオンナと繋がっているんだ。……長嶺に従うとなったらムカつくが、お前の番犬になら、なってやる。お前の側にいて、蛇の首に食らいつく機会をうかがうのもおもしろいだろ。どうせ俺は、警察の中じゃ出世の芽もないしな。だったら、儲けが多すっかり硬く凝った胸の突起を、いきなりきつく吸い上げられる。そうかと思えば、濡れた舌先にくすぐるように舐められ、転がされ、軽く歯を立てられた。和彦は喉を反らして震える吐息を洩らし、促されるまま両足を開いて、身を起こしかけた欲望を握り締められた。「あっ、あっ」 軽く扱かれて、爪の先で感じやすい先端を弄られる。ビクビクと腰を震わせて和彦が身悶えると、下腹部から胸元にかけてじっくりと舌を這わされる。 これまで以上に和彦が乱れるのが早いと感じたのか、相手もペースを合わせてくる。濡れた指に内奥の入り口をまさぐられた。 今夜は潤滑剤ではなく、唾液を使って濡らしているようだった。少しずつ内奥をこじ開けられながら、指を出し入れされる。和彦は息を喘がせてシーツを握り締める。他の男たちの愛撫にはない慎重さがもどかしく、そう感じる自分の浅ましさが、感度を高めているようだった。 ようやく指がしっかりと内奥に挿入されたとき、意識しないままきつく締め付ける。相手は巧みに指を蠢かす一方で、反り返った和彦のものをもう片方の手で握り、扱く。前後から押し寄せてくる快感に、和彦は甲高い声を上げて腰を浮かせていた。「うあっ、あっ、んんっ――」 再び欲望の先端を爪の先で弄られ、今度は腰が砕けるように力が抜けた。 思わせぶりに内奥から指が引き抜かれ、片足を抱え上げられる。目隠しをされていて見えるはずもないのだが、相手の強い眼差しを感じることはできた。指で綻ばされてひくつく部分を、じっと見つめられているのだ。 本能的な怯えから身を捩ろうとしたが、その行動を封じるように熱く硬いものが内奥の入り口に擦りつけられた。「あっ……」 和彦が声を洩らしたときには、内奥の入り口をこじ開けるようにして欲望が押し入ってくる。咄嗟に頭上の枕を握り締めて、顔も見えない相手と繋がる。「くっ……ぅ、うっ、うっ、ううっ」 たっぷりの唾液をすり込まれた襞と粘膜を強く擦り上げられ、苦痛が一瞬あとにはゾクゾクするような肉の疼きへと変化していく。 ある程度まで欲望が内奥に埋め込まれると、両足を折り曲げるようにして抱えら
あえて、千尋と引き離されたのだろうか――。和彦はふっとそんなことを考えてしまう。『先生?』「あっ……、聞いている」『いい機会だから、じいちゃんにたっぷり甘えて、いろいろ買ってもらうといいよ。なんといっても総和会会長は、太っ腹だから』「……返事がしにくいことを言うな」 守光に代わろうかと聞いてみたが、あっさりと千尋に断られた。 和彦が携帯電話をポケットに仕舞うと、守光が楽しそうに話しかけてきた。「薄情な孫だな。わしの声は聞きたくないと言ったんだろ?」「そこまでは……。お腹が空いているらしくて、これからラーメン屋に行くそうです」「だったら千尋の分まで、しっかり料理を味わっておこう」 守光の言葉に、座椅子に座り直した和彦はぎこちなく微笑んで頷いた。** 夕食後すぐに、部屋の露天風呂にゆっくりと浸かった和彦は、板の間の籐椅子に腰掛けて、体の火照りを鎮めていた。 外はすでに闇に覆われており、窓から見えるのは、微かな月明かりが生み出す木々の影ぐらいだ。街中で生活していると、これほど人工的な明かりのない夜というのも珍しい。 和彦は改めて、ここは旅先なのだと実感していた。総和会の人間と行動をともにしながら、ずっと肩に力が入っていたが、そのおかげというのも変な表現だが、抱えた問題について考える余裕はなかった。 一人になって落ち着いた今になって、里見と英俊が一緒にいた光景が脳裏に蘇る。見かけたときの衝撃は少しずつ薄まりつつあるが、嫉妬してしまったという事実は、胸の奥で重みを増しているようだ。 首筋を伝い落ちる汗をタオルで拭い、ペットボトルの水を飲む。 いくら昼間は春らしい気候だったとはいえ、夜の山間はさすがに少し冷える。湯冷めする前に、ベッドの上に置いた茶羽織を取ってこようと和彦が立ち上がりかけたとき、前触れもなく部屋の電気が消えて暗くなった。「えっ……」 反射的に洋間のほうを振り返った和彦が見たのは、こちらに近づいてく
そう言う南郷の表情に、一瞬の嘲りが浮かんだのを見逃さなかった。南郷は、虚勢であるにせよ和彦の強気の理由を知っている。長嶺の男たちによる庇護だ。しかもそれを、医者としての腕ではなく、体によって得ているのだ。 和彦は何も言わず背を向け、部屋に戻ろうとする。その背に向けて南郷が声をかけてきた。「あとで、部屋にコーヒーでも運ばせる。俺はあまり気が利く男じゃないが、オヤジさんが戻ってくるまで、しっかり面倒を見させてもらおう」 仕方なく振り返った和彦は、最低限の礼儀として小さく頭を下げた。** 緊張して夕食が喉を通らないのではないかと危惧していた和彦だが、食前酒のワインを飲んでから、生湯葉に箸をつけると、驚くほど食欲が湧いた。 鴨肉のソテーを口に運ぶ頃には気分も和らぎ、つい顔を綻ばせる。すると、正面に座っている守光が口元に笑みを湛えた。「どうやら、口に合ったようだ」 守光の言葉に、そんなに素直に顔に出ていたのだろうかと思いながら和彦は頷く。「美味しいです、すごく……」 この旅館は、食事は各自の部屋に運ばれるのではなく、別棟にある食事処に客が出向き、個室でとる形をとっている。総和会の人間たちも同席するのかと思ったが、現在、個室には和彦と守光の二人だけだ。個室の外に数人の人間が控えており、相変わらず守光の護衛についている。「――南郷から、何か礼を欠いたことでも言われたかね」 豆腐を掬った守光にさりげなく問われ、一瞬動きを止めてしまう。肯定したようなものだった。思わず和彦が苦い顔をすると、守光は声を洩らして笑った。「許してやってくれ。あれは、礼儀作法はしっかりとしているんだが、気になる相手にはどうしても突っかかるような言動を取る。そうやって、相手を見定める――いや、もっと露骨だな。値踏みする」「値踏み、ですか?」「あんたのことが、気になって仕方ないんだ。なんといっても、長嶺の男〈たち〉を骨抜きにしている人だ」 守光から静かな眼差しを向けられ、瞬間的に和彦の体は熱くなる。この場から逃げ出したくなったが、そんな無礼なことができるはずもなく、
「今日の会合は、その花見会の打ち合わせのためだ。いろいろと準備しておきたいものもあるしな。せっかくここまで足を伸ばしたんだから、いつもとは違う人間と一緒に歩きたかった。まあ、あんたにしてみれば、強面のでかい男たちに囲まれて、多少息苦しいだろうが」 ここで頷くわけにもいかず、和彦は曖昧な表情を浮かべる。逃げ場を探すように視線をさまよわせ、再び桜の木を見上げていた。「この世界のことをほとんど知らないぼくが、あなたの隣を歩いていていいのか、という気もします……」「知らないから、いいんだ。わしは話し好きだ。いままでは千尋がいたんだが、あれもすっかりこの世界のことを知った気になって、今ではわしの長い話を聞きたがらん」「千尋らしいです」「これからは、実地でいろいろと覚えさせる時期だ。わしが元気なうちにな」 ここで守光が前方を指さす。茶屋が出ており、すでに総和会の人間が席を取っていた。「少し座って休憩しよう」 守光の言葉に、和彦は素直に頷いた。** 板の間の窓を開け放った和彦は、手すりを掴んで思いきり身を乗り出す。山間にある旅館だけあって周囲を木々に覆われ、自然のカーテンとなっている。 フロントで部屋の鍵を受け取って、きれいに手入れされた庭の小道を歩き、そこから階段を上がり、離れに続く渡り廊下を通るという、少し手間のかかる移動を経て、この部屋に辿り着いた。手入れの行き届いた和洋室で、洋間に置かれたベッドはダブルだ。周囲の環境もあって、落ち着いてゆっくりと過ごせそうだ。 ちなみに、庭を挟んだ向かいに、守光が宿泊する部屋がある。 露天風呂がついているという贅沢な離れの部屋を、すべて総和会で押さえてしまったのは、やはり安全のためだろう。旅館を貸切にしたようなものだ。呼ばない限り旅館のスタッフも離れには近寄らないそうで、渡り廊下を歩く人間は、ほぼ総和会の人間ということになる。 守光はささやかな観光のあと会合に出かけ、先に旅館に戻ったのは、和彦と、護衛としてつけられた男一人だけだ。旅館を出ないでくださいと言われたが、言い換えるなら、旅館内は自由に歩き回れるということだ
和彦はつい穿った見方をしてしまい、一瞬あとには、そんな自分を恥じた。仮にそうだとしても、圧力云々は関係なく、和彦は自分の意思で選択した。「……こんな言い方をしたら失礼かもしれませんが、気分転換をしてみたかったんです。普段生活している場所から、離れてみたかったというか……」「あんたの場合は、複雑な人間関係から距離を置いてみたかった、というところか」 表情の浮かべようがなかった。複雑な人間関係の中には、守光の息子と孫も含まれているのだ。二人から逃げたがっていると受け止められるのが怖かった。 守光はちらりと唇に笑みを刻むと、自分が選んだ団扇と、和彦が手にしていたブックカバーと扇子を取り上げる。「あのっ――……」「わしと一緒にいる間、あんたは自分の財布を出さなくていい。わしの顔を立てるためだと思って、任せてくれ」 ここまで言われて断れるはずもなく、和彦は頷く。しかし、他に何か欲しいものはないかと言われて本気で困った。「遠慮はいらない。あんたはもう、〈わし〉の身内だ」 和彦の背を駆け抜けたのは冷たい感触だったが、同時に、無視できない疼きもあった。 こうして守光に同行して、何事もなく気楽に旅行が楽しめるとは毛頭思っていない。和彦はあることを予期したうえで、それでもこうしてついてきたのだ。 強い力には逆らわず、巧く身を委ねる。守光は、和彦にその姿勢を貫くことを求めており、おそらく試してもいる。 支払いを済ませた守光に袋を差し出され、礼を言って受け取る。和彦はサングラスをかけて店を出ると、今度こそ守光と並んで歩く。 総和会の男たちに四方をがっちりとガードされて歩くと、悪目立ちするうえに、あからさまに奇異の視線を向けられるか、目を逸らされるのだ。居心地が悪くて仕方ないが、守光に〈身内〉と言われてしまっては、否が応でも慣れなくてはならないのだろう。 辺りを睥睨するわけでもなく、ただ慎重に注意を払っている男たちの中にいる自分は、果たしてどんなふうに見られているのだろうか――。 ふとそんなことを考えた和彦は、自嘲気味に唇を
かぶっていた帽子を取った和彦は、髪を掻き上げる。気候のよさのせいだけではなく、春が近づいてきている証拠か、思いがけず気温が高い。歩いているうちにすっかり汗ばんでしまった。 石畳の通りを歩く人たちに目を向ければ、地元住民と観光客の違いが服装に出ているようだ。観光客は持て余し気味にコートやジャケットを腕にかけているが、地元の人たちはすでに春らしい軽装だ。 春が近づいているどころか、ここはもう春が訪れているのだ。 和彦は改めて、ここが旅先なのだと実感する。柔らかな風も、空気の匂いも、見渡せる風景も、何もかもが今暮らしている地域とは違う。 これが一人旅なら、どれだけ肩の力を抜いて楽しめただろうか――。 和彦は深刻なため息をつくと、帽子をかぶり直して歩き出す。有名な寺が近くにあるという場所柄か、通りに並ぶ土産物屋も落ち着いた雰囲気を醸し出しており、店先に出ている商品も、渋いものが多い。 特に何か買うつもりはなかった和彦だが、藍染め商品を扱う店が目につき、ついふらふらと中に入る。サングラスを外してざっと店内を見て回る。 ブックカバーが気に入り、数種類の柄を選んでから、次に扇子に目移りする。いままで扇子など使ったことはないのだが、賢吾がせっかく春に合わせて着物を一揃いあつらえてくれたこともあり、何か一つぐらい、着物に合いそうな小物を自分で揃えてみようかと思ったのだ。 和彦が扇子の一本を手に取ろうとしたとき、隣にスッと誰かが立つ気配がした。「――それは、自分で使うのかね?」 いきなり話しかけられ、飛び上がりそうなほど驚く。隣を見ると、守光が身を乗り出すようにして扇子を眺めていた。さきほどまで、和彦よりずいぶん先を歩いていたはずだが、わざわざ引き返してきたようだ。 店の入り口のほうに目をやると、スーツ姿の男たちがこちらをうかがいつつ、外で待っていた。「あっ、すみません。勝手に動き回って……」「かまわんよ。なんといってもわしは、あんたを〈観光旅行〉に連れてきたんだ。こういうところで買い物をしないと、旅行の醍醐味がないだろう」 守光から悪戯っぽく笑みを向けられ、和彦はぎこちなく応じる。
「あっ、あっ、千尋っ、も、う……、ドアを閉めて、くれ――」 「三田村の仕事を奪ったらダメだよ。その男は、何があっても先生を見守る仕事をオヤジから与えられたんだ。俺が先生に危害でも加えない限り、そうやってただ見守るだけだ」 これが千尋なりの、父親への反抗であり、執着心の表し方なのかもしれない。 バカなガキだと思いながらも、和彦は千尋に対して怒りは覚えないのだ。 和彦は三田村から目を離さないまま、内奥を強く抉られて絶頂に達する。 「うっ、うぅっ、い、い……、あっ、イクぅっ……」 ふっと一瞬、意識が遠のきかける。それぐらい、よ
「……長嶺組との関わりですら荷が重いのに、この間、総和会の仕事をさせられたぞ。お前の部屋にいたところを、お前の父親に踏み込まれたときのことだ。覚えているだろ?」 「うん。――先生、あまり総和会に気に入られないようにしてよ」 「どういう意味だ」 「長嶺組から総和会に、先生が召し上げられる可能性があるってこと」 召し上げられるという表現が気に食わないが、今は置いておく。最近の和彦は、組関係で気になることがあれば、詳しく説明を聞く方針にしたのだ。 「今の先生の存在は、言葉は悪いけど、所有権は長嶺組にあるんだ。だから先生を自由に使える」
「はっ……」 内奥で賢吾のものがドクンと力強く脈打ち、震える。賢吾が獣のように低い唸り声を洩らし、熱い精を放った。和彦は腰を震わせ、歓喜しながら賢吾のものをきつく締め付け、放たれた精をすべて自分の内で受け止める。 「――書くか?」 荒い息を吐きながらの賢吾の言葉に、逆らう術もなく頷いていた。 「いい子だ。それでこそ、俺のオンナだ」 そう言って賢吾が、内奥から自分のものをゆっくりと引き抜いていく。和彦はうろたえ、なんとか振り返ろうとするが、体内に留まり続ける快感のせいで、自由が利かない。少しでも動けば、せっかく育てた快感が逃げていって
エレベーターを六階で下りると、さほど広くないエレベーターホールは電気がついていないせいもあり少し薄暗かったが、廊下に出ると、外からの陽射しをたっぷり取り入れているため明るかった。ビルの前を歩道と車道が通っているが、遮音は万全のようだ。 廊下の先にホールがあり、そのホールに面して六つのドアがあった。かつて入っていたテナントの名残りか、ドアにはプレートが貼ってあった形跡がある。 「前まではこのフロアに、小さな会社が二つ、三つ入っていたらしい。会社として考えると、部屋の一つ一つは手狭だが、このフロア全体をクリニックにすると、広さはちょうどいい。診察室に手術室、安静室に事







