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第5話(30)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2025-11-14 17:00:52

「どこにも。ただ、先生を部屋に連れて帰る。そして先生は、風呂に入ってから、ゆっくり休んでくれ」

「だったら今夜は、あんたが護衛をしてくれるのか?」

「――……違う」

 すかさず和彦はシートベルトを外そうとしたが、実行には至らなかった。こちらの行動を読んでいたように、三田村に手を掴まれたせいだ。

「何をするつもりだ」

「見張りがいないなら、ここで車を降りたところで問題はないだろう。あんたは、ぼくが見つからなかったと言えば済むし」

「ダメだ」

「ぼくの護衛でなくなったあんたに、そんなことを言う権利はない」

 子供じみた理屈を言っていると、和彦にも自覚はあるのだ。だが、予測もしなかった形で三田村が目の前に現れ、クラブから連れ出されたことで、どういう態度を取っていいのかわからない。

『――三田村と寝たいか、先生?』

 忌々しいことに、こんなときに賢吾の言葉が脳裏を過る。

 そして、しっかりと手を掴んで離さない三田村は、射竦めるような眼差しを和彦に向けてくる。威嚇しているのではない
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     和彦はゆっくりとまばたきを繰り返し、なんとか賢吾の話を頭に留めようとする。いろいろと考えようとするのだが、思考はどこまでも散漫だ。「……蛇蝎の、サソリ……」「ああ、そうだ。あれは、悪党ってやつだ。暴力団担当の刑事だったくせに、その立場を利用して悪辣なことをヤクザ相手にやらかして、それこそ蛇蝎みたいに嫌われていた。そこで、ある組が鷹津をハメたんだ。かなり大問題になってな、警察の監査室まで引っ張り出して、県警の本部長のクビが飛ぶかという話までいった」 淡々と話す賢吾のバリトンの響きが耳に心地いい。ふ

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  • 血と束縛と   第6話(36)

    「あの――」「すぐに、アルコールを準備しますから、欲しいものがあれば遠慮なく言ってください。なんといってもここは、客に飲ませてなんぼの、ホストクラブですから」 秦にそう言われて、和彦は喉に手をやる。この店についてから、まっさきに水を飲ませてもらったのだが、さらに喉の渇きを覚えた。 興奮しすぎて、体の水分がずいぶんな速さで汗になったのかもしれない。着ているシャツが汗で濡れて、少し不快だ。それでも、空調を入れた店内の空気はゆっくりと冷え始めていた。 和彦がほっと息を吐き出すと、隣に腰掛けた秦に笑いかけられる。「何を飲みます?」

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