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愛されずに捧げた、私の鼓動

愛されずに捧げた、私の鼓動

香坂芽依(こうさか めい)が病院で人工心臓の停止により生死をさまよっている頃、雨宮瑛士(あまみや えいじ)は、彼の初恋の人である鳴海綾女(なるみ あやめ)の誕生日を祝っていた。 焦燥した医師が、瑛士に電話をかける。「雨宮様、香坂さんの人工心臓に問題が発生しました。すぐに来ていただきたいのですが……」 受話器から聞こえてきたのは、芽依の耳にも届く、瑛士の苛立ちを含んだ声だった。「また、あのガラクタか。問題を起こすのはいつものことだろう? いつも夜遊びをするたびに、彼女はそれを口実に俺を呼び戻そうとするんだ。いい加減にしてほしい。 彼女に伝えてくれ。綾女が帰ってきたから、たとえ彼女が本当に死んだとしても、今回は帰らないと!」 鳴海綾女? 瑛士を瀕死状態に陥れ、記憶すら失わせた張本人…… 芽依は絶望し、そっと目を閉じた。 彼は彼女を愛していない。 たとえ彼女が自分の心臓を瑛士に移植し、七年間もそばで寄り添い続けてきたとしても、彼は彼女を愛してなどいなかった。 ……もし今回、命が助かるようなことがあれば、芽依は、雨宮夫人の20億を受け取り、瑛士の前から永遠に姿を消すと決めていた。
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永遠に届かぬさよなら

永遠に届かぬさよなら

結婚式当日、私の婚約者と妹の高橋蘭(たかはし らん)が控室で夢中になって関係を持っているところを、人に見られてしまった。 私は皆の笑い者になった。そんな中、幼馴染の六郷景一(ろくごう けいいち)が人々の注目を浴びながら私にプロポーズし、私を守ってくれた。 結婚後、彼は私にとても優しかった。 ただ、彼は思うようにいかず、夜の営みがうまくいかなかった。 今年体外受精をして、私はやっと妊娠することができた。 その後、彼はさらに私を大事にしてくれた。 彼は私の運命の人だと思っていた。 あの日、彼と友人の会話を耳にするまでは。 「景一、お前もひどいよな。寧はお前にあんなに尽くしてるのに、蘭が出産を怖がってできないからって、卵子をすり替えて寧に代理出産させるなんて。 それに、あと2ヶ月で子供は生まれるんだぞ。どうするつもりなんだ?」 彼は少し黙って、ため息をついた。 「子供が生まれたら、蘭に渡して、彼女の願いを叶えてやるつもりだ。 寧には、子供は死産だったと伝える。 残りの人生は、俺が寧のそばにいてやる」 そういうことだったのか。 私が優しい愛情だと思っていたものは、全て蘭のためだった。 私はすぐに手術の予約を入れた。 この汚れた子供はいらない。 この偽りの結婚生活も、もういらない。
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夫が仮死状態になり 彼の幼なじみの子を授かった時に生まれ変わった

夫が仮死状態になり 彼の幼なじみの子を授かった時に生まれ変わった

新居が突然の業火に見舞われた。消防士である夫は私を庇って重傷を負い、搬送されたのは、彼の幼馴染である田村月子(たむら つきこ)が勤務する病院だった。 手術室から出てきた月子は、夫の死を告げると共に、彼の最期の言葉を伝えてきた。「あいつの遺言よ。どうしても自分の子供を残したいって」 私は慟哭を押し殺し、生前に凍結保存していた夫の精子を用いて体外受精に踏み切った。そうして女手一つで育て上げた息子は、見事、国内最難関の大学に合格する。 だが、その合格祝いの宴席で、あろうことか息子は私を会場から追い出した。代わりに壇上へ招き入れたのは、彼の「本当の両親」。そこで初めて、私は知らされたのだ。夫の死が真っ赤な嘘だったということを。 あの日、夫と月子は共謀して受精卵をすり替えていた。私が腹を痛めて産んだ息子は、私とは血の繋がらない赤の他人だったのだ。私が必死に子育てをする間、彼らは海外で優雅な生活を享受し、成長した息子と親子名乗りをする『収穫』の時を待っていたのである。 怒りに震え、真実を問いただそうとした私は、その親子三人によって屋上から突き落とされ、無残な最期を遂げた。 ――次に目が覚めた時、私は、新居が炎に包まれたあの日へと戻っていた。
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縁の切れ端、愛の苦海

縁の切れ端、愛の苦海

医学界で有名な「冷徹な仏様」は、私の幼馴染の夫だ。 結婚してから私たちは夜ごと熱く求め合ったけれど、彼は私が幼い頃の幼馴染だということを、とっくに忘れてしまっていた。 妊娠が分かった日、私は彼を救うため、猛スピードで突っ込んでくるトラックの前に身一つで立ちはだかった。 足の間から血が流れ出した時、誰もが産婦人科のゴッドハンドである彼が執刀すれば、子供は間違いなく助かると言った。 けれど私が待ち受けたのは、手術台を前にしながら、見殺しにするという彼の選択だった。 中村雅貴(なかむらまさき)は冷ややかに私の耳元に顔を寄せ、一言一言、区切るように言った。 「いつまで俺を騙すつもりだ?」 「俺の子でもないのに、俺が助けるとでも思ったか?」 結局、私はまだ形にもなっていない我が子が、血の塊と化していくのをただ見ていることしかできなかった。 五日後は、私と雅貴が出会って三十年目の記念日だった。 彼へのサプライズにするはずだったものは、かえって足枷となってしまった。 家を出る決心をした日、彼は私のスーツケースをひっくり返した。 床に散らばった検査報告書とあの数珠を見て、雅貴は跪き、もう一度だけチャンスをくれと私に懇願した。
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愛は恨みに、永遠の別れを

愛は恨みに、永遠の別れを

23歳の誕生日、その日──私の実の兄、桑名修治(くわな しゅうじ)は全国長者番付で1位を獲得した。 彼は家政婦の娘・三塩亜矢子(みしお あやこ)のために盛大な誕生日パーティーを開いた。さらに桑名家は彼女と養子縁組を結び、修治はこれから彼女が桑名家でただ一人の寵愛を受ける存在であると宣言した。 一方の私は、人工心臓に不具合が見つかり、適合するドナーも見つからず──医師からは、余命一か月と告げられていた。 病の痛みと心の絶望が重くのしかかる中、私は震える手で修治にビデオ通話をかけた。 通話中に咳き込んでしまうと、その音を聞いた修治は、冷ややかに吐き捨てた。 「昔は俺が足手まといになるのが嫌で逃げたくせに──今さら、俺が金持ちになったら後悔したのか?」 喉が焼けるように痛み、言葉が出ない。 それでも私はカメラ越しに彼の変わらぬ無表情を見つめ、乾いた笑みを浮かべた。 「お兄ちゃん……600万円でいいの。あなたにとっては大した額じゃないでしょう?少しだけ貸してくれない?」 向こうから、嘲るような息遣いが返ってきた。 そしてすぐに、彼が亜矢子を宥める優しい声が聞こえた。 「詐欺の電話だ。俺は大丈夫だ」 ──そう、もちろん彼は大丈夫だ。 だって、今彼の胸で規則正しく鼓動しているその心臓は、もともと私のものだったのだから。
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私が去ったあと、クズ社長は狂うほど後悔した

私が去ったあと、クズ社長は狂うほど後悔した

高梨蓮(たかなし れん)はかつて、私のために家族と決裂し、百億円規模の財産まで手放して、破産した孤児だった私・篠原綾香(しのはら あやか)と結婚した。 誰もが言った。 私は彼にとって、何よりも大切な存在なのだと。 けれど、彼が白石美咲(しらいし みさき)を連れ帰ってきた日から、すべてが変わった。 美咲が花粉アレルギーだと言えば、蓮はその夜のうちに、私たちの愛の象徴だった薔薇園を取り壊した。 美咲が野菜中心の食事にしたいと言えば、蓮は私の体調管理のために用意されていた療養食をやめさせた。 美咲が私を見るだけで気分が悪いと言えば、蓮は私を湖畔の屋敷に閉じ込めた。 私は、蓮がただ私に飽きただけなのだと思っていた。 もう愛が冷めたのだと思っていた。 彼が人と笑いながら話しているのを聞くまでは。 「これはただの賭けだ。先に白石美咲を落としたほうが勝ちなんだよ。綾香?適当に機嫌を取っておけばいい」 私は下腹に手を当て、笑った。 いいわ。 そんな遊びをしたいなら、付き合ってあげる。 私は彼の前で、誰よりも従順で物分かりのいい女を演じた。 彼の遊びが終わる日を待ちながら。 けれど、私を待っていたのは医師の冷たい宣告だった。 ――胎児の心拍は、すでに確認できません。
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愛されている時は掌中の珠、愛されていない時は足元の泥

愛されている時は掌中の珠、愛されていない時は足元の泥

結婚の二週間前、田中陽介は突然、結婚式を延期すると言った。 「由美がその日、初めての個展を開くんだ。オープニングセレモニーは彼女一人だけだって。きっと心細いだろうし、俺が行って手伝わないと」 「俺たちの関係はこんな形式に縛られないだろう?結婚するのが一日早かろうが遅かろうが、何も変わらないさ」 でもこれで、陽介が高橋由美のために結婚式の日取りを延ばすのは三度目だった。 一度目はこうだった。由美が手術を終えたばかりで、故郷の食べ物が恋しいと言い出した。陽介は二ヶ月間も海外に行って、彼女の面倒を見ていた。 二度目は由美が深い山奥にスケッチに行くと言い出した時だ。彼女が危険な目に遭うんじゃないかと心配して、同行した。 そして、これが三度目。 電話を切った私は、向かいに座っている幼馴染の松本優斗に目をやった。彼は相変わらず、気だるそうな姿勢で椅子にもたれている。 さすが御曹司。手元のエメラルドがあしらわれた杖をリズミカルに大理石の床に叩きつけている。 「奥さんがまだ一人足りないんじゃない?」 結婚式当日、由美は軽い笑みを浮かべながらグラスを掲げ、男が乾杯に応じるのを待っていた。 けれどその男は赤い目をして、全国最大の不動産会社である松本グループの御曹司の結婚式のライブ中継を見つめていた。
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母と娘、同時離婚したって何か問題でも?

母と娘、同時離婚したって何か問題でも?

母が離婚した後、私たち二人は葉山家に嫁いだ。 母は町の動物病院の院長と再婚し、私は消防隊長の息子と結婚した。 その日、大雨が降り続いていた。臨月の私は、手術後の母を病院から迎え、地下鉄に乗った。そこで洪水が地下鉄に流れ込む事態に遭遇した。 腹部の激痛に耐えながら、震える手で夫に電話をかけ、助けを求めた。 18回も切られた末、やっと電話に出た夫の声が聞こえた。 「何だよ!こんな時に電話してくるなんて。こんな大雨の中、人命救助中なんだ。花村さんが救助中に足の裏をガラスの破片で切っちまって。今、応急処置したところだ。それに、花村さんのペット犬も危篤状態で、父さんの診療所に急いでるところだ。お前に何かあったら、救助隊を呼べ!俺に構うな!」 その後、救助隊が到着した。 母と私は群衆に押されて最後尾に追いやられ、さらに押し退けられそうになった。 洪水は止まらず、水位はどんどん上がっていく。私には選択肢がなかった。大きなお腹を抱えたまま、母を背負って地下鉄脇の通路を歩くしかなかった。 それが3時間も続いた。 私たちが救出されたとき、母はすでに意識不明だった。 そして、もうすぐ生まれるはずだった私の赤ちゃんは、お腹の中で命を落としていた。 病室で、母と私は互いの顔を見つめ合い、目に涙を浮かべた。 「お母さん、私、離婚するわ」 「大丈夫よ、栞。お母さんが付いてるから。私も一度経験があるしね」
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永遠の密やかな恋人

永遠の密やかな恋人

私は兄の親友である嶋谷宏(しまたに ひろし)と三年間恋人関係にあった。けれど、彼は一度も私たちの関係を公にしようとはしなかった。 それでも、彼の愛を疑ったことはなかった。何しろ、宏はこれまでに九十九人の女と関わってきたのに、私と出会ってからは他の女を一瞥すらしなくなったのだから。 私が軽い風邪を引いただけでも、宏は数十億円規模のプロジェクトを放り出し、すぐに家へ駆けつけてくれた。 誕生日の日も、私は嬉しくてたまらなかった。宏に、私が妊娠したことを伝えるつもりでいたのだ。ところがその日、宏は初めて私の誕生日を忘れ、姿を消した。 家政婦の話では、彼は「大切な人を迎えに行く」と言った。 私は胸騒ぎを覚えながら空港へ向かった。そして、花束を抱え、落ち着かない様子で誰かを待つ宏の姿を見つけた。 ――私にとてもよく似た女の子を、待っていた。 後で兄から聞かされた。その女は、宏が一生忘れられない初恋の人なのだと。 宏は彼女のために両親と決裂し、彼女に捨てられた後は心を病み、彼女に似た女を九十九人も傍に置いて生きてきたのだと。 兄がそう語るときの声には、宏への同情と感慨が滲んでいた。 けれど、兄は知らない――大切にしてきた妹の私が、その「百人目」だということを。 私はあの二人の姿を、ただ黙って、長い間見つめていた。そして、迷いなく病院へ戻った。 「先生、中絶手術を受けたいです……」
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余命僅かな私、彼の「忘れられぬ人」の身代わりになる

余命僅かな私、彼の「忘れられぬ人」の身代わりになる

義兄を救うため、温井紬(ぬくい つむぎ)は長谷川慎(はせがわ しん)と結婚した。隠れた夫婦として三年。体の関係はあっても、心が通うことは一度もなかった。 余命宣告を受けたその日のこと。夫は愛人と夜空に花火を打ち上げ、二人きりで祝杯を挙げていた。出所したばかりの義兄も、別の女を抱きしめたまま「生涯でたった一人の運命の人」と世間に公表する始末だ。 普段は冷たく、人の心など知らない男たちが、揃いも揃って恋人を高らかに披露する光景――それを見て、紬はようやく悟った。もう待つ意味なんてない、と。 離婚届に判を押し、仕事も辞めた。家族とも完全に縁を切った。 それから紬は、ずっと胸に秘めていた夢を解き放つ。周囲から「所詮は専業主婦」と嘲笑われていた彼女が、気づけば科学技術分野の最高峰へと駆け上がっていた。 ところが、ある日突然、紬の隠していた正体と余命わずかな病が世間に知れ渡ってしまう。 自由気ままだった義兄は、目を真っ赤に腫らして懇願してきた。「紬、頼む。もう一度だけ『お兄ちゃん』って呼んでくれないか」 あれほど冷酷だった慎も、今度は狂ったように縋りついてくる。「紬、俺の命をやる。だから、どうか俺を置いていかないでくれ……」 でも、紬の心はもう動かない。 遅すぎる愛ほど、安っぽいものはないのだから。 そんなもの――今さら、欲しいとも思わなかった。
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