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第29話(24)

作者: 北川とも
last update 公開日: 2026-05-11 11:00:59

「あんたを、長嶺の本宅に直接送り届けなかったのには、それなりの理由がある。わしに――総和会会長に対して、報告の義務を果たしてほしかったからだ。あんたと佐伯家の人間を接触させることに、多少なりと危険を冒したつもりだ。わしも、賢吾も」

 長嶺の男は、甘くはない。

 和彦は、賢吾の表情をちらりとうかがう。守光の言葉に異を唱えなかったということは、賢吾も同じ意見なのだろう。ここが総和会の本部である以上、会長である守光を立てなければならないということもあるだろうが、賢吾もまた、長嶺組組長として組織を背負っている責任がある。

 和彦が頷くと、賢吾に促されてイスに腰掛ける。正面に、賢吾と守光が並んで座ったが、荒々しさを感じさせない顔立ちと物腰の二人から、圧倒されるほどの凄みを放たれ、和彦は息を呑みつつも、改めて実感していた。

 背負い、身の内に飼っている生き物は違えど、この二人は血が繋がった父子で、同じ世界に生きる極道なのだと。

 和彦の緊張を感じ取ったのだろう。賢吾がわずかに唇を緩めた。

「そう、硬くなるな、先生。いつも俺に世間話を
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     さすがに、この申し出を断ろうとは思わなかった。 和彦が守光とともに店を出ると、三台の車が待機していた。総和会の護衛の男たちは辺りに鋭い視線を向けて警戒しており、二人の姿を見るなり、あっという間に整列して人の壁を作り出す。 促されるまま素早く車に乗った和彦だが、助手席に座っている男の姿を認めてドキリとする。後ろ姿であろうが見間違えるはずもない。南郷だった。 今晩は一緒だったのかと、和彦は横目でちらりと守光を見遣る。守光とは電話で話すこともあったが、南郷とは、車で襲撃を受けた翌日に、病院まで付き添ってもらったとき以来だ。 その南郷が振り返り、後部座席の二人に向かって一礼したあと、前方に向かって合図を送る。静かに車が走り出した。 車中は静かだった。無駄な会話は必要ないとばかりに、誰も口を開こうとしない。和彦は静かにシートに身を預けたまま、すっかり暗闇に覆われた外の景色に目を向けていたが、程なくしてピクリと体を震わせた。守光の手が、腿にかかったからだ。 まったく知らないふりもできず、ぎこちなく隣に目を向ける。いつからなのか、守光がじっと和彦を見つめていた。対向車のヘッドライトの明かりを受けるたびに、守光の両目だけがやけにはっきりと浮かび上がって見え、そこに潜む獣の気配を感じ取ってしまいそうだ。 守光の片手がスラックスの上から腿を撫で始める。和彦は、自分の従順さが試されているのだとすぐに理解した。そこに、懲罰的な意味も含まれているとも。 守光の意に沿わない行動を取ったと、和彦には当然自覚がある。鷹津のこと、清道会のこと、御堂のこと。何より、守光を避けてしまったこと――。 強張った息を吐き出した和彦は、何事もないように前に向き直る。守光の手は動き続け、腿の内側へと入り込み、促されるまま足をわずかに開く。 両足の中心にてのひらが押し当てられたとき、さすがに声が洩れそうになったが、寸前のところで堪える。敏感な部分を刺激されながら和彦が危惧したのは、玲との間にあった出来事を、守光に把握されているのではないかということだった。 誰かに見られたわけでもなく、唯一察していた様子の御堂も、あえて守光に報告するはずがない。「――何か、あったのか

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  • 血と束縛と   第4話(18)

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