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第72話

Autor: 炭酸が抜けたコーラ
心愛はバス停に立ち、やってくる車を待っていた。湿り気を帯びた風が薄い襟元から忍び込み、彼女は身をすくめて襟をかき合わせる。

そのとき、貴臣の車が目の前を猛スピードで通り過ぎていくのが見えた。助手席に座る葵と、ふと視線が合った気がした。彼女の瞳に宿る嘲りを、心愛ははっきりと見て取る。

なんと滑稽なことだろう。

心愛はゆっくりと背を向け、ちょうど後ろからやってきたバスに乗り込んだ。

マンションの階段のセンサーライトは壊れていた。暗がりの中、手探りで鍵を取り出すが、手は激しく震え、何度も鍵穴を外してしまう。

ガチャリ――

ようやくドアが開いた。

部屋の中は死んだように静まり返り、明かりもついていない。心愛はふらりとソファまで歩み寄ると、そのまま崩れ落ちるように身を沈めた。

手にはまだスマホが握られている。画面には、葵から送られてきた口座番号と、簡潔なメッセージが表示されていた。

【取引成立ね】

おばあちゃん……これでやっと、お金の心配をせずに、あなたを連れて遠くへ行ける。

心愛は無表情のまま、並んだ「0」の羅列を見つめ、貴臣との約束を思い出す。

トレンドの「#明石葵
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