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特別番外編【Voice21】

last update Veröffentlichungsdatum: 19.09.2026 06:31:22

♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜

五時限目の授業を堂々とサボって教室に戻ると、黒瀬が悲壮な表情で俺に駆け寄って来た。

「箱崎、顔色がよくないけど、やっぱり具合が悪かった?」

「えっ?」

「だってここのところ、若林先輩に呼び出されていたでしょ。暗い顔してここから出て行くのを見ていて、正直心配してたんだ」

若林先輩に呼び出された過去がある経緯から、俺を心配してくれる黒瀬に、力なく首を横に振った。

「箱崎?」

「俺さ、現在進行形で、若林先輩と付き合ってるんだ」

「それってなにか弱みを握られて、無理やり付き合ってるんじゃ――」

黒瀬は大きな瞳を潤ませて俺を見つめる。若林先輩が悪いことばかりしているから、そんなふうに思われるのは想像ついた。本当に困った人だと思われる。

「違うよ。俺が好きで付き合いはじめた。さっきまであの人を、とある場所で掘ってたんだ」

「掘っ!? ちょっ箱崎が抱く側なのか?」

驚きのあまり、驚愕の面持ちで俺を見上げる黒瀬の顔がすごく面白い。こんな姿は、そうそう拝めるものじゃないだろうな。

「意外だろ」

自分の席に移動しながら答えたら、黒瀬は横から俺の顔を
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  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   特別番外編【Voice23】

    「……箱崎、変なことを聞いてもいい?」 自身の気持ちを噛みしめていたところで、どこか言いにくそうに黒瀬が俺に話しかけた。「変なこと?」「うん。あのね、若林先輩と付き合うことになったきっかけは、何かなぁと思って。ふたりが付き合うなんて意外だったし」「黒瀬は知ってるだろ、俺が声フェチだってこと」 人差し指をくちびるに押し当てながら告げると、黒瀬は黙ったまま静かに頷く。俺のことをバカにせず、真摯に受け止めてくれる態度に、ありがたみを感じながら説明した。「若林先輩、誰も真似できないような声を出すんだ」「それって――」「ヤってるとき限定だけどね。それのおかげで胸に空いた穴が、一気に塞がっちゃった」「あ……」 黒瀬の面持ちが曇りがちになったのを見て、腹に軽くグーパンしてやった。「そのきっかけを作ってくれた黒瀬に、俺は感謝してるんだけどな」「箱崎……」 椅子に座った俺を、黒瀬は大きな瞳を細めながら見つめる。さっきまでの憂うつな感じは消えていた。「それで、俺にジェラシー抱いて無駄に嫉妬しまくっていたのは、無事に解消されたみたいだな」 黒瀬先輩と部室で話し合いをしたあの日、黒瀬は不機嫌丸出しで帰っていった。次の日にフォローを入れようとしたのだが、その日の黒瀬がどこかボーっとしていたので、あえて話をしなかった経緯がある。「解消というか、なんというか――」 いきなり頬を染め、落ち着きなく視線を逸らす黒瀬の行動で、俺がフォローする前に黒瀬先輩がうまいことやったのがわかった。「黒瀬先輩が俺を相手するはずないのに。黒瀬にめっちゃ惚れてるのにさ」「そんなこと! ある、かな?」「どうしてそこで、自信を失くすんだ。黒瀬先輩の視線の先には、いつも黒瀬がいるっていうのに」 部活をしている最中、体育館の観客席を見上げて、さりげなく黒瀬を捜す姿を何度も目撃していた。「そんなに僕のこと、兄貴は見てるの?」 自信なさげに躰を縮こめて訊ねる黒瀬に、笑いながら答える。「ああ。黒瀬を見てるだけじゃなくて、話もたくさん出てくる。『俺の辰之はしっかりしてるから~』なんて、いろんな自慢話しまくりだよ」「自慢話なんて、僕のどこが自慢になるのやら……」「そういう黒瀬も、黒瀬先輩の自慢話するクセに!」 ニヤニヤしながら指摘した瞬間に、目の前にある顔がここ一番で真っ赤になった

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   特別番外編【Voice22】

    『あっあっぁっ、ンンッ、くすぐったい』「これならどうですか?」 一気に半分挿入してやった。本当は全部挿れたかったが、さすがにナカがキツくて、無理ができない。『ふぎゃッ!』 若林先輩の顔色が赤くなったり青くなったりと、見るからに忙しない。相変わらず色気を感じさせない喘ぎ声が、戦慄く唇から吐き出された。『くるっ、くるっ…苦じぃ、つ゛ら゛いぃ゛』 多分、第三者がこのセリフを聞いたなら、断末魔の叫びに捉えること間違いなしだろう。「あと半分残ってるのに、弱音を吐かないでください」『だだだだ、だってよ、あぁあ圧迫感が……』 うだうだ言わせないようにしてやろうと、一旦ギリギリまで腰を引き、ふたたび挿入してやった。『ぴぎゃっ!』(――ホントこの状況で萎えない俺って、正直すごいと思う) 若林先輩がどんなに酷い声をあげようが、醜い顔をしていても、そのすべてを愛おしく感じられた。「アキラ先輩、口を開けっ放しのままで、舌を出して」 ナカに力を入れさせないために、突飛な提案をした。若林先輩は咽び泣きながら、舌先をやっと出す。出されたそれに顔を寄せるタイミングで自然と俺自身がナカを押し開き、あと少しで全部が挿入されるところまでやってきた。『おっおおお~♡』「んっ! アキラ先輩と、やっとひとつになれましたよ」 最後の一押しを終えて、すべてを飲み込んだ部分を見ながら額に滲む汗を拭ったあとに、組み敷いてる若林先輩に視線を移して、ギョッとするしかなかった。 だらしなくヨダレを垂らしながら白目を剥き、躰をヒクつかせてちゃっかりイってる姿は、俺の中にあるヤル気をゼロにした。(さっきまではトロけそうなくらいに気持ちよかったのに、それを無にするこの人は最強なのかもしれない――)「まったく! 困った人……」 傍から見たら間違いなく思いっきりドン引きする姿なのに、なぜだか俺は許せてしまう。その理由は、失神するくらいに俺ので感じてくれたからなのか。あるいは惚れた弱みなのか――どっちにしろ、相当若林先輩に堕とされてしまった事実には変わりない。

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   特別番外編【Voice21】

    ♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜ 五時限目の授業を堂々とサボって教室に戻ると、黒瀬が悲壮な表情で俺に駆け寄って来た。「箱崎、顔色がよくないけど、やっぱり具合が悪かった?」「えっ?」「だってここのところ、若林先輩に呼び出されていたでしょ。暗い顔してここから出て行くのを見ていて、正直心配してたんだ」 若林先輩に呼び出された過去がある経緯から、俺を心配してくれる黒瀬に、力なく首を横に振った。「箱崎?」「俺さ、現在進行形で、若林先輩と付き合ってるんだ」「それってなにか弱みを握られて、無理やり付き合ってるんじゃ――」 黒瀬は大きな瞳を潤ませて俺を見つめる。若林先輩が悪いことばかりしているから、そんなふうに思われるのは想像ついた。本当に困った人だと思われる。「違うよ。俺が好きで付き合いはじめた。さっきまであの人を、とある場所で掘ってたんだ」「掘っ!? ちょっ箱崎が抱く側なのか?」 驚きのあまり、驚愕の面持ちで俺を見上げる黒瀬の顔がすごく面白い。こんな姿は、そうそう拝めるものじゃないだろうな。「意外だろ」 自分の席に移動しながら答えたら、黒瀬は横から俺の顔をまじまじと見つめる。「でもどうして顔色が悪いの? 疲れたから?」「さあ~、どうしてだろう」 黒瀬から直視されるまなざしをやり過ごすべく、あらぬ方向に視線を飛ばして、ゆったりと椅子に腰かけた。脳裏には、さきほどまでの卑猥な行為が鮮明に流れる。 お互い、とてもいい雰囲気だった。時折痛いことをして若林先輩を感じさせつつ、大事なところを入念に解していった。『慎太郎っ…早くぅ、あぁっ…』 若林先輩は腰をくねらせながら、俺自身が挿入されるのを待つ。本当はすぐにでも挿れたかったが、前回失神したのを考慮して、しっかり解さなければと説得を試みた。「アキラ先輩ダメですよ。俺のは大きいんだから、ちゃんと解さないとつらいでしょう。俺だって気を失った人を抱くなんて、もう嫌ですからね」『わかって、る…そんなの、あうっ…でもおまえと早く、ひとつになりたくて』 自身の両膝を持ち上げて俺を心待ちする若林先輩に、困った顔をして見せた。「それは俺だって、同じ気持ちですけど」『慎太郎……まだ?』「ああ、もう! わかりましたよ!」(モノ欲しげに何度も強請られて、無視できるヤツがいるなら見てみたい)

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   特別番外編【Voice20】

    跨っている腰をあげかけると、若林先輩の太い腕が俺の首を慌てて掴んで、不意に動きを止めた。「慎太郎の大っきぃち〇ぽがほしい!」「つっ!」 必死な形相で強請られたセリフの衝撃に、今度は俺の躰が震えてしまった。首を掴んでいる若林先輩の腕に力が入り、顔に近づけられる。名前呼びに慣れていないせいで、異常なくらいに心臓がバクついた。切なげな表情で頬を染めながら、むせび泣いて俺に縋る若林先輩にキスしたい――。「慎太郎お願い、俺から離れないでくれ……。こんな俺を嫌がらずに相手をするおまえが、すごく好きなんだ」「な、なにを言って…るんですか。若林先輩が好きなのは、俺のブツでしょう」(失神するほどの快感を与える俺のを欲しているから、きっとそんなセリフが出るんだ……)「それを含めておまえが好き。慎太郎が大好き」 若林先輩の熱烈な愛の告白を、『嘘つき』なんて言葉で否定しながら『そんなことを言うアンタなんて、俺は大嫌いだ』と言えば、性癖的に罵るタイミングとしてはバッチリだろう。「俺はアキラ先輩のこと――」 嫌い…気持ち悪いんだよ…大嫌い。他にもたくさんの言葉が脳裏をよぎったのに。「……好きだ」 多分、微妙な顔で伝えたせいだろうか。若林先輩は目を瞬かせながら、口を開けっぱなしにした。「慎太郎?」 俺の口から好きの二文字が出るとは思ってもみなかったのか、若林先輩の頬がさらに赤くなった。俺の首に絡む腕もぶわっと熱を帯びて、じわじわと体温を与える。心地いいそれに導かれる形で、若林先輩の疑問を解消しようと言の葉を告げる。「アキラ先輩が好き、みたい」「黒瀬弟よりも好き?」 間髪入れずに問いかけられたものは、詰まることなく返事ができるものだった。「黒瀬よりも好き。だと思う」 こんなに好きなのに、それを見せられないのは、すごくもどかしい――。「ヤバっ。その告白だけでイっちゃった。心だけじゃなく、俺のち〇ぽにまで、ぎゅんときた!」「そうですか、それはよかったですね」 俺のぬるい声は思いっきり棒読みなのに、目の前には満面の笑みがあった。「今日は記念日だ。たくさんイった甲斐がある!」「ひとこと言いますけど俺、アキラ先輩のをまったく触ってないですよね。それなのに、たくさんイったっていうのは」「おまえに感じさせられるたびに、何度も達したってこと。替えのパンツ持って

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   特別番外編【Voice19】

    (中央にあるベンチじゃ、無駄にガタイのいい若林先輩の躰じゃ、行為の最中に落ちるだろうから、危なくて置けない。華奢な黒瀬なら余裕なのに) 体育館の物置よりはまだマシと思える、適度に汚れていない床に、若林先輩を組み敷いた。目についた太い首筋に舌を這わせながら、ブレザーのボタンを外し、ワイシャツのボタンも手際よく外していく。「はこざ…きぃっ、あぁっ…」 ワイシャツの裾をスラックスから引きずり出して、部活で鍛えられた上半身をあらわにした。胸の突起を潰す感じでぎゅっと抓りつつ、首筋の根元に強く噛みついた。「いいぃっ!」 抱きしめた躰が、快感で何度もビクつく。まるでまな板の上に置かれた、活きのいい魚のようだった。「あっああっ、あうっ…」 しつこく吸いながら、皮膚に歯を立ててかぶりつく。そのうち、口の中に鉄の味をほのかに感じた。「痛いぃ、じんじんする……」「噛まれるのと抓られるの、どっちが気持ちいいんですか? 前よりも感度上がってますよね」 両手で乳首を強く抓ると、若林先輩の太い眉がへの字になり、小さな両目から涙が溢れた。 以前ならそんな姿を見たら、憐れだの気持ち悪いという言葉が出てきたのに、今じゃ胸がドキドキした。見ているだけで、普段隠している加虐心に火がつく。「は、箱崎ぃ、もっと…もっとシテくれ」「なにをしてほしいんですか。具体的に言ってもらわないと、俺はわかりません」「おっ…おまえの手で痛くしてほしい」「泣くくらいに痛みを感じてるくせに、もっとシテほしいとは」 唇をひん曲げた笑みを唇に湛えながら立ち上がり、上靴を履いたまま、若林先輩の下半身を踏みつけてやった。「あ゛あぁあ゛っ!」「色気のない酷い声。もっと可愛い声で啼いてもらわないと、まんま興醒めですよ」 ほんの少しだけ足に体重をかけながら、ぐりぐり動かしてみた。「いあっ! はあっ、あ……ンンっ」 今ので確実に達しているであろうブツを容赦なく蹴りあげてから、若林先輩に跨り、顔を寄せた。頬を濡らす涙に唇を押しつける。傍にある瞳が誘うようにゆらゆら揺らめいて、俺の顔を凝視した。「ひゃひゃこざき…早くほひい」(汚い床に転がされて、首を噛まれたり乳首を抓られた挙句に、股間を蹴りあげられて痛そうに呻くズタボロなこの人が、なぜだかすごく愛おしい。可愛く見えるなんて変だ。アソコが痛いくらいに

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   特別番外編【Voice18】

    「アキラ先輩、教室に戻りますよ」 出しっぱなしになってるモノをしまいかけた手に、大きな手が被さった。若林先輩が俺の手ごと、ぎゅっと握りしめる。「毎度毎度つらいだろ。そのまんまじゃ」「別に。いつものことですから」「わかってるんだぜ。最近はキスしただけで感じて、しっかり勃起してること」「つっ!」 嫌になるくらいに、頬が熱を持つのがわかった。それを見られないようにするのに、慌てて首を垂れたら、視界に入る自身と大きな手。これ以上刺激されたら、間違いなく暴発してしまう。「箱崎が感じてる姿を見て、俺も興奮してるんだしさ。一緒にイこう」「じ、受験生が、なに不真面目なことを言ってるんですか。ダメですよ……」 そう言葉では拒否したのに、被さった若林先輩の手を退けることができない。俺の手を介して握りしめられるアレが気持ちよくて、小さく呼吸が乱れる。「おまえのコレ、そろそろ俺の中に挿れてくれないか?」「深い仲にならなくてもいいって、言ったクセに!」「なにをいまさら。俺のテクで随分といい思いをしていながら、そんなセリフが出るとは」 カラカラ大笑いした若林先輩に、腕力だけじゃなく口でも勝てない。だけどこの人がなにを望んでいるのかを、俺はよく知ってる。「若林先輩、俺のでまた失神したいんですか」「今度はナカに挿いってくる、おまえを感じられるように、なんとか頑張るつもり」 反論しようとした唇を、あっと言う間にキスで塞がれた。押しつけられる唇が、ほんのり湿っている。さっきまで俺のを咥えていた名残を直接感じた途端に、ほしくて堪らなくなった。若林先輩の腰に空いた腕を絡めて密着し、舌をもっと深く挿入しようとしたら、触れていた唇が逃げる。「箱崎、好きだよ」 真剣なまなざしで、俺の顔を捉えながら告白された。毎度毎度飽きもせず、まともな返事すらもらえないというのに、なんで好きだと言えるのだろう。(俺が好きと言うよりも大嫌いと告げて、それを態度で示したほうが、この人は悦ぶのがわかってるのに――) 若林先輩の腰を抱える俺の腕に、ぐぐっと力が入った。その衝撃に互いの下半身がぶつかる。生で出てる俺のほうが感度が高いはずなのに、若林先輩がビクリと躰を震わせた。「箱崎焦らすなよ。口でしてる時点で、かなりヤバかったんだぞ」「俺は一度も、若林先輩に触れてないのに?」「俺がおまえに

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   兄貴のほほ笑み6

    *** 部活を終えた兄貴と馬鹿女が向かった先は、市立図書館の自習室だった。 図書館の奥にある自習室が見渡せる本棚の隙間に、うまい具合に体を隠し、ふたりの様子をじっくりと窺う。他にも来館している客がいるので、派手な行動をするとは思えないけれど、相手はあの馬鹿女。油断するわけにはいかない。 兄貴は馬鹿女の横で楽しそうにノートを指さしつつ、ささやき声でなにかを話しかける。僕に向けてくれるのとはあきらかに違う笑みに、胸の奥が軋むように痛んだ。(クソっ、あんな女にそんな笑顔で話しかけるなよ……) どうにも見ていられなくなり、本棚に背中を預けて天井を仰ぎ見た。奥歯をぎゅっと噛みしめながら、持っ

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   兄貴のほほ笑み5

    *** 兄貴が部活を終えるまでの時間を使って、この間女子トイレに仕掛けた盗聴器の中身を確認すべく、目立たないであろう図書室の隅の席で聞いていた。(前々回と前回は空振りに終わったけど、今回はどうだろう……) 期待を胸にイヤホンから流れる女子の会話を耳にしつつ、机の上に広げたノートにその内容を端的に書き記した。僕の姿を傍から見る分には、熱心に勉強しているように見えるだろうな。 いろんな女子からもたらされる噂話や愚痴を聞いている最中に、衝撃的とも言える話は突如はじまった。 早口でまくしたてる甲高い声に反応し、相槌する者は僅かだったが、信じられない内容にめまいがしてきた。どうにもメモする気

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   兄貴のほほ笑み2

     内なる苛立ちがバレないように、奥歯をぎゅっと噛みしめながら自室に移動した。素早く鞄を手にして、リビングを背にしたまま声をかける。「行ってきます」 僕のかけ声を合図に義母が椅子から立ち上がり、慌てて追いかけてきた。「辰之、忘れ物はない?」「ないよ。帰りは、いつもどおりになると思う」 しゃがんで靴を履いていたら、いつの間にか兄貴が傍にいた。振り返って目を合わせた瞬間に、後頭部を撫でられる。「寝癖くらい直さないと、彼女できないぞ」 兄貴に指摘されたことが恥ずかしくなり、その手を容赦

  • こんなに好きなのに、伝わらないのなら――   兄貴のほほ笑み

     朝の弱い兄貴が、珍しくご機嫌な様子でご飯を食べていた。隣でそれを不思議に思いながら、味噌汁をすする。「母さん、今日遅くなるから」「部活?」「部活のあとに、テスト対策の勉強することになっててさ。帰ったらちゃんと飯食うから」「来年受験だものね。しっかり勉強教えてもらいなさい」「俺が教えるんだって。酷いなぁ」 ほほえましいとも言える義理の母親と義兄のやり取りを耳にしつつ、目の前にいる実父に視線を飛ばした。たぶんこれから僕に、なにかしら嫌な話題を投げつけるであろう。「辰之、おまえ勉強

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