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第 2 話

ผู้เขียน: 常陸之介寛浩
last update วันที่เผยแพร่: 2026-08-09 11:21:07
「ミレーヌ」

クラリスは、妹を呼んだ。

「はい、お姉様」

「今夜の夜会で、ノルヴァルト公国大使夫人には何色の花を贈る予定かしら」

ミレーヌは目を瞬かせた。

「花、ですか?」

「ええ」

「ええと……白薔薇、ではいけませんの? この控えの間にも飾ってありますし、清らかで素敵ですわ」

クラリスは頷いた。

「そう」

ノルヴァルト公国で白薔薇は、和解を拒む時に贈る花だ。

少なくとも、先月届いた大使夫人の手紙にはそう書かれていた。

だが、クラリスはそれ以上言わなかった。

「では、慈善園遊会の寄付金配分について、神殿には何日までに内示を出す予定?」

「内示?」

「正式決定の前に、孤児院と施療院へ冬支度の見込みを伝えるものよ」

「それは……財務の方がなさるのでは?」

「財務卿は数字を出すだけです。どの施設にどの順で伝えるかは、王妃執務院で調整していました」

「でしたら、王妃様が」

「王妃陛下は、昨日からお熱があるわ」

ミレーヌの笑顔が、ほんの少しだけ曇った。

ジュリアスが眉を寄せる。

「クラリス、意地悪な質問はやめろ」

「意地悪?」

「ミレーヌはこれから学ぶのだ。初めから君と同じようにできるわけがない」

クラリスは、王太子を見た。

「けれど、わたくしの仕事くらいできるとおっしゃいました」

「言葉の綾だ」

「王宮では、言葉の綾が国境を揺らします」

ジュリアスの顔に不快の色が浮かんだ。

彼はその表情をすぐに隠したが、隠しきれない。

「そういうところだ、クラリス」

彼は低く言った。

「君はいつも、人を責めるような言い方をする。ミレーヌは君のように知識を振りかざしたりしない」

クラリスの指先が、紙の端に触れた。

知識を振りかざす。

そう受け取られていたのか。

彼の挨拶文から隣国を刺激する語を削ったことも。

彼が喪中の夫人に狩猟の話をしないよう、直前に耳打ちしたことも。

軍部と神殿が同じ日に予算を求めないよう、順番を整えてきたことも。

それらは、彼にとって振りかざされた知識だったのか。

クラリスは、静かに息を吐いた。

「承知いたしました」

そして、書類を整理し始めた。

まず、王宮の正式文書を右に置く。

招待客名簿の清書。

正式な席次表。

財務卿から提出された寄付金配分の原案。

王太子殿下の挨拶文の最終稿。

次に、私的に作成した補足資料を左に置く。

各貴族夫人の近況。

近年の婚姻関係による派閥変化。

ノルヴァルト公国大使夫妻の宗教的禁忌。

今月、同席させてはならない家門の組み合わせ。

王太子殿下が不用意に触れがちな話題一覧。

神殿と軍部の予算衝突を避けるための発言順。

ミレーヌが今夜着てはいけない色の覚書。

イリスが無言で鞄を開いた。

さすがに、ジュリアスが気づいた。

「何をしている」

「片付けております」

「それは見れば分かる。なぜ片付ける」

「婚約は白紙になりました。わたくしは、王太子妃候補ではございません」

「だからといって、今すぐ放り出すことはないだろう」

「放り出す?」

クラリスは、補足資料を丁寧に揃えた。

「こちらの正式文書は残してまいります。王宮のものですから」

「ならば、そちらも置いていけ」

ジュリアスが指さしたのは、左側の山だった。

クラリスは、首を横に振った。

「これは、わたくしが私の時間で作ったものです」

「王宮のために作ったのだろう」

「ええ。ですが、正式に命じられたものではございません。役職もございません。報酬もいただいておりません。未来の王太子妃として必要だと思い、自分で調べ、自分でまとめ、自分で管理していた資料です」

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