白く焼けたアスファルトが、陽炎の中で揺らめいていた。 耳の奥では、飽和した蝉時雨が鳴り続けている。窓を閉め切った教室の中にいても、その音はどこからか染み込んできて、脳の芯までじわじわと痺れさせた。 汗で肌に張りつくワイシャツの感触が、気持ち悪い。 息をするだけで、体の奥に熱が溜まっていく気がした。 夏。 この季節が、どうしようもなく嫌いだった。 思考も身体も、何もかもが熱に溶けて、輪郭を失っていく。何かをする気力も、何かを考える集中力も、全部まとめて削られていく。 その気怠さの象徴みたいに、教室の窓の向こうには、一つの山塊が横たわっていた。 神鳴山。 ここ、霞沢県にありながら、まるでその美しい名前を嘲笑うかのように、不吉な響きを持つ山。 夏草の深い緑に覆われているはずの山肌は、遠目には黒々と淀んで見えた。 まるで、この世ならざるものが滲み出した巨大な染みだ。 地元では有名な山だった。 ただし、観光名所としてではない。 畏敬の念をもって語られるわけでもない。 今、あの山は人を“招く”。 そんな噂が、町には昔からある。 行方不明者の報せが流れるたび、町の人間は誰も口には出さない。出さないだけで、きっと同じものを思い浮かべている。 あの黒い山。 神鳴山に、喰われたのだと。 「おーい、|輝流《あきる》ぅ!」 背後から聞こえた間の抜けた声に、思考が現実へ引き戻された。 振り返らなくても分かる。 鬼龍院智哉だった。 「……なんだよ」 俺が顔だけ向けると、智哉は机に片手をつきながら、いつも通りの人懐っこい笑みを浮かべていた。 「また随分と気怠そうだな、相変わらず」 「気怠そう、じゃない。気怠いんだ。俺はもともとこういう性質だろ」 「ちがいねぇ!」 太陽みたいに笑って、智哉はそんな俺をあっさり肯定した。 その屈託のなさが、少しだけ眩しい。 こいつはいつもそうだ。 こっちの湿った気分なんてお構いなしに、勝手に明るい場所から声をかけてくる。 「でさ!」 智哉は身を乗り出した。 「今日の約束、覚えてるよな?」 「……一
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