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第5話(30)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-11-14 17:00:52

「どこにも。ただ、先生を部屋に連れて帰る。そして先生は、風呂に入ってから、ゆっくり休んでくれ」

「だったら今夜は、あんたが護衛をしてくれるのか?」

「――……違う」

 すかさず和彦はシートベルトを外そうとしたが、実行には至らなかった。こちらの行動を読んでいたように、三田村に手を掴まれたせいだ。

「何をするつもりだ」

「見張りがいないなら、ここで車を降りたところで問題はないだろう。あんたは、ぼくが見つからなかったと言えば済むし」

「ダメだ」

「ぼくの護衛でなくなったあんたに、そんなことを言う権利はない」

 子供じみた理屈を言っていると、和彦にも自覚はあるのだ。だが、予測もしなかった形で三田村が目の前に現れ、クラブから連れ出されたことで、どういう態度を取っていいのかわからない。

『――三田村と寝たいか、先生?』

 忌々しいことに、こんなときに賢吾の言葉が脳裏を過る。

 そして、しっかりと手を掴んで離さない三田村は、射竦めるような眼差しを和彦に向けてくる。威嚇しているのではない
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  • 血と束縛と   第1話(11)

     和彦の内奥を的確に指と道具で犯す男の背後に立ったのは、高そうなダブルのスーツをこれ以上なく見事に着こなした中年の男だった。四十代半ばぐらいだろうが、一目見て圧倒される存在感を持っていた。  全身から漂う空気は剣呑としており、それでいて威嚇するような攻撃的なものではなく、ただ静かな凄みを放っている。衰えを知らないような厚みのある体つきに相応しいといえた。何より、彫像のように表情が動かない顔は、冷徹そのものではあるが、端整だ。  だが、容貌はさほど重要ではない。男が持つ独特の鋭さや冷ややかさ、年齢を重ねているだけでは醸せない落ち着きが、男の存在自体を圧倒的なものにしてい

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