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第6話(38)

作者: 北川とも
last update 公開日: 2025-11-24 11:00:13

「迎えにきてくれるのは、先日の花火大会のとき、必死な様子でクラブまで先生を捜しに来た方ですか? 確か、三田村さん……」

「ぼくの本当の護衛です。というより、頼めば、家の片付けすらしてくれるので、世話係みたいなものですね」

「今日は先生についていなかったのは、どうしてですか?」

「最近、本来の仕事が忙しいみたいです。組のトラブル処理に当たっているそうです。ぼくは、組絡みのそういった事情には首を突っ込まないようにしているので、詳しくは知りませんが」

 ワインをグラス二杯飲んだぐらいでは酔わない和彦だが、今日は気が高ぶっているせいか、軽い酩酊感がもう押し寄せてくる。ただ、悪い気分ではない。

 グラスを置き、自分の手を見る。すでに震えは治まっていた。ごく自然な動作で、秦がその手を握ってくる。

「ああ、やっと震えが止まりましたね」

「……すみません。パニックになって、秦さんにご迷惑を……」

「仕方ありませんよ。先生の反応が、普通
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     和彦は声を洩らして笑っていたが、中嶋が律動を再開し、すぐに尾を引く嬌声を上げる。中嶋に抱き締められ、両腕の中で滑る体を奔放に捩って乱れていると、ふいに、内奥から欲望が引き抜かれ、下腹部から胸元にかけて、中嶋の精が飛び散った。「……さすがに、本部に帰る先生の中に、俺の精液を残すわけにはいきませんからね」 息を乱しながらの中嶋の言葉に、納得せざるをえない。「そんなことまで、頭が回ってなかった……」 和彦が率直に告げると、中嶋がゾクゾクするほど挑発的な表情で応じた。「そんなに、気持ちよかったですか?」「気持ちよかった。自分が浅ましい人間なんだと実感させられた。……周りの男たちが大層な扱いをしてくれるから思い違いをしていた。ぼくは、オンナであろうがなかろうが、本来、こういう人間なんだ。プライドが傷ついたなんて発言は、おこがましかったな」「先生は、自分を正しく客観視しようとしすぎですよ。誰も採点なんてしないんだから、気楽に」 中嶋の発言に、正直驚いた。和彦は目を丸くしたあと、苦々しい顔となる。「子供の頃からの癖だな。採点はされていた。――父親から」 まるで慰めようとするかのように中嶋に頬を撫でられたが、ローションがついてしまい、思わず破顔する。 唇を重ね、抱き合いながら、精がこびりついた下肢を密着させているうちに、中嶋を組み敷く格好となる。和彦は、高ぶった欲望をためらいもなく、潤んだ内奥に再び埋め込んだ。** 気だるさと、清々しさをまとった和彦が本部に戻ったとき、すでに日付は変わっていた。堂々の夜遊びだ。 エレベーターを降り、ラウンジの前を通り過ぎようとして、ぎょっとする。誰もいないと思っていたが、ソファの背もたれの向こうで大きな影が動いたからだ。姿を見せたのは南郷だった。どうやら、ソファに深くもたれかかっていたらしい。 和彦が全身の毛を逆立てる勢いで警戒すると、南郷は露骨に頭の先からつま先まで眺めてきた。そして、芝居がかった下卑た笑みを見せた。「わかってはいるつもりだった

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    「なんだか先生、すっかり心配性になりましたね。俺のことは心配しなくても大丈夫ですよ。少なくとも先生のせいで、俺の立場が悪くなることはありませんから」「……感覚がよく掴めないんだ。ぼくの言動が、周囲にどういう影響を与えるか。長嶺組とだけ関わっているときは、まだ平気だったんだ。だけど……」「総和会――というより、長嶺会長と関わると、自分の存在の大きさがわからなくなりますか」「実体や実力以上の影響力を得たようで、怖くなる。ぼくにその気がなくても、誰かを傷つけるかもしれない」 エレベーターが最上階に到着し、先に降りた中嶋が慎重に辺りをうかがってから、こちらに向かって頷く。 秦の部屋は、前回訪れたときからあまり様子は変わっていないように見えた。秦自身が、仕事で出張の多い生活を送っているせいもあるだろうが、中嶋が主に代わってきちんと管理しているのかもしれない。「きれいなままだな」「隣の部屋は覗かないでくださいね。秦さんが、雑貨の商品サンプルを溜め込んでいるんで」 和彦は思わず噴き出してしまう。「すっかり雑貨屋の経営者だな」「こまごまとした商品を扱うと手間がかかると、よくぼやいていますよ。でも、利益はけっこう出しているようです。――どんな雑貨を扱っているんだか」 中嶋から意味ありげな流し目を向けられ、和彦は苦笑で返す。「ぼくは何も知らないからな。秘密主義の男たちが顔寄せ合って相談したんだろうから、探ろうという気にもならない」「先生、隠し事に向かないタイプですから、それでいいかもしれませんね」 いろいろと身に覚えがある和彦は、あえて返事は避けておく。 中嶋を手伝い、買ってきたものをさっそく温め直したり、皿に盛り付けたりして、ラグの上に並べていく。 ハンバーガーにかぶりつく和彦を、中嶋はいくぶん呆れた様子で眺めながら、フライドポテトを口に放り込む。「こういうもので喜んでくれるなら、俺に言ってくれれば、いつでも買ってきて、配達しますよ」「……会長の部屋で、ハンバーガーの匂いをプンプンさ

  • 血と束縛と   第12話(27)

     ああ、と声を洩らして中嶋は苦笑する。怪我をした秦の治療を、和彦に頼んだことを思い出したらしい。 「今になって考えるんですよ。あのときの俺の選択は正しかったのかどうか、と。結果として、秦さんは無事だったし、先生との距離も近くなりましたが……その分、しっかり代償を払ったような気もします」 「君と秦さんとの距離間が、わからなくなってきたか」  中嶋は驚いたように和彦を見て、皮肉っぽく唇の端を持ち上げた。 参ったな……。先生と秦さんが、普段どんなことを話しているのか、すごく気になりますよ。その様子だと、俺のことも聞いているんでしょう?」 「彼の

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  • 血と束縛と   第11話(20)

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