ログインー数日後ー
「はぁ……はぁ……」 やばい……段々神力の維持が困難になってきた…… これは……ほんとにまずい…… この土地に神力を注ぎ込みすぎたか…… それとも……やっぱり、人間になるのか…神としての役割を終えて……死ぬのか…… どっちか、なんてわかるわけが無い。 実際、お母様がどうして死んじゃったのか……そんなの今になってもわかんない。 1000年生きてきたけれど手がかりすらない。し……ウチも見つけようとしたけれど今となっては知らない子の方が多い。 もう、陰陽師や色んな妖怪との戦い、はたまた神の力を使い果たして消えてしまった子の方が多い。 だからこそ昔のことを知っていて尚且つ強大な力を持っている神として残っているのはもうウチしかいないし…… どうしようかな…… いやいや…そもそもそれどころの話じゃないだろう…… 今は自分の身体の心配をするべきだ。 こうして……今にでも死にそうな身体をしているのに何も出来ないだなんて…… 終わりもいい所だ…… 「もう…このまま…誰にも見つからずに…死ぬのかな……」 その方が、この土地にも迷惑をかけないし……ちゃんと力を使い果たして死んだ方が…… いいのかもしれない…… 「そう思ったはいいけど……」 眠気、怠さ、神力がどこかに持ってかれる感覚といい…… ほんとにこれ…… 並の神が耐えられるものなの……? 完全に…殺しに来てる気がするんだけど…… もう、耐えることすらできない気がする…… 詰みだ。 これは……詰んでしまった。 何も出来ずに死んでいく。 それなら…… この土地のためって思いながら死ぬのだから本望だろう。 でも……死ぬとしたら…… 葵ちゃんにもう一回だけ会えたら良かったのにな…… お母様…… ウチ、お母様の願い……叶えられなかったよ…… 「そう思うなら生きてみろ、このバカ」 「へ……?」 この鋭い声…… どこかで聞いたことあるような…… えっと…… どこだったけな…… 「――い!!こっちだ!!」 「えぇ?!今言われても!!って、すごい瘴気!!早くこれを払わないと!!」 誰かの声がする…… この優しい感じも…… どこかで聞いたことが……ある気がする…… それは……いつだった? 思い出せない…… 「れいさん!!わたしがぜったい!!すくってみせるから!!」 必死に。 生きる希望を捨てたウチを助けるような声をかけてくれる…… この声…… それに……この、懐かしい感じは…… 「あおい……ちゃん……」 「れいさん!!喋らないで!!私が…私が絶対救うから!!だから!!」 死なないで!!!! そうか…… あの時も…… 『れいさん…あなたは生きて…生きて、この土地をあなたが――――』 色んな子に言われた…… 生きてって。 だからこうして生き続けた。 でも。 でもそれは。 ウチにとって呪いになった。 生きるということはこれ即ちある種の呪い。 呪いということは。 もうウチは神ではなくなり、神ではない別の何かに変貌したということにもなる。 禍々しい何かに。 自分では分からないけれど、でも。 これは多分、葵ちゃんやこの土地に居る人達を犠牲にどんどんどんどん膨れ上がってしまう。 それだけ膨大な神力や呪力が解き放たれている事が少しだけだけど、分かる。 だからこそ。 今のウチは危険だ…… だから、葵ちゃん逃げてよ。 災厄に成り下がったウチをどうか…どうか見捨てて…… お願いだから……!! 「嫌です!!絶対に嫌!!」 諦めが悪いのか…… 何も分かってくれないのか…… でも、今のウチはほんとに……ほんとに危険なの…… だから…… 葵ちゃんが殺されるんだったら、ウチを諦めてよ!! 葵ちゃんにウチを止める力なんて…あるわけないじゃん!! だから…… だから!! 諦めてよ……お願いだから…… 「どうして……そんなふうに言うんですか?」 それは……葵ちゃんが、死んだら嫌だから…… 「それだけの理由ですか?」 そう言いながら歩み寄る彼女。 でも、ウチに今そんな事は届かない…… 届いたりなんかするもんか。 瘴気を纏った何かが葵ちゃんの方に飛んでいく。 避けなよ。 そうすれば助かる。 こうやって攻撃してくるやつなんて最低だって、死んでしまえと思えばいい。 そうすれば。 ウチは楽になれる…… あと数センチ… 数ミリ…… すう……ってあれ…… 「……っ」 なんで。 なんでよけなかったの? どうして? どうして、避けないで……ウチの方に……まだ歩みよってくるの? おかしいな…… だって……散々心折れるようなこと言ってるのに……してるのに。 また瘴気を纏った何かを葵ちゃんの方に飛ばす。 一発じゃない。 今度は避けられないくらい。 沢山。 沢山。 沢山飛ばした、それでも…… どうして? どうして避けてくれないの? 葵ちゃんには……死んだら嫌って…… そう、言ってるのに…… 「葵!!」 「カンナちゃん……やめて、私が立ち向かわなくちゃ」 「だけど……くっ……」 カンナちゃんも悲しい顔してるのに…… 止まってよ、葵ちゃん!! 「あの時……葵が来てやれなかったもんな……やり合おうぜ!!」 向かってくるか…… ウチには敵いっこないのに。 でもまあ……… どうして諦めてくれないのかな? そろそろ腹が立ってきたよ。 どうして? どうしてウチ何かのためにこんなにしてくれるの? 「そんなの決まってます……れいさんが大切だからです!!」 そう言って居なくなった子達を何度も見た。 だから、そんな言葉を言われても…ウチには…… 「それじゃあ、私が諦めて……ここから立ち去ればいいんですか?」 「葵やめろ!!これ以上は!!」 「止めないで、カンナちゃん」 そうだよ、諦めて欲しいの。 こんな…… こんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんな…… こんな悪い子を…… 見捨ててよ……!! 大切だって…… 少ししか交流してないけどウチの大切な存在を傷つけたウチの事なんか見捨ててよ!! 「……か」 何……? 何言ってるか…… 「れいさんのバカ!!どうしてそういう風に決めつけちゃうの?!」 え? 「どうして……最低だって……こんななんて言うの?」 だって……それは…… 「傷付けたから?私を殺そうとしたから?」 そう……だけど…… 「バカ!!ほんとに……ほんとにばか!!」 ば、バカって……神にバカとか失礼な…… 「だってそうだよ!!ホントのバカだよ!!自分の気持ちに気づけない神様なんて…そんなの違うよ!!正義でも、空くなんかでも無い…れいさんのただのエゴだよ!!」 …… そう……言われても 「悔しいって思った?ほんとに何してるんだろってそう感じた?」 …… 「あんなに饒舌になってたのに黙り?ねぇ、れいさん。れいさんは、本当はどうしたいの?」 ウチ…… ウチは……何を…… ウチは…… 「生きたいんじゃないんですか?」 『れいちゃんは、生きて!!』 『生きろ!!れい!!』 『れいはきっと、生き続けたらいいことが起こる……だから……生きて?生きて……未来を……』 ウチは…… ウチは!! 「生きたい!!」 「そうでしょう!!今なら行けるはず!!」 生きたい……と。 ウチが手を伸ばした時に陣が展開されたのが分かった。 青白く。 とても綺麗な…… 何度も、何度も見てきた。 残酷な光だけれど。 でも。 どこか期待しているんだ。 これを受けたら、救済されると。 「砕けろ!!邪の気を!!そして我に…全てを授けたまえ!!!!」 一瞬にして光が包んだ。 私を包んでた。 瘴気が晴れて、ウチを繭状に包んでいたものだろうか。 それも砕け散り。 ウチは、本当に生まれ落ちたのだと思う。 「良かった……れいさ……って服!!服が!!」 「え?」 よく見てみるとウチは何も着ていない、つまり……落ちていく。 落ちていく。 落ちていく。 どんどん。 どんどん。 どんどん…と。 暗い。 暗い。 暗い。 暗い。 闇の底に…… いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい…… 分からなくなるくらいまで。 闇のそこ。 深い、深い…… 闇の底へと…… 落ちていく所まで落ちていってるいる。 いや…… もう既に。 闇の底にいるのかも知らない。 だから。 私は、まだ落ちていく可能性がある。 それは分からないけれど。 でも……私は…… 私は…… あれ…… なんで……こんな事になってるんだっけ…… この感覚…… そういえば……前に…… そっか…… 思い出した…… これは…… 「へぇ、ここの神様ってほんとにいるんだ」 何かの道着を着ている紫髪の少女が鳥居の前でいきなりそんなことを言う……… この人……酷すぎる…… いや、ものすごく酷い。「何?あなたウチに用?」「用って程じゃないよ、ただ倒したくてさ。あんたを」「やめといたら?」「なんでさ、だって私はここら一体の神様を除霊してきたんだよ?」 除霊?除霊って言った?! 神様を除霊するほどって……この子相当……「へぇ、ならやってみるか?」 れいさ
ー数日後ー 「はぁ……はぁ……」 やばい……段々神力の維持が困難になってきた…… これは……ほんとにまずい…… この土地に神力を注ぎ込みすぎたか…… それとも……やっぱり、人間になるのか…神としての役割を終えて……死ぬのか…… どっちか、なんてわかるわけが無い。 実際、お母様がどうして死んじゃったのか……そんなの今になってもわかんない。 1000年生きてきたけれど手がかりすらない。し……ウチも見つけようとしたけれど今となっては知らない子の方が多い。 もう、陰陽師や色んな妖怪との戦い、はたまた神の力を使い果たして消えてしまった子の方が多い。 だからこそ昔のことを知っていて尚且つ強大な力を持っている神として残っているのはもうウチしかいないし…… どうしようかな…… いやいや…そもそもそれどころの話じゃないだろう…… 今は自分の身体の心配をするべきだ。 こうして……今にでも死にそうな身体をしているのに何も出来ないだなんて…… 終わりもいい所だ…… 「もう…このまま…誰にも見つからずに…死ぬのかな……」 その方が、この土地にも迷惑をかけないし……ちゃんと力を使い果たして死んだ方が…… いいのかもしれない…… 「そう思ったはいいけど……」 眠気、怠さ、神力がどこかに持ってかれる感覚といい…… ほんとにこれ…… 並の神が耐えられるものなの……? 完全に…殺しに来てる気がするんだけど…… もう、耐えることすらできない気がする…… 詰みだ。 これは……詰んでしまった。 何も出来ずに
お前、もう時期死ぬぞ?』 やっぱり……カンナさんには気付かれてたか…… 神として、段々維持が出来なくなってしまっている。 それか、信仰心が既に失われていたから遅かれ早かれ死ぬということは確定していたのだろうか。 だから……姿が見られていた。 それだと合点がいく。 でも、それだとしてもだ。 私自身そんなに信仰力や神力が仮に失っていたとする。 それで姿が見られたのなら、やっぱり神力が弱まってたとしか考えられない。 葵ちゃんが凄い、って訳じゃないとウチが勝手に睨んでるだけだけど。 多分葵ちゃんの能力って神力を司るものを見ることが出来るんだと思う。 あの話の素振りだと、カンナさんが見れたのはそれだけ神力が弱かった何かに宿っていたから見れたんだと勝手に予想するけど…… 多分、元々そういうのを子供の頃から見れていた…いやカンナさんを見れていた。 そこからあっさりと契約にこぎつけたんだと思う 勝手な予想だけどね。「ふわぁぁぁ……眠い……あの警告を受けてから凄い眠いのが酷くなった気が」 神としてそろそろ限界が近いのか。 それとも、それだけ信仰心、神力が共に薄れてきているのか。 どっちとも考えられるからこそ厄介だ……「何とかして……起きないと……」 そうしないと、約束が叶えられない。 それに、陰陽師の約束は物凄く重いもの。 破ってしまったなら神だとしても、とてもえげつない事になるってことをお母様から聞いたことがあるから何とかして起きないと……「っと、澪さーん?」 ヤバい……声は聞こえるのに凄い眠気が来て…… 起きれる自信がない…… いや……違う…… 神力自体が失われている気がする、吸い取られてる感じもする…… 昨日は全然感じなかったのに…… これは……一体……「澪さん?!大丈夫?!」「ぇ……大丈夫……だい、じょうぶだよ〜」「もう!!全然ダメじゃん!!」 必死に心配してくれている なんでこんな…… 抜け殻みたいなうちの事……心配して…… もう…ほんとに優しすぎるよ…… でも、助けるって言ってもどうやって助けるんだろ? この子には能力があんまりないと思ったんだけど…… もしかして…この膨大な神力の正体って…… まさか……「回復……」 段々、力が戻ってきてる感じがする…… それに、葵ちゃ
「あなたは……誰」「お前と同じ、神だよ。元、だけどな」 そう言うと姿を現した。 黒くて全然見えないのは夜のせいか、それともモヤのせいか…… てか元神って……ということは…… 昨日居た、例の式神か……「残念だが、その内容を見ちまったのならお前をここで殺さないといけなくなるんだが…」 凄い殺気...…まだ姿が見えないのに只者じゃない感じがする……「そうか……」 なら、久しぶりに本気を出すしかないようだ…… この土地の人に手出しなんか絶対にさせない!! お母様から引き継いできたこの、素晴らしい土地を!!「ふはっ、どうやらやる気みたいだなぁ……いいぜぇ…...あたしも力を出せなくてうずうずしてたところなんだよ……!!」 と言うと、恐ろしい程凄い気迫が来た。 これは…… 1000年前も見たことがあるような…そんな感じの…… でもやっぱりこの式神、昨日居た感じからしてただ者じゃない…… 全盛期のウチより強いんじゃない? 辺りがピリついてる…… 凄い、多分普通の人じゃ立ってられないくらいのそんな圧がくる……「やばいかもなぁ…...でも…...!!」 手を下にかざし……陣が浮き出る。 そしてそこから、ウチの愛刀が出る。 その名もムラサメ 天を切り裂き、英気を吸い取る。 聞こえは悪いがこの刀に切られたものは何がなんだろうと自身の力を吸い取られる。 それが例え……神だろうと...…!!「その刀、ムラサメだろ?」「へぇ、知ってるんだ」「そりゃあ、1000年前の決戦の噂…...知ってるからなぁ。まさか、ホンモノにお会い出来るとは!!」「てことは……ウチの実力知ってるわけか」「ご名答」 再び圧が増す…… やっぱり……これは……「最強に…...近い
「ふぁぁ……眠い……」 神様の夜は早い…だなんて何言ってんだって思うけど実際七時に起きてるのだからしょうがないだろう。 それにしてもやっぱり人の往来は激しいなぁ… いつ見ても驚く程だよ。 なんせ昔じゃ考えられないものばかりなんだからずっと驚きっぱなしだ。 この土地の人の話を聞くと近いうちにあの小さい鉄の塊がウチたちみたいに空を飛ぶみたいだ。 ほんとかどうかは分からないけど、もしそれが現実になったらとんでもない事だ。 多分、ウチだけじゃなくて神様達みんな驚くと思う。 それだけ人間達はほんとにすごいのだ。 こんな短期間でものすごく成長出来るのだから驚きが隠せないよ。「人間って凄いなぁ」「そうだよねぇ」 と言った方の隣を見てみると……「ん?」「ん?」「えぇ?!な、なんでここに?!」「そ、そんな驚くことある?!」 いや、驚くよ。 だって昨日会ったばっかの子がこうしてまた来てるんだから。 それに、ほんとに来るだなんて思わなかったし。「来ちゃ…ダメでしたか?」「いやダメってわけじゃないけど、どうしてウチ……じゃなかった私なんかに会いに来たの?」「だって…どうしても会いたかったんだもん……」「?!」 何この子……凄い健気だ…… それに、こんなウチなんかの為に昨日言った約束を覚えてくれたなんて……約束……約束か…… いや待って、約束ってさ陰陽師にとってそういうのは重いもの……縛りとかになるんじゃ…… そんな事無いのかな? いや、特にこの子の家がどの家系によるけど…もしかしたら約束によって、縛られるんじゃないと思う…… そうだったら…… ここに来られないよう結界を張るしかないかもしれない……「ねぇ……葵ちゃんって……どこの陰陽師の子なの?」
『澪《れい》…澪は絶対に人間の前に姿を出しちゃいけないよ』『どーして?おかあさま』『それは、ウチ達が神様だからよ。だから決して人間に姿を見せたらウチ達やその人間にも不幸が降り掛かってしまう。それを避けるためなのよ』『ふーん』『今はわからなくていい、だから大人になったらわかるかもね。だって、うちのれいは凄いんだから』 なんて…昔お母様に言われたことを不意に思い出した。 あの後なんて言ってたんだっけな。 今はもう覚えてない。 だって凄い小さい時だったんだから。 でも、どうしてだろ。 お母様が亡くなった後もこの約束というか契というか… それをずっと守り続けている。 だからこそ、人間がどんなものかなんて今はわかるけれど触れることも見ることも出来ない。 なんせ、神は人間と触れてしまったら消えてしまうのだから。 夜 この暗い暗い夜の帳が降りている中、本来なら誰も居ないと思うはずなのだが。 今は、こんなにも明るくなっていてとても信じられないけれど昔はほんと辺り一帯が暗くなって提灯の灯りがないと山の闇に飲まれてしまうことが多かったのだが…… この、奇っ怪な建物が乱立したこの土地を見て驚きというものが隠せないが今ではもう慣れてしまったものの。 夜のこの暗い闇の中を歩き回る人間たちとそれを照らし出す無数の光がとても当たり前になっているのがほんとに今でも驚きだ。 昔では到底考えることが出来なかったが人々の成長によって生まれたそれらはほんとに凄いと私は今でも思う。 それに、人間同士の大きな争いの後瞬く間にこんなものが出てきたのだから。 ほんとに凄いなとつくづく思う。 そんな事で驚くのも束の間。 もっともっと大きい物も出てきたり、電車と呼ばれる箱のものが人を乗せて動く場面を目撃したり、はたまた空には鳥のような…&hel