拾った旦那は名門のスパダリ社長
私は堀江文乃(ほりえ ふみの)。
生まれつきほろ酔い気分であるかのように、常にぽわぽわしていて頭のネジが数本ゆるんでいる。
三年前、酔っ払った美男子をうっかり拾って帰ってしまった。
目を覚ました男は、しばらくこちらを見つめた後、唐突に口を開いた。
「結婚しよう」
私は深く考えるのも面倒で、こくりと頷いた。
そのままなし崩し的に名家の奥様に収まり、三年が過ぎた。ブラックカードは切り放題、豪邸には住み放題。
しかし、妊娠が発覚した矢先、それを伝える間もなく、目の前に離婚協議書と離婚届を突きつけられた。
「破産した。これが最後の手切れ金だ。これを持って出て行ってくれ」
その時、ふと視界の端をいくつか弾幕が流れていった。
【キタコレ!ヒーローの初恋相手が帰国したってよ!】
【これ絶対、破産を装って当て馬女を捨てて、初恋とヨリを戻す気満々だろww】
【そもそもヒーローがやけ酒してたのは初恋ちゃんが出国したからだし、この当て馬はただの代用品乙!】
はあ?
どうやら私、身代わりだったらしい。
私は呑気に頷いた。
「あっそ。じゃあ離婚しようか」
男の瞳から、スッと光が消え失せた。
その顔を見つめながら、何か言い忘れていることがあるような気がしてならなかった。
まあいい、思い出したら言おう。