冷たい家族の中で
うちのお母さんは、まるでシンデレラみたいにお金持ちの家に嫁いだ。
セレブ妻になったあとも、美人だしお金もあったけど――肝心な「居場所」だけは、どこにもなかった。
お父さんは仕事に夢中で、おばあさんは知らんぷり。お母さんが頼れるのは、私とお兄ちゃんだけだった。
……はずなのに、お兄ちゃんはお父さんのそばにいる秘書さんのほうが好きだった。
「ママなんてただ飾りみたいな存在だ!新しいママが欲しい!」って騒いで、ごはんも食べないで抗議する始末。
お父さんはぬるく叱っただけ。おばあちゃんは「子どもの冗談でしょ」なんて笑って済ませた。
でも私は見たんだ。お母さんの目が、泣きそうに潤んでたのを。
その目の奥に、きらりと光る決意を込めて、お母さんははっきりこう言った。
「私、離婚するわ」